
店舗で販売している商品を通販にも出すとき、「在庫を連携したい」という希望だけでは、必要な仕組みは決まりません。店頭で売れた数量をいつ通販へ反映するか、通販で受けた注文の分を店頭で売らないようにできるか。その間に起こる仕事を確かめる必要があります。
EC制作前には、代表的な商品を一つ選び、最後の一個が売れる場面を店頭側と通販側の両方からたどってみましょう。在庫を分けて手作業で始められるか、同じ在庫を共有するための連携が必要かを、実際の運用から判断できます。
最後の一個を、誰がどの画面で確保するか
架空の雑貨店で、同じ白いマグカップを店頭と通販へ出す例を考えます。棚に一個あり、通販にも一個と表示されています。店頭で会計をした直後、通販の数量が更新される前に注文が入ったら、二人に売る約束をしてしまう可能性があります。
この場面を使い、会計後にどのシステムの数が変わるのか、通販の購入可否へ反映されるまで何が起こるのかを確認します。「閉店後に直す」運用なら、昼間の接客中に売れた商品は、その間も通販で注文できる状態かもしれません。営業時間外の通販注文を、翌朝の店頭販売前に確認できるかも考えます。
商品名だけで照合すると、色やサイズ違いを間違えるおそれがあります。同じ白いマグでも、別サイズや箱入りセットはどの単位で管理しているかを見ます。店舗側の商品コードと通販側の商品・選択肢を対応させられる資料があると、制作会社も連携対象を確認しやすくなります。
在庫を分ける方法と、同じ在庫を共有する方法を比べる
通販へ出す数量を別に確保するなら、店頭の商品をすべて通販へ見せる必要はありません。例えば通販用の保管場所へ商品を移し、その数量だけ登録する方法があります。この場合、店頭スタッフがその商品を販売しないことと、店頭用へ戻す際に通販の数量も変更することを決めます。画面上だけで分け、実物を自由に持ち出せる状態では区分が崩れます。
在庫を共有するなら、店舗販売と通販注文の両方が同じ販売可能数へ反映されることを確認します。自動連携を候補にしても、対応するPOSやEC、商品コードの対応、反映のタイミング、障害時の扱いは組み合わせによって変わります。「連携対応」という表示だけで、必要な運用まで実現できると判断しないようにします。
取扱商品が少なく、通販用の取り分を守れるなら、手作業から始める余地があります。一点物を多数の販路へ同時に出す、接客中に頻繁な更新が必要になる、といった場合は、更新の間に売れる可能性を含めて連携を検討します。商品数だけでなく、販売が重なる場面と更新担当者の仕事量が判断材料になります。
「棚にある数」と「今売れる数」をそろえない
棚に残っていても、既に通販で注文を受けて発送待ちの商品は、新しいお客様へ売れるとは限りません。取置き、検品待ち、破損した商品なども同様です。数の名前が同じでも、店舗と通販で何を含めているかが違うと、連携後もずれが生じます。
具体例として、Shopifyの在庫状態の説明では、手持ちと販売可能、引当済み、販売不可が区別されています。これはShopifyの仕様ですが、制作前に「どの状態の数量を通販へ渡すか」を確認する際の参考になります。使用する仕組みでは、どの操作で状態が変わるのかを個別に確かめます。
取り置いた商品を戻す場合も、数量を足すだけでよいとは限りません。通販の注文取消が在庫を戻す設定なら、担当者も同じ分を手入力して二重に増やさないようにします。返品では、返金処理と再販売できる状態の確認を分け、検品を終える前に販売可能数へ戻さない運用を考えます。
制作会社には、普段の販売に加えて三つの場面を渡す
要望書には、機能名だけでなく、起きたときにどうなってほしいかを残します。次の表は、在庫を共有する場合の確認例です。実際の決済方法や取置きルールに合わせて調整し、制作後の試験にも使える形にします。
| 試す場面 | 制作前に決めたい結果 |
|---|---|
| 店頭で最後の一個が売れる | 通販側がいつ購入不可になるか。反映前の注文をどう扱うか。 |
| 通販注文を取り消す | 自動で戻る数量と、担当者が操作する範囲を分ける。 |
| 返品商品を受け取る | 返金直後ではなく、検品と再販売の判断後に在庫へ戻せるか。 |
在庫ゼロの動作も、購入画面だけでなく店頭の操作まで確認します。Shopifyの公式案内には、オンラインの在庫切れ販売設定と、POSで在庫不足の警告後も販売できる動作の違いが示されています。利用する製品ごとに、停止されるのか、警告だけなのかを確認する理由になります。
連携が止まった場合に、最後に正常だった更新をどこで確認し、誰が通販の販売を止めるかも決めます。復旧後は、止まっていた間の販売をどう照合するかが必要です。画面の数量を一度合わせるだけで済ませず、重複処理や未反映の注文を確認できる方法を相談します。
連携の費用と、毎日担当する作業を分けて見積もる
相談時には、現在のPOSや在庫管理の名称、商品コードの例、販売先、更新の流れ、上のような確認場面をそろえます。利用中のプランで外部連携が使えるか、別のアプリや契約が必要かも調べます。資料が不足していれば、まず何を確認すると見積りを出せるかを制作会社へ聞きます。
初期設定や開発費だけでなく、月額利用料、データ整備、運用開始後の照合や修正を誰が担うかまで比べます。自動化した部分があっても、破損や検品の判断など、現場で行う仕事が残るためです。
Bämの通販・ECサイトの相談・サービス案内では、商品の売り方と受注後の仕事から必要な構成を整理します。既存システムとの連携や日々の受注作業まで、基本の制作に含まれるとは限りません。在庫の分け方と試したい場面を先に共有し、制作する範囲と運営側に残る作業を明確にしましょう。
