施工事例に「家事がしやすい間取り」「収納の多い住まい」と書いても、写真を見た方には、なぜその配置を選んだのかまで伝わらないことがあります。次に家を建てる方が知りたいのは、設備や部屋の名前に加えて、自分たちの希望をどう考えてもらえるかではないでしょうか。

間取りの理由を添えるには、施主の要望、敷地や建物の条件、設計で優先したことを確認します。そのうえで、一つの場所について「どんな暮らしを望み、どの条件の中で、何を選んだか」を説明すると、完成写真だけでは分からない工夫を伝えられます。

部屋の特徴から、そこで行うことへ話を進める

「玄関収納があります」は設備の説明です。「帰宅したときに上着や荷物をしまえる位置へ収納を設けました」と続けば、配置と暮らしの関係が見えてきます。収納量が多いという評価だけでなく、どの場面で使うための場所なのかを説明します。

公開実例では、一条工務店の「子育て・家事動線と、開放感を両立した家。」が、玄関とリビングの間に設けた収納を、外出・帰宅時の行動と結び付けて紹介しています。参考になるのは、その間取りをどの家にも勧めることではなく、配置の意味を生活の場面から伝える書き方です。

自社の事例でも、まず写真一枚を選び、設計担当者へ「この場所は、どんな要望に応えたものですか」と聞きます。意図を確認せず、写真から「子育てのため」「家事を楽にするため」と推測して補わないことが大切です。

打合せ記録と完成図面から、選んだ理由を確かめる

確認に使うのは、施主との打合せ記録、設計時の検討資料、完成時の図面、担当者の説明です。最初の希望と最終的な間取りが変わっていることもあるため、初回のメモだけで原稿を作らず、最後に採用した内容と照合します。

例えば、次の三点を聞くと、事例に残したい選択が見つかります。

  • 暮らしの中で、何を変えたい、何を大切にしたいという希望があったか。
  • 敷地の向きや隣家との関係、建物の大きさなど、配置を考える前提は何だったか。
  • 複数の希望がある中で、何を優先し、最終的にどの配置を選んだか。

すべての事例に三項目の表を付ける必要はありません。文章に必要な理由を探すための聞き方です。実際には比較していない案を作って「こちらを採用した」と書いたり、一般論から設計の経緯を補ったりしないようにします。

条件も、設計との関係があるものを選びます。敷地面積や家族構成を並べるだけでは、配置を決めた理由になりません。「道路側からの視線を避けたいという希望があった」など、確認できた条件と選択がつながる情報を使います。

室内干しの場所を、短い事例文にする

ここでは、説明用の架空の住宅で考えます。施主は洗濯物を室内で干す場所を希望し、設計では道路側からの視線と、庭に面するリビングを広く取りたいという希望も考慮したとします。その結果、洗面脱衣室の隣に室内干しスペースを置き、干した後に衣類を置ける棚も設けました。

写真へ「家事がしやすいランドリールーム」とだけ添えると、この家で何を考えたのかが残りません。前提を確認できたものとして書き換えるなら、次のようになります。

室内で洗濯物を干したいというご希望に合わせ、洗面脱衣室の隣に干す場所を設けました。道路側からの視線と、庭に面したリビングの広さを考慮して配置を検討。洗濯機から干す場所までの移動を短くし、乾いた衣類を一時的に置ける棚を備えています。

この例は、希望、条件、配置、使い方をつなげた文章です。「洗濯が何分短縮できた」「必ず早く乾く」といった、確認していない効果は加えていません。実案件では、位置関係や棚の用途が完成図面と実物に合っているかも確かめます。

仮に、室内干しを独立した部屋にせず別の空間と兼ねた住宅なら、その理由を書きます。広さの配分や使う時間帯をどう考えたかが分かれば、専用室の有無だけで事例を比較するのではなく、設計の考え方を読んでもらえます。

写真で位置関係が分からなければ、説明する範囲を絞る

先ほどの文章に合わせるなら、洗面脱衣室とのつながりや、物干しと棚の位置が分かる写真が候補になります。棚だけの接写で部屋全体の移動を説明するより、何を見ればよいかが分かる写真を選び、その近くに理由を置きます。

一枚では伝わりにくい場合は、許可を得た図面の一部や簡略図を添える方法もあります。その際は、どの部屋がつながるかなど、説明に必要な情報に絞ります。概念を示す図なら縮尺や寸法を省いた説明図であることを示し、実際の住宅の正確な図面と混同させません。

ただし、図面を載せること自体が目的ではありません。間取り全体を公開できない場合でも、掲載可能な写真と短い説明で理由を伝えられることがあります。住所や生活の詳しい情報も含め、写真・図・原稿をまとめて公開できる範囲を確認します。

設計で目指したことと、住んでからの感想を分ける

「洗濯の移動を短くする配置を目指した」は設計意図です。「以前より洗濯が楽になった」は住んでいる方の感想であり、同じ種類の情報ではありません。入居後の取材がない段階で、設計担当者の期待を施主の声として書かないようにします。

感想を載せるなら、ご本人に聞いた内容と掲載の確認を取ります。設計上の説明だけで事例を作る場合も、十分に意味があります。「どの条件にどう応えたか」が分かれば、これから相談する方が、自分たちの希望を話すきっかけになります。

最後に、事例を通して「この間取りなら誰でも快適」と言い切っていないかを読み返します。今回の希望と条件に応えた選択として伝えることで、同じ配置を勧める記事ではなく、相談を受けて考える工務店の姿勢を示せます。

Bämの工務店・住宅のホームページ制作では、施工写真や図面、普段お客様に話している内容を基に、間取りや素材を選んだ理由を原稿にします。整った文章がなくても、まず一つの施工例で、どんな要望にどう応えたかをお聞かせください。

参考資料