実店舗とECを併用するときは、販売先を増やす前に、在庫、価格、店頭受取、返品、問い合わせの「元になる記録」と更新担当を決めます。店頭とECで別々に判断すると、売り切れ後の受注、説明の食い違い、受取準備の漏れが起きやすくなります。注文が入ってから受取・返品までを一つの仕事として設計することが大切です。

商品、採算、発送方法がまだ決まっていない場合は、先にネット販売を始める前に決める9項目を整理してください。ネットショップの記事全体から探す場合はネットショップの記事案内をご覧ください。

最初に四つの「元になる記録」を決める

同じ情報を複数の表や画面で管理すると、どれが最新か分からなくなります。店頭の会計システムとECをすぐに自動連携できない場合でも、どの記録を見れば確定できるか、誰がいつ直すかは決められます。

情報先に決めること確認する場面
在庫販売可能数の元になる画面・台帳と更新担当入荷、店頭販売、EC注文、取置き、返品、破損
価格・特典通常価格、会員価格、クーポン、送料の適用条件値札、商品ページ、カート、店頭説明、返金
注文注文番号、支払状況、準備・発送・受取の状態受注通知、店頭受取、注文変更、取消、返金
顧客情報必要な人だけが確認できる保管場所と利用目的配送、受取確認、問い合わせ、削除・廃棄

価格や特典を店頭とECで同じにする必要がある、という意味ではありません。違いがあるなら、対象商品、期間、利用条件を購入前に分かる形で示し、スタッフも同じ説明ができる状態にします。

在庫は数量だけでなく、動いた理由まで残す

在庫ずれを防ぐには、店頭で一つ売れた、ECで注文が確定した、取置きへ回した、返品された、破損した、という動きを記録します。数量が合わないときに理由をたどれなければ、同じずれが繰り返されます。

  • 販売可能数:店頭にある総数ではなく、取置きや検品待ちを除いて今売れる数を決める。
  • 減らす時点:カート投入時、注文確定時、入金確認時のどこで確保するかを決める。
  • 戻す時点:取消、決済失敗、受取期限切れ、返品のときに誰が戻すかを決める。
  • 安全在庫:自動連携できない間は、同時販売による売り越しを避けるためECへ出す数を絞る。
  • 棚卸し差異:差が出た商品、数量、原因、修正者、修正日時を残す。

全商品を一度に載せず、動きが分かりやすい商品から始めます。商品数を絞った準備は小規模事業者がオンライン販売を始める方法でも確認できます。

店頭とECの役割を分け、説明はそろえる

場面実店舗が担いやすいことECが担いやすいこと
購入前実物確認、試用、対面での相談営業時間外の比較、仕様・在庫・条件の確認
注文その場で要望を確認し、持ち帰ってもらう事前注文、配送先・受取方法・支払方法の選択
購入後使い方の案内、持込み相談注文記録、発送・受取連絡、問い合わせ受付

役割を分けても、価格、返品条件、受取期限、問い合わせ先の説明が食い違わないようにします。店頭だけで伝えた注意点はECの商品ページへ、ECで繰り返し届く質問は店頭の説明メモへ反映します。

店頭受取は「準備完了」から逆算する

店頭受取を設ける場合は、「注文したらすぐ受け取れる」と誤解されない表示が必要です。注文を確認し、在庫を確保し、受取場所へ移し、準備完了を連絡してから来店してもらう流れを決めます。

  1. 注文を誰が、何時までに確認するか。
  2. 在庫確保と受取場所への移動を誰が記録するか。
  3. 準備完了をメールなどで、いつ連絡するか。
  4. 受取時に注文番号、氏名など何を確認するか。
  5. 受取期限、代理受取、遅れる連絡、未受取時の扱いをどうするか。
  6. 取消・返金後に在庫をいつ戻すか。

発送連絡や受取案内を整える場合は購入後メールを見直す手順も参考にしてください。

販売条件は店頭の慣例ではなく、画面に書く

消費者庁の通信販売に関する公式案内では、販売価格・送料、支払時期と方法、商品の引渡時期、返品特約、事業者情報などの表示事項が示されています。店頭で説明している内容でも、ECでは購入前に確認できる形へ直します。

たとえば「入金確認後発送します」だけでは、いつ届くかを判断できません。消費者庁の通信販売広告Q&Aを確認し、発送までの期間、返品の可否・期間・送料負担などを具体的に示します。必要な表示は商品や契約で異なるため、公開前に最新の公式案内と自社の取引を照合し、必要に応じて専門家へ確認してください。

決済、返金、入金の確認担当を決める場合はEC決済方法を選ぶ5つの基準、プライバシーポリシーなどの準備は公開前に整理する情報と運用をご覧ください。

注文と顧客情報は、見られる人と残す期間を決める

配送先、電話番号、購入履歴などを、店頭の共有端末、個人のスマートフォン、紙の受取表へ無制限に広げないようにします。個人情報保護委員会の個人情報保護法ガイドライン(通則編)では、取得、利用、保存、提供、削除・廃棄の取扱方法、責任者・担当者、アクセス制御など、事業規模とリスクに応じた安全管理が示されています。

  • 受注、発送、店頭受取、問い合わせごとに必要な情報を絞る。
  • 担当者ごとにアカウントを分け、退職・異動時に権限を止める。
  • 注文情報を個人のメールや端末へ残し続けない。
  • 紙の受取表や出荷伝票の保管・廃棄方法を決める。
  • 障害や誤削除に備え、復旧できるバックアップと連絡先を確認する。

IPAの中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版には、個人事業主・小規模事業者を含む中小企業向けの段階的な対策、バックアップ、ホームページを安全に運用する確認項目があります。担当者任せにせず、経営者も事故時の連絡と復旧の順序を確認します。

ツールを選ぶ前に、一日の業務を要件にする

「店頭とECを連携できます」という説明だけでは、自社で使えるか判断できません。次の場面を実際の担当者とたどり、必要な更新時点、画面、通知、権限を要件として渡します。

場面確認する質問
開店前前日のEC注文、取消、返品を店頭在庫へどう反映するか
営業中店頭販売とEC注文が重なったとき、どちらをいつ確保するか
店頭受取準備状況をどの画面で確認し、誰が完了へ変えるか
閉店後未処理注文、在庫差異、問い合わせを誰が引き継ぐか
障害時通信やシステムが使えない間の販売・受注をどう記録するか

モールと自社通販サイトのどちらから始めるかはAmazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングの比較手順で整理しています。先に販売先を決めても、在庫と注文の元になる記録は同じように必要です。

対象を絞り、例外まで試してから広げる

最初から全商品・全店舗・全受取方法を対象にすると、問題の原因を特定しにくくなります。一店舗、管理しやすい商品、配送または店頭受取など、確認できる範囲から始めます。

  1. 対象商品、販売価格、販売可能数、受取方法を決める。
  2. 担当者と代わりの人、確認時刻、引継ぎ方法を決める。
  3. 通常注文を、注文・在庫確保・連絡・受取・記録まで試す。
  4. 同時注文、欠品、注文変更、決済失敗、返品、未受取、通信不良を試す。
  5. 画面の説明と社内手順を直し、もう一度同じテストを行う。
  6. 問題なく続けられる範囲を確認してから、商品や店舗を増やす。

公開後は売上と作業の両方を見る

売上だけでは、実店舗とECを無理なく続けられるか分かりません。毎週、次の記録を担当者と確認し、商品ページか社内手順のどちらを直すか決めます。

  • 店頭とECの注文数、売上、返品・取消。
  • 在庫差異、売り切れ後の注文、取置き漏れ。
  • 発送遅れ、店頭受取の準備遅れ、未受取。
  • 価格、送料、在庫、返品、受取に関する問い合わせ。
  • 商品登録、在庫更新、受注、連絡、返品に使った時間。
  • 担当者しか分からなかった作業と、引継ぎできなかった作業。

実店舗とECを一緒に設計したい方へ

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