- はじめに
- Web制作を取り巻く現状
- 外注と内製それぞれの概要・特徴
- 外注と内製のメリット・デメリット
- コスト面の考え方
- 必要なスキルとリソース
- コミュニケーション・ディレクション面の注意点
- セキュリティ・リスク管理
- 運用と更新のポイント
- 事例やケースごとの比較表
- サイトタイプ別の考慮点
- 企業ステージごとの考慮点
- 外注と内製を組み合わせる「ハイブリッド型」という選択肢
- よくある失敗事例と対策
- 今後のWeb制作トレンドと展望
- 制作プロセスの全体像とポイント
- 成功に導くためのチェックリスト
- 外注先を選ぶ際の具体的な見極めポイント
- 内製で成功するための具体的な取り組み
- DX(デジタルトランスフォーメーション)との関連性
- 海外拠点との連携や多言語化の視点
- サンプルケース:部分外注の流れ
- Web制作に関するQ&A
- ケーススタディ:中規模企業の実例シナリオ
- まとめ
はじめに
中小企業がデジタルマーケティングに力を入れる際、Web制作は非常に重要な役割を担います。企業の顔となる公式サイトやランディングページは、顧客との最初の接点にもなり得るため、見やすさや使いやすさ、デザイン性など多面的な要素をしっかりと押さえる必要があります。しかし、実際にWeb制作を進めるにあたっては「外注すべきか、内製(自社内で制作を完結すること)すべきか」で悩むケースが少なくありません。
どちらの方法にも利点・欠点があるため、自社の状況や将来的な運用を見据えたうえで、最適な選択を行うことが重要です。本記事では、外注と内製の比較ポイント、コスト面、必要スキルなどを多角的に掘り下げながら解説します。最終的に自社に合ったWeb制作体制を構築するための一助となれば幸いです。
Web制作を取り巻く現状
企業のWebサイトは、単なる「名刺代わり」から、ビジネス機会を生むための戦略的ツールへと変化しつつあります。特にオンライン上での集客力やブランド認知度を高めるうえで、サイトの構成やデザイン、コンテンツの質は極めて重要です。さらに、SNSや検索エンジンなどでの露出を意識する場合、適切なSEO対策や更新体制が求められます。
一方、Web制作には専門的なプログラミングスキルやデザインスキルが求められるため、自社のスタッフだけで完結できるか、外部の専門家に依頼すべきかは企業ごとに大きく異なります。とくに、機能性の高いWebサービスを開発・運用する場合には、HTML/CSS/JavaScriptなどのコーディング技術に加えて、サーバー構築やセキュリティ対策など多岐にわたる知識が必要です。こうした技術的要件やコスト、納期、運用体制などを総合的に検討した結果として「外注」か「内製」かを決定するのが一般的といえます。
また、Webサイトの構成にも変化が生まれています。レスポンシブデザインが当たり前となった今、スマートフォンやタブレットなど多様なデバイスで快適に閲覧できるサイト設計が必須です。加えて、動画や動的コンテンツを多用することでインパクトを高める手法も増えていますが、その分制作工数がかさんだり、保守性に課題を抱えたりすることもあります。こうしたWeb制作のハードルが上がるにつれ、外注に頼る企業と、あえて内製化を目指す企業の双方が増えているのが現状です。
外注と内製それぞれの概要・特徴
外注の概要
外注とは、Web制作を専門の制作会社やフリーランスに依頼する手法です。デザインやシステム開発、ライティング、SEOコンサルなど、業務ごとに専門家をアサインできるため、完成度の高いWebサイトを比較的短期間で実現しやすい点が魅力です。
- 専門家による高品質な成果物: デザイナーやエンジニア、コピーライターなど、それぞれの分野に秀でた専門家が作業を行うため、クオリティの高いサイト構築が期待できます。
- 社内リソースを節約できる: 自社スタッフがWeb制作に費やす時間を減らし、本来注力すべきコア業務に集中させられます。
- 幅広い業務範囲に対応: 要件定義からデザイン、コーディング、システム開発、テスト、運用サポートまで、一括で依頼することも可能です。
一方で、外注先とのコミュニケーションが十分に取れないと、企業側の意図と仕上がりが食い違うリスクがあります。また、制作費用が比較的高くなりやすい傾向にあることも考慮が必要です。
内製の概要
内製とは、社内のスタッフが中心となってWebサイトを制作することを指します。自社にWeb制作のノウハウを蓄積できるほか、サイトの更新や改善を柔軟に行いやすいメリットがあります。
- 自社にノウハウが蓄積する: 社員がスキルを身につけることで、将来的にサイト運用や改修を効率よく行える体制を築ける。
- コミュニケーションコストが低減: 制作担当者が社内にいるため、修正や要件の追加などを迅速かつきめ細やかに対応できる。
- 予算コントロールがしやすい場合も: 特定の外注費がかからないため、制作に必要な人件費やツール導入費などの形で予算管理がしやすいケースがある。
ただし、制作担当者のスキルセットや経験が十分でない場合、品質面に問題が生じる可能性がある点には注意が必要です。また、スキルを持った人材を確保し続けるためには、社内研修や労務管理などの負担が増えることも考えられます。
外注と内製のメリット・デメリット
ここからは、外注と内製それぞれをより具体的に比較しつつ、メリット・デメリットを解説していきます。両者の特徴をしっかり理解することで、自社の体制や戦略に合った方法を検討できるようになるでしょう。
外注のメリット
- 専門性の高いクオリティが得られる
デザインからコーディング、サーバー管理、さらに必要に応じてシステム開発やSEO対策など、専門性の高い作業をプロに任せられるため、高品質の成果物を得やすいです。 - 開発期間を短縮しやすい
多くの場合、制作会社やフリーランスは同時並行で複数の案件をこなす体制を整えています。必要なスタッフ数やスキルセットに応じてプロジェクトが組まれるため、社内だけで開発するよりも短期間で完成するケースが多いです。 - 社内リソースの節約
自社スタッフがWeb制作に割く時間やコストを軽減し、本来注力すべき事業活動や営業、企画などに集中できる点は大きな利点です。
外注のデメリット
- コミュニケーションコスト
外部の制作会社やフリーランスとは、要件定義や修正依頼、進捗管理などのコミュニケーションが必須となります。認識の違いが生じると、スケジュールの遅延や追加コストが発生するリスクがあります。 - 制作費用が高額になる可能性
要求される品質やボリューム、カスタマイズ内容によっては、それなりの費用がかかります。特に、独自システムの構築など高度な開発を伴う場合はコストが膨らむことがあるでしょう。 - 納品後の運用サポート次第では柔軟性が下がる
外注先との契約内容によっては、納品後のメンテナンス費用や契約更新が必要になります。日常的な更新や改修を自社で行いたいと考える場合は、その体制構築にも追加コストが発生することがあります。
内製のメリット
- 自社に知見やノウハウが蓄積する
社員がWeb制作を担当することで、スキルアップと同時にノウハウの社内蓄積が可能です。長期的には、自社で新しいサイトやサービスを展開する際に大きな武器となります。 - 意思決定や修正がスピーディー
社内担当者が直接制作を行う場合、企画内容の変更や修正対応などの意思決定が素早く行えます。コミュニケーションロスが少なく、改善サイクルを早めることができます。 - コスト管理の自由度
外部に発注する費用が必要ないため、人件費や使用ツールのライセンス料を含めたトータルコストをコントロールしやすい場合があります。外注よりも安く済むケースも少なくありません。
内製のデメリット
- スキル不足による品質リスク
社内に十分なスキルを持つ人材がいなければ、サイトの品質面で妥協が生じる可能性があります。デザイン面やユーザー体験、セキュリティ対策に不備があれば、企業イメージを損ねることにもつながります。 - 人材育成やチーム構築のコスト
専門性のある人材を採用したり、既存スタッフに研修を行ったりするなど、内製には継続的な教育・労務コストがかかります。担当者が退職してしまうと、スキルが社内から一気に失われるリスクも無視できません。 - リソース分散による生産性の低下
本来の業務に加え、Web制作業務にも時間や労力を割かざるを得ないため、社内全体の生産性が低下する可能性があります。新規事業の立ち上げなど他の重要プロジェクトに影響が出ることもあるでしょう。
コスト面の考え方
Web制作におけるコストは、「初期費用」「ランニングコスト(運用費)」「改修費用」の3つに大きく分けられます。外注と内製それぞれのケースで、どのような点がコストに影響するのか整理しておきましょう。
- 初期費用
- 外注の場合: 制作会社やフリーランスへの発注費用が中心となります。サイト規模(ページ数や機能数、デザインのこだわりなど)によって大きく上下します。
- 内製の場合: 開発環境の構築費、ソフトウェアや素材の購入費などが主な初期費用となります。既に社内にツール環境が整っている場合は、それほど高額にならない場合もありますが、専門ツールの導入が必要になると想定以上のコストがかかることがあるでしょう。
- ランニングコスト(運用費)
- 外注の場合: 納品後の保守管理費、デザインや機能追加の都度かかる追加費用、場合によっては月額サポート契約などがあります。サーバー管理費やドメイン維持費を外注先がまとめて請求する形もあれば、自社で直接契約する場合もあります。
- 内製の場合: サーバー費用やドメイン費用、デザイナーやエンジニアの人件費などが主になります。運用の頻度と難易度によっては、担当者を増やさなければならず、結果的に人件費が膨らむ場合もあります。
- 改修費用
- 外注の場合: 追加でページを作成したり、大きなデザインリニューアルを行うたびに外注コストが発生する可能性が高いです。契約形態によっては、定期的に見積もり・発注を繰り返す必要があり、すばやい意思決定が難しいケースもあります。
- 内製の場合: 担当者がいる場合、緊急性の高い修正や微調整などは早期に実施できるメリットがあります。ただし大幅なリニューアルや高度な機能追加が必要になった際には、スキル不足による手戻りや追加ツール費など予想外のコストが発生することもあり得ます。
必要なスキルとリソース
Web制作を行う上で必要な主なスキルセットをリストアップすると、以下のようなものが挙げられます。
- デザインスキル: UI/UXを意識したデザイン、グラフィック作成ソフトの操作スキルなど
- コーディングスキル: HTML/CSS/JavaScriptなど、フロントエンドを中心とした言語の理解・実装能力
- システム構築スキル: PHPやRuby、Pythonなどのバックエンド言語、データベース操作、サーバー管理など
- コンテンツ作成力: テキストライティング、画像や動画の編集、マーケティング観点からのコンテンツ企画力
- SEO/マーケティング知識: 検索エンジン最適化やアクセス解析、SNS連携などの総合的マーケティング視点
内製を選択する場合、これらのスキルを社内メンバーでまかなう必要があるため、人材育成や採用に力を入れる必要があります。一方、外注の場合は専門チームに任せられる反面、発注元として最低限の知識を持ち、要望を明確に伝える能力が重要です。
コミュニケーション・ディレクション面の注意点
制作をスムーズに進めるためには、外注・内製どちらの場合でもディレクションの役割が非常に重要です。プロジェクト全体を俯瞰し、要件を整理し、進捗と品質を管理する役割を担う人材が確保できるかどうかが、成功のカギを握ります。
- 外注の場合
- 初回ミーティングで要望や目的をできるだけ細かく伝える
- ワイヤーフレームやデザインカンプの段階で認識をすり合わせる
- 修正や追加要件があれば都度整理し、こまめに指示を出す
- 外注先だけでなく自社内のステークホルダー(経営層や各部署)とも情報共有を徹底する
- 内製の場合
- プロジェクトリーダーを明確にし、責任範囲をはっきりさせる
- 定期的にチーム内レビューを行い、互いの進捗や課題を共有する
- アジャイル的な手法を取り入れるなど、素早いサイクルで開発と検証を回す仕組みを整える
ディレクションの質が低いと、せっかくスキルの高いエンジニアやデザイナーがいても力を最大限引き出せません。また、社内外のコミュニケーションギャップによるトラブルは、スケジュールやコストオーバーを招く原因となるため、十分な計画と管理が求められます。
セキュリティ・リスク管理
Webサイトを運営する上で、セキュリティは決して軽視できない要素です。特に企業サイトでは、顧客情報を扱ったり、問い合わせフォームなどで個人情報を受け取ったりする場合もあるため、適切な対策が必要です。
- 外注の場合
- 制作会社がセキュリティに配慮したフレームワークやCMSを選択してくれることが多い
- 定期的な脆弱性チェックやアップデートも外注先が行うサービス契約を結んでいる場合、負担が軽減される
- ただし、契約内容によってはセキュリティパッチの適用などを自社で行う必要がある場合もあり、注意が必要
- 内製の場合
- CMSやフレームワークを自社で選定・導入・アップデートする必要がある
- 社員にセキュリティ対策を徹底させるための研修やマニュアル整備が不可欠
- 万が一、システム障害や情報漏えいが発生した場合でも、自社で初動対応を行う必要があるため、リスクを把握した上で準備しておくことが大切
特に、WordPressなどのオープンソースCMSを採用するケースでは、アップデートを怠るとプラグインやテーマの脆弱性を突かれて不正アクセスを受けるリスクが高まります。外注か内製かを問わず、定期的なアップデートとバックアップ体制の整備は必須といえます。
運用と更新のポイント
Web制作は納品して終わりではなく、実際に運用を続ける中で定期的に更新や改修を行うことが重要です。最新の製品情報やニュースリリースなどを素早く反映し、SEOやユーザー体験の観点から見ても価値のあるサイトに育てていくことで、ビジネス成果を高められます。
- 定期的な更新作業の仕組みづくり
サイトのコンテンツ更新を誰が、どのタイミングで行うのか明確にしておきましょう。新しい社員が入社した際の担当割り当てや、季節ごとに行うキャンペーン告知など、あらかじめスケジュールを組んでおくとスムーズです。 - アクセス解析と改善サイクル
Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを活用し、ユーザーがどのページを閲覧しているのか、直帰率はどうかなどのデータを定期的に確認すると、改善点が見つかりやすくなります。 - デザイン・機能のリニューアル周期
Web業界のトレンドは常に変化しているため、数年ごとにデザインや機能を見直すのが望ましいです。特にUI/UXの進化や検索エンジンのアルゴリズム変化に合わせて、サイトをアップデートしていくことが競合優位性を保つうえで重要です。
ここまでの内容を踏まえると、外注・内製どちらを選ぶにしても、運用段階での費用や労力を想定し、事前に十分な体制を準備することが求められます。短期的なコストだけにとらわれず、長期運用の視点で判断するのが賢明です。
事例やケースごとの比較表
それでは、ここまで解説してきた外注と内製のポイントを簡単にまとめた表を作成し、ざっくりと比較してみましょう。
比較項目 | 外注 | 内製 |
---|---|---|
初期費用 | 要件に応じて大きく変動し、高額になりやすい場合がある | 人件費やツール費用が中心。既存環境があれば抑えられる可能性 |
品質 | プロの知見を活用でき、高品質が期待できる | 社員のスキル次第で品質が左右される |
制作スピード | 専門チームが短期集中で開発するため、比較的早い | 社内リソースに依存。ほかの業務との兼ね合いで遅れる可能性もある |
コミュニケーション | 発注先とのやり取りが必要。食い違いがあると手戻り発生 | 社内で密に連携しやすいが、ディレクションが不十分だと混乱を招く |
運用・更新の柔軟性 | 追加費用や契約形態に依存。迅速な対応が難しい場合あり | 社内で対応できるため、小さな修正や更新はスピーディー |
ノウハウの蓄積 | 外部に依存するため、社内への蓄積は少ない | 社員がスキルを獲得・蓄積できる |
セキュリティ対策 | 制作会社やフリーランスの知識に頼る形。契約範囲次第 | 自社で責任を持って対策を講じる。担当者のスキルが重要 |
コストの長期的視点 | 納品後の保守・改修などで追加費用が発生する可能性 | 人件費はかかるが、外注費用が抑えられる。担当者の離職リスクに注意 |
表にまとめると、外注と内製には明確な特徴の違いがあることがわかります。重要なのは、自社のリソース(人材・資金・時間)や中長期的な目標を考慮したうえで判断することです。
サイトタイプ別の考慮点
Webサイトと一口に言っても、その目的や機能は多岐にわたります。以下に、代表的なサイトタイプをいくつか挙げ、それぞれにおける外注・内製のポイントを整理します。
- 企業コーポレートサイト
- 特徴: 会社概要や事業内容、採用情報などを発信する、企業の「顔」となるサイト。
- 外注が向いているケース: デザイン性を重視し、ブランドイメージを高めたい場合や、短期間でプロの品質を求める場合。余裕があればリニューアルやセキュリティ対策も含めて総合的に依頼できる。
- 内製が向いているケース: 頻繁に情報更新を行い、社内で素早いメンテナンス・改修をしたい場合。また、継続的にサイトを拡充させる意欲が高い企業にとっては、ノウハウ蓄積のメリットが大きい。
- ECサイト(オンラインショップ)
- 特徴: 商品やサービスをオンラインで販売するサイト。決済機能や在庫管理機能、キャンペーン告知などが必要。
- 外注が向いているケース: 大規模なEC構築、複数の決済手段やポイントシステムなど高度な機能を必要とする場合。UI/UXの専門家やECマーケティングのプロがいる制作会社に依頼し、短期間で売上につなげたい企業。
- 内製が向いているケース: 大規模な在庫管理を行わず、ShopifyなどのASPやクラウド型ECプラットフォームを使って自社オリジナルの運用をしたい場合。日々の商品追加・ページ更新を機動的に行いながらノウハウを自社に蓄積したい企業。
- ブログメディア・オウンドメディア
- 特徴: 自社の専門領域に関する情報発信を行い、ブランド認知やSEO効果を狙うサイト。コンテンツが中心であり、定期的な更新が前提となる。
- 外注が向いているケース: 初期のデザインやサイト構成をしっかり固め、メディアとしてのブランディングを確立したい場合。継続的なコンテンツ制作まで依頼することで、内製リソースを削減できる。
- 内製が向いているケース: 自社の専門知識や社員の声をリアルタイムで発信したい場合。更新頻度が高く、記事のクオリティ管理や効果測定を自社でコントロールしたい企業に向いている。
- ポータルサイト・マッチングサイト
- 特徴: ユーザー同士のやりとりや情報の集約・検索機能を備えた複雑なサイト。運営者は多方面の機能管理やセキュリティに注意を払う必要がある。
- 外注が向いているケース: システム開発やデータベース設計など、専門性の高い領域に大きく踏み込む必要がある場合。大規模かつ高トラフィックを想定するなら、セキュリティ面も含めたプロのアドバイスが欠かせない。
- 内製が向いているケース: 自社にエンジニアリングチームがあり、サービス仕様の変更や新機能追加を素早く行いたい場合。技術をコア競争力として事業展開を行うベンチャーなどでは内製化を選ぶことが多い。
- 採用サイト(リクルートサイト)
- 特徴: 採用活動を目的とした求人情報や社風紹介などを発信するサイト。応募フォームや説明会の告知など、運用面での機動性も重要。
- 外注が向いているケース: 企業イメージを打ち出す採用ブランディングを重視したい場合。クリエイティブにこだわり、写真や動画を積極的に活用したいケース。
- 内製が向いているケース: 採用情報の更新頻度が高く、シーズンごとの掲載内容変更を細かく行う必要がある場合。自社の人事部門が主体となって運用を回しやすい環境が整っている場合。
サイトの種類によって、必要となる機能や求められるデザイン・コンテンツは大きく変わります。自社が構築・運用したいサイトの目的を明確化したうえで、外注・内製のどちらが適切かを検討すると効率的です。
企業ステージごとの考慮点
企業の成長ステージによって、Web制作に割ける予算や人材、求められる機能の規模感は大きく異なります。ここでは、一般的な企業ステージを想定し、それぞれのフェーズで外注・内製どちらがよりマッチしやすいかを考察します。
- 創業・立ち上げ期
- 特徴: 社内リソースや予算が限られており、Webサイトには最低限の情報やブランディングが求められる段階。
- 外注のメリット: プロに任せることで短期間かつ洗練されたサイトを構築できる。創業期の企業にとって、見栄えの良さや信用力を高めるデザインは信頼獲得につながるため、費用対効果が高い場合がある。
- 内製のメリット: 規模が小さいうちは融通が利きやすく、シンプルな構成のサイトからスタートできる。自身がWeb技術を持っている起業家の場合、初期費用を抑えつつサイト公開が可能。
- 拡大期
- 特徴: 事業の成長に伴い、Webサイトへのアクセス数や掲載情報が増える。新規サービスや事業部の立ち上げが活発になり、サイトの拡充が必要となる。
- 外注のメリット: 高度な機能追加やデザインリニューアルなどに対応しやすく、拡大スピードに合わせてスケールしやすい。専門家のチームがバックアップするため、社内リソースの負担も軽減される。
- 内製のメリット: 拡大期に社内でWeb人材を育成しておくと、今後の継続的な運用・改修が社内完結しやすい。予算を外注に回すよりは新規人材採用に振り分けることで、企業としての技術力を高められる。
- 成熟期・安定期
- 特徴: ある程度ブランドが確立し、Webサイトも安定した運用を継続している段階。大規模な追加機能や抜本的なリニューアルは頻繁には起こらないが、定期的なアップデートや小規模な改修は継続して行う必要がある。
- 外注のメリット: 社内で専任チームを確保するほどではない場合、外注によって必要なときだけプロの支援を受けられる。コスト面でも無駄がない。
- 内製のメリット: 継続的な更新やサイト保守が多い場合は、担当者を社内に置いておくほうが柔軟性に優れる。サイトデザインやコンテンツが大きく変わらない分、担当者がいれば日常のメンテナンスはスムーズ。
- 事業再編・リブランディング期
- 特徴: 事業の方向転換や大幅なリブランディングを行い、Webサイトを根本から再構築する必要が出てくる段階。
- 外注のメリット: 大掛かりなリニューアルやブランディング戦略に強みを持つ制作会社に依頼し、サイト全体を一気に刷新できる。外部視点での提案やクリエイティブアイデアが期待できる。
- 内製のメリット: 自社のビジョンやブランドコンセプトを細部まで理解している社員が担当すれば、納得感の高いサイトを作り込める可能性がある。ただし、専門知識の不足や担当者の負担増などリスクも大きい。
外注と内製を組み合わせる「ハイブリッド型」という選択肢
実際には、完全な外注か完全な内製かの二択だけではなく、一部を外注し、別の部分は内製化する「ハイブリッド型」のアプローチもよく見られます。具体的には以下のような組み合わせが考えられます。
- デザインやコーディングを外注し、コンテンツ作成や更新を内製
初期のデザインやシステム構築はプロに任せつつ、記事更新やバナー作成など運用に近い部分は自社で担当。デザインの型(テンプレート)を作ってもらったうえで運用しやすくするのがポイント。 - 戦略立案やディレクションを外注し、制作そのものは内製
自社内にエンジニアやデザイナーがいる場合でも、マーケティング戦略やサイト全体のコンセプトを整理する段階で外部コンサルを導入することで、より的確な方向性を定められる。 - 単発の大規模リニューアルを外注し、日常の保守運用は内製
大きな機能追加やデザイン刷新が必要なタイミングだけ外注して、リニューアル後の細かい修正やデータ更新は社内で引き継ぐ。コストと品質のバランスを取りやすい手法。
こうしたハイブリッド型を選ぶことで、プロからの知見と社内での即時対応力の両方を得られるメリットがあります。ただし、外部と内部の連携ポイントが増えるため、情報共有やディレクションを怠ると混乱が生じがちです。どの業務範囲を外注し、どの範囲を内製とするかを明確に切り分け、契約内容やタスク管理をしっかり行う必要があります。
よくある失敗事例と対策
外注と内製のどちらを選んだ場合でも、よく起こりやすい失敗事例とその対策を知っておくと、事前にリスクを回避しやすくなります。
- 要件定義があいまいなままスタートしてしまう
- 失敗パターン: 発注側(または社内)でゴールイメージが固まっていない、あるいは担当者間で意見がまとまっていない状態で制作開始。途中で大幅な方向転換が起き、手戻りやコスト超過が発生。
- 対策: 初期段階でサイトの目的やターゲット、必要機能、予算・スケジュールをできる限り具体的に洗い出す。外注の場合はワイヤーフレームや仕様書を活用し、内製の場合でも関係者とディスカッションを重ねて認識共有を徹底する。
- コミュニケーションの不足による品質低下
- 失敗パターン: 外注先との連絡が滞り、発注側の要望が正しく伝わらない。内製の場合でも、開発担当者だけが詳細を把握しており、周囲の意見が反映されない。結果としてリリース時に「イメージと違う」という不満が多発。
- 対策: 定期的なミーティングやチャットツールの活用で、こまめに進捗報告・意見交換を行う。デザインカンプや試作段階で社内外のステークホルダーに確認してもらい、早期に修正点を洗い出す。
- 担当者のスキル不足や離職リスク
- 失敗パターン: 内製化したものの、担当者が十分なスキルを身につけておらず、結果的に低品質なサイトになってしまう。あるいは育成した人材が離職し、ノウハウが失われる。
- 対策: 内製化するならば、複数社員が協力できる体制を作り、外部研修やオンライン学習でスキルアップを支援する。また、定期的なコードレビューや情報共有を行い、担当者個人に依存しすぎないようにする。
- スケジュール管理の甘さによる納期遅延
- 失敗パターン: 見積もり時の楽観的な想定により、実装やテストに想定以上の時間がかかり、納期が大幅にずれ込む。外注の場合は追加費用がかかることも。
- 対策: 開発工程を細分化し、各タスクの所要時間をできるだけ精緻に見積もる。余裕をもったスケジュールを設定し、リスクが発生した際には即座に対処方針を決める。
- 保守・運用体制が整っていない
- 失敗パターン: 制作時に力を入れたものの、リリース後は放置状態。サイト情報が古いまま更新されず、ユーザー離れが進む。セキュリティ更新も怠っているため、脆弱性リスクも高まる。
- 対策: 運用体制(担当者・更新頻度・手順など)を事前に決めておく。外注の場合は保守契約を検討し、内製の場合は定期的なミーティングで更新のタスクを洗い出す。アップデートやバックアップのスケジュールを設定する。
今後のWeb制作トレンドと展望
Web制作の世界は技術進化やユーザー環境の変化がめまぐるしく、数年前の常識がすでに古くなっている場合も多々あります。外注・内製いずれの形であっても、トレンドをある程度把握しておくと、サイトを成長させるうえで有利です。
- ノーコード/ローコードツールの普及
- HTML/CSS/JavaScriptといった従来のコーディングなしでも、比較的高品質なサイトやWebアプリを構築できるプラットフォームが増加。
- 内製化のハードルを下げる一方で、カスタマイズの自由度や拡張性には限界があるため、外注との併用が鍵となる場合も。
- モバイルユーザーを意識したUI/UX最適化
- スマートフォンが主要デバイスとなり、レスポンシブデザインやモバイルならではの操作性を意識しないサイトは敬遠されがち。
- 外注でも内製でも、デザイナーや開発者がモバイルファーストの考え方を共有しているかが重要。
- パフォーマンス最適化(表示スピードやCore Web Vitalsなど)
- 検索エンジンの評価基準にページ表示速度が組み込まれるなど、ユーザーだけでなくSEOの観点でもパフォーマンスが重視される時代。
- 高速なホスティング環境や画像最適化、不要なスクリプトの削減など、技術的な取り組みが求められる。
- セキュリティ強化とプライバシー保護
- 個人情報保護やCookieの取り扱いなど、法規制のアップデートに対応し続ける必要がある。
- 外注の場合は制作会社のセキュリティ基準、内製の場合は自社内のルール整備やエンジニアの知識が鍵を握る。
- コンテンツマーケティングやSNS連携の重要性
- サイト単体での集客だけではなく、SNSと連動してブランド認知を広げる企業が増加中。
- 内製の場合はSNS運用も含めてスピーディに発信できる利点があり、外注の場合は専門チームの戦略提案を受けられる強みがある。
こうしたトレンドを踏まえると、Webサイトは作って終わりではなく、常に改善と新しい技術の取り入れを繰り返すことが求められます。そのためには、外注・内製のどちらであっても、継続的なアップデート体制を確保するのが理想と言えるでしょう。
制作プロセスの全体像とポイント
ここからは、実際にWebサイトを制作する際の一般的なプロセスを見ながら、外注・内製を問わず押さえておきたいポイントを解説します。プロジェクトを成功させるためには、単に技術力があるかどうかだけでなく、各工程での的確な進め方が不可欠です。
1. 要件定義・ヒアリング
- 目的・ターゲットを明確にする
Webサイトを作るうえで、まず最初に押さえたいのは「サイトの目的」と「想定ユーザー」です。売上向上のためなのか、企業イメージの向上なのか、採用候補者の獲得なのかなど、明確なターゲットとゴールを設定することで、その後の設計方針が定まりやすくなります。 - 機能要件・コンテンツ要件の洗い出し
「どのようなページ構成にするか」「問い合わせフォームや会員登録などの機能は必要か」といった要件を具体的にリスト化します。この段階でどれだけ詳細に要件を詰められるかが、後工程のスムーズさに大きく影響します。 - スケジュール・予算の概算
要件を整理できたら、希望納期やおおまかな予算感を算出し、社内外の関係者と共有しておくとよいでしょう。外注の場合は、この段階で見積もり依頼を行うことが多いです。
2. プロジェクト体制の構築
- 外注の場合
- 制作会社やフリーランスの選定: 過去の制作実績や得意分野、費用感などを比較し、自社の要件を満たすパートナーを探します。相見積もりを取ることも少なくありません。
- 担当窓口・ディレクターの明確化: 自社サイドでプロジェクトを統括するディレクターや窓口を誰にするかを決め、発注先と円滑にコミュニケーションを取れる体制を築きます。
- 内製の場合
- 制作担当チームの編成: デザイナー、エンジニア、ライターなどの役割分担をはっきりさせ、それぞれに必要なリソースを割り当てます。
- 外部リソースの補完: すべてを内製できるわけではない場合、特定の領域のみ外部の協力を得るハイブリッド型も検討します(例: デザインのみ依頼、あるいはSEOコンサルのみ外部に依頼するなど)。
3. 情報設計・ワイヤーフレーム作成
- サイトマップの作成
要件定義の段階で洗い出したページ構成を、階層構造としてまとめたサイトマップを作成します。ユーザーが情報を見つけやすい導線を意識し、トップページからのリンク構造やセクション分けを検討します。 - ワイヤーフレーム(画面設計図)の作成
ページごとのレイアウトや情報配置を大まかに決めるのがワイヤーフレームです。この段階で、テキストや画像をどこに配置するか、ボタンやフォームなどの要素をどの位置に置くかなどを視覚的に確認できます。- 外注の場合: 制作会社がワイヤーフレームを提出し、クライアント(発注企業)が確認・修正依頼を行う流れが一般的。
- 内製の場合: デザイナーやディレクターが協力して作り、関係部署からフィードバックを受ける。ここでユーザー体験の改善点が見つかることも多いので、細部を詰める前にしっかり議論するのが望ましい。
4. デザイン作成
- デザインコンセプトの確立
企業イメージやブランドカラー、ターゲット層に合わせたデザインコンセプトを決めます。ロゴやメインビジュアルの方向性、写真やイラストのテイストなど、全体の統一感が重要です。 - デザインカンプ(モックアップ)の作成
ワイヤーフレームをもとに、実際の配色や文字スタイル、画像を当てはめた完成イメージを作ります。ここでしっかり確認・修正を行うことで、後のコーディング段階での手戻りを減らします。- 外注の場合: 制作会社が複数のデザイン案を提示してくれることもあり、比較検討のうえでベストな案を選べる利点がある。
- 内製の場合: 社内のデザイナーがいる場合は細かな調整がしやすい半面、高度なデザインスキルが必要。場合によってはフリーランスのデザイナーだけスポットで外注するケースもある。
5. コーディング・システム開発
- フロントエンド開発(HTML/CSS/JavaScriptなど)
デザインカンプをもとに、画面を実際のWebページとして表示するためのコーディングを行います。レスポンシブデザインへの対応や、動的な演出(アニメーションなど)の導入もここで実装されます。 - バックエンド開発(サーバーサイド、CMSなど)
会員登録やデータベース連携が必要な場合は、PHPやRuby、Pythonなどの言語でシステムを開発します。WordPressなどのCMSを利用する場合も、テーマやプラグインのカスタマイズが必要となるケースが多いです。 - 外注の場合: 開発チームが役割分担して作業を進めるため、専門性が高い部分でも安心感がありますが、要件定義の段階で細かい仕様を決めておかないと追加費用が発生しやすいです。
- 内製の場合: 社員エンジニアがコーディングを進めるため、途中で方向転換しやすいメリットがある反面、高度な技術要件が必要な場合は外部の技術サポートを検討したほうが効率的です。
6. テスト・検証
- ブラウザチェック・デバイスチェック
PC、スマートフォン、タブレットなど主要デバイスや各種ブラウザ(Chrome, Safari, Firefox, Edgeなど)での動作確認を行い、レイアウト崩れや機能の不具合がないか検証します。 - 負荷テスト(必要に応じて)
大量アクセスを想定しているサイトや、重要な販売キャンペーン時期にサーバーが落ちないよう、事前に負荷テストを実施する場合もあります。 - セキュリティテスト
フォームからの不正入力やデータベースへの攻撃リスクなどをチェックし、必要なセキュリティ対策が講じられているか確認します。外注の場合はセキュリティ診断をオプションに含んでいる会社もあります。
7. 公開・運用開始
- リリース準備
サーバーにファイルをアップロードし、ドメインを設定、動作チェックを再度行ったうえでサイトを公開します。リダイレクト設定やSEO向けのメタ情報の最終チェックも忘れずに。 - 運用フローの確立
公開後は、アクセス解析や問い合わせ対応など、日常運用に関する役割分担を明確にします。WordPressなどのCMSを利用している場合、プラグインの更新やセキュリティパッチの適用も定期的に行う必要があります。 - 評価・改善
アクセス数やコンバージョン率をチェックし、どのページが多く閲覧されているか、滞在時間は十分かなどを分析します。そのデータをもとに継続的な改善を行うことで、サイトの成果が高まります。
成功に導くためのチェックリスト
外注か内製かを問わず、プロジェクトが成功するかどうかは、各工程でのチェックやリスク管理がどれだけ徹底されているかにかかっています。以下に、Web制作全般で押さえておきたい代表的なチェック項目をまとめます。
- 要件定義の完成度
- 目的・ターゲットは明確に定義されているか
- 必要なページや機能がリストアップされているか
- 予算やスケジュールの目安は合意済みか
- デザイン・UI/UXの整合性
- 企業ブランディングとデザインが統一されているか
- ワイヤーフレームとデザインカンプの差異が理解・承認されているか
- レスポンシブ対応を適切に考慮しているか
- コーディング・システムの品質
- コードが可読性・保守性を考慮して書かれているか
- セキュリティ対策やバリデーション処理が実装されているか
- テストでバグや表示崩れが検出された場合、修正ルールは明確か
- 運用体制・保守計画
- 公開後の更新フローや担当者が決まっているか
- アクセス解析ツールを導入し、データを可視化しているか
- セキュリティアップデートのスケジュールや責任範囲が明確か
- リスクマネジメント
- 納期遅延が起きそうな場合、どう対処するか合意できているか
- 担当者が退職・休職した場合、代替要員や外注先のサポートを確保できるか
- 法的リスク(著作権、個人情報保護など)について確認済みか
外注先を選ぶ際の具体的な見極めポイント
外注を検討する場合、どの制作会社やフリーランスに依頼するかによって大きく成果物が左右されます。闇雲に複数の見積もりをとるだけではなく、以下の点をチェックしておきましょう。
- 実績と専門分野の合致
- 自社と同じ業界や似た規模の企業サイトを多く手掛けているか
- デザインに強い、マーケティングに強い、システム開発に強いなど、得意分野が明確か
- コミュニケーション体制
- 担当者やディレクターとスムーズにやり取りできるか
- レスポンスの早さや丁寧さなど、相手のビジネス姿勢が合いそうか
- 定例ミーティングやチャットツールを使ったこまめな連絡に対応可能か
- 契約内容・料金体系
- 見積もり金額が適切かどうか(やけに安すぎる・高すぎる場合は注意)
- 契約範囲に含まれる内容を細かく確認(デザイン修正回数、保守費用など)
- 納品後の修正や追加機能に対する費用体系が明確になっているか
- スケジュールと進行管理
- 過去の実績から見て、納期を守っているかどうか
- プロジェクト管理ツールやガントチャートを活用し、透明性のある進行を行っているか
- 緊急トラブルが発生した場合の対応がどの程度期待できるか
- 提案力やコンサルティング力
- 単に言われたとおりに作るだけでなく、プラスアルファの提案をしてくれるか
- 自社の業種・業態に合わせたSEO対策やマーケティング施策など、総合的にアドバイスできる体制があるか
制作会社は大小さまざまな規模や得意分野を持っています。また、フリーランスでも高い専門性を備え、機動力のある方も多いです。自社の要件と外注先の強みが噛み合ったときに、もっとも高いコストパフォーマンスを得られます。
内製で成功するための具体的な取り組み
内製のメリットを最大化し、デメリットを最小限に抑えるには、いくつかのポイントに注目してチームを作り上げる必要があります。
- 明確なリーダーシップ
- プロジェクトの最終意思決定者をはっきりさせ、意見の衝突があってもリーダーが方向性を定められる体制を作る。
- リーダーが自ら学習し、Web制作の知見を高めておくことで、チームのモチベーションも向上する。
- 人材育成・研修制度
- デザイナーやエンジニアを採用するだけでなく、既存社員に対する研修や勉強会を定期的に実施し、継続的なスキルアップを図る。
- オンライン学習や資格取得支援などを導入し、社員の成長を会社として後押しする。
- ナレッジ共有とドキュメント化
- コードやデザインのガイドラインを整備し、新しいメンバーが参加してもスムーズに参画できるようにする。
- ミーティング記録や開発手順をドキュメント化し、担当者が変わってもノウハウが引き継がれるような仕組みを作る。
- ツール・フレームワークの活用
- コラボレーションツール(Trello, Backlog, GitHubなど)を使って、チーム間の進捗管理やタスク分担を可視化する。
- 開発フレームワークやテンプレートを活用することで、ゼロからの構築を減らし、作業効率を上げる。
- 外部リソースとの連携も視野に入れる
- すべてを内製で完結させる必要はなく、スポット的に外部の専門家を呼んでレビューを依頼したり、システムの一部を外注したりして負担を分散する考え方も有効。
- 自社の強み(たとえばコンテンツや顧客理解など)を生かし、それ以外の部分は外部の力を借りるハイブリッド戦略を上手に使いこなすことで、効果的なサイト制作が実現しやすくなる。
DX(デジタルトランスフォーメーション)との関連性
近年、多くの企業がデジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを変革する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進しています。Webサイトの制作・運用体制の整備も、このDXの一環と捉えることができます。
- 業務効率化の要としてのWebシステム
単なる宣伝・情報発信だけでなく、顧客管理システム(CRM)や営業管理システム(SFA)などと連携し、受注や問い合わせを一元管理する仕組みを構築する企業が増えています。 - オンライン接点の強化
従来の対面営業中心から、オンライン上で商談や契約まで完結するフローに移行する動きが加速しています。自社サイトをDXの重要なタッチポイントと位置づけ、戦略的なリニューアルを行うことも少なくありません。 - データ活用と顧客体験向上
アクセス解析ツールやマーケティングオートメーション(MA)を活用し、サイト上でのユーザー行動を蓄積・分析することで、個々のユーザーに最適化された体験を提供しようとする動きも活発です。
このように、DXを見据えたサイト制作には高度な技術力やシステム連携が求められるため、企業としては外注・内製いずれの場合も、長期的な視野で開発や運用を計画する必要があります。
海外拠点との連携や多言語化の視点
グローバル展開を見据える企業や、海外の顧客・取引先を想定している場合、多言語サイトやタイムゾーンの違いを考慮した運用体制づくりが求められます。
- 多言語対応の構築
いくつかのCMSやプラグインには多言語化に対応している機能があるため、要件定義の時点で言語切り替え機能の実装を検討します。外注の場合は翻訳や言語の微妙なニュアンスも理解できるスタッフがいるかどうか確認しておくと安心です。 - コンテンツ翻訳の品質
機械翻訳のみで済ませると、表現のニュアンスが正確に伝わらないことがあります。専門用語の多い業界やブランドメッセージ性の強いコンテンツでは、プロの翻訳者に依頼する必要があるかもしれません。 - 時差や国際法規制への対応
海外ユーザー向けにフォームを設置する際、個人情報保護やクッキー利用の規制(GDPRなど)に対応しなければならないケースもあります。外注先を選ぶ際は、国際的な法規制への知見を持つかどうかもポイントになります。
サンプルケース:部分外注の流れ
最後に、ハイブリッド型(部分外注)を利用した一例として「デザインだけを外注して、コーディングやコンテンツ作成は内製で行う」パターンを簡単にシミュレーションしてみます。
- 企画・要件定義(内製)
- 社内でサイトの目的やターゲットを明確化
- 必要なページや機能の洗い出しを行う
- デザイン外注先の選定
- 複数の制作会社またはフリーランスデザイナーにコンタクトを取り、過去実績やデザインテイストを確認
- 見積もりを比較し、契約内容・納期などを調整
- ワイヤーフレーム作成(内製)
- 社内のディレクターがワイヤーフレームを設計し、ページ構成を決める
- この段階でテキスト原稿や掲載画像などの素材も準備を進める
- デザイン制作(外注)
- デザイナーにワイヤーフレームとブランディング要件を共有
- 何度かレビューを重ね、最終デザインを確定
- コーディング(内製)
- 社内のエンジニアが確定デザインをもとにHTML/CSS/JavaScriptを実装
- 必要に応じてCMSやサーバー設定も同時に進める
- テスト・公開(内製)
- 各デバイスでの表示確認やフォーム動作確認などを行い、不具合があれば修正
- 公開後は社内で更新作業を継続
このフローをとることで、デザインの専門性をプロに任せつつ、コーディングや運用の知見は社内に蓄積できるメリットがあります。費用面でも、完全外注よりは抑えられる可能性がありますが、ディレクションの手間が増える点には留意する必要があります。
Web制作に関するQ&A
ここからは、外注と内製の比較検討を進めるなかで多くの企業が抱く代表的な疑問を、Q&A形式でいくつか取り上げます。具体的なシチュエーションごとに整理することで、自社の判断材料がさらに増えるはずです。
Q1. 社員にWeb制作スキルを習得させるにはどのくらいの期間がかかる?
A. 個人のセンスや基礎知識、学習時間の確保状況によって大きく差が出ます。たとえばデザイン未経験者がPhotoshopやIllustrator、HTML/CSSをゼロから習得するには少なくとも数カ月単位での学習が必要になるでしょう。バックエンド開発や高度なJavaScriptフレームワークまで対応しようとすると、さらに時間がかかります。
もし時間的な制約がある場合は、重点領域を絞って学ぶことがポイントです。デザインだけ、コーディングだけなど役割を分担し、チームで補完し合う体制を整えると効率的に内製化を進めやすくなります。
Q2. 外注先に全て任せた場合、どのくらいのコストが一般的?
A. サイトの規模や機能要件によって大きく変動します。静的なコーポレートサイト(10ページ前後、特別なシステム開発なし)であれば、数十万円から数百万円の範囲がひとつの目安となります。EC機能や会員管理などの高度なシステムが必要な場合は、数百万円から数千万円と大きくなることも珍しくありません。
また、制作コストに加えて保守費用や、更新頻度に合わせた運用コストも考慮する必要があります。見積もりをとる際は、納品後に発生する可能性のある追加費用についても確認しておくと安心です。
Q3. 外注と内製を組み合わせる最適な割合はある?
A. 企業規模やサイト運用の目的によって最適解は異なります。たとえば、初期構築の段階だけ外注して、その後の運用と改修は内製するケースもあれば、逆にデザインは社内で対応し、システム部分のみ外注するケースもあります。
重要なのは、「自社の強みを活かせる部分かどうか」「担当者がどの領域を得意としているか」を見極めることです。外注と内製をあいまいに混在させると、責任範囲や修正のタイミングが不透明になりがちなので、業務分担を明確に切り分けるのがポイントです。
Q4. 内製化を目指す場合、まず何から始めればよい?
A. 初めに取りかかるのは「情報収集」と「小規模でもいいので実際に制作経験を積む」ことです。自社サイトの一部ページを試験的に更新してみる、あるいは簡易なランディングページを作成してみるなどの小さな取り組みから学ぶのがおすすめです。
あわせて、担当者同士で定例ミーティングや勉強会を実施し、学んだことや課題を共有しながら成長していくと成果が出やすくなります。また、外部のセミナーやオンライン学習サイトを活用し、基礎知識を体系的に学ぶことも効果的です。
Q5. 見積もりや契約書でチェックすべき注意点は?
A. 外注の場合、以下の点に特に注意して確認するようにしましょう。
- 契約範囲: どこまでが制作会社の責任範囲で、どこからが追加費用の対象となるのか。
- 修正回数や対応期間: デザインや機能の修正には回数制限や期間が設けられていることが多いので要チェック。
- 著作権やデザインの所有権: 納品後の画像やコードに関する権利がどちらに帰属するかを明確化する。
- 保守・運用の内容: 運用サポートに含まれる内容(アクセス解析レポート、マイナー修正など)とその費用。
内製の場合も、社内の担当者間で役割分担や責任範囲を明確にする「プロジェクト内ルール」が必要です。どこまでの対応が誰のタスクなのかを曖昧にすると、トラブルや進捗遅れにつながりやすくなります。
Q6. サイト公開後にアクセスが伸びない場合はどうすれば?
A. サイト公開はゴールではなくスタートです。アクセスを増やすためには、以下のような施策を継続的に行うことが重要となります。
- SEO最適化: タイトルタグやメタディスクリプション、見出し構造などを再度見直して検索エンジンに評価されやすい構成にする。
- コンテンツ充実: ユーザーが求めている情報を継続的に追加・更新し、サイトの価値を高める。
- SNS連携・広告運用: SNSアカウントやオンライン広告を活用し、サイトへの導線を多方面に拡張する。
- アクセス解析と改善: Googleアナリティクスなどを用いて、ユーザーが離脱しがちなページや検索キーワードを分析し、問題点を修正していく。
外注の場合、SEOやマーケティング支援も含めたプランを依頼することで、サイトの成長をサポートしてくれる場合があります。内製の場合はマーケティングやライティングのノウハウも社内で蓄積できるメリットがある一方、専門知識を独自でキャッチアップし続ける必要がある点に注意しましょう。
ケーススタディ:中規模企業の実例シナリオ
ここでは、Web制作の外注か内製かを検討する「架空の中規模企業A社」がどのような意思決定を行うかというシナリオを示します。実際の状況と照らし合わせながら参考にしてください。
- 背景
- A社は製造業で、これまでコーポレートサイトを外注して運用してきた。
- サイトリニューアルを検討するにあたり、商品カタログ機能や問い合わせ管理機能を強化したいと考えている。
- 新たにWeb担当として若手社員を数名配置できそうだが、専門スキルはまだ浅い。
- 検討段階での課題
- A社のサイトはページ数が多く、過去の更新履歴も煩雑になっている。デザインや情報構成を整理したいが、どこから手をつければいいのかわからない。
- 新機能の追加にあたっては、既存データとの連携が必要で、セキュリティ対策に不安がある。
- 若手社員に学ばせる余裕はあるものの、短期的にはリソースや知識不足が心配。
- 外注か内製かの結論
- A社は最終的に「大幅なリニューアルは外注、運用と細部の更新は内製」というハイブリッド型を選択。
- デザインやシステム周りの初期構築は専門会社に依頼し、運用フェーズに移ったら社内チームがページ修正やデータ更新を担当する。
- 得られたメリット
- プロの手による高品質なサイト設計とデザインを短期で完成させられた。
- 社内チームは外注先とコミュニケーションを取りながら学習を進め、リニューアル後の細かい改修やニュース更新などを自力で行えるようになった。
- 長期的な保守コストも、すべてを外注し続けるよりは軽減された。
- 注意点・課題
- 外注と内製の切り分けが甘い箇所があり、一部の機能修正について担当の明確化が遅れた結果、納期調整に苦労した。
- 社員スキルの継続的なフォローアップが不可欠で、外注先のサポート契約も最低限は維持する必要がある。
まとめ
Web制作を「外注」するか「内製」するか、あるいは「ハイブリッド型」で進めるかは、企業ごとに大きく異なる結論が導き出されるテーマです。重要なのは、自社の目的やリソース、求める品質レベル、そして長期的な運用方針を総合的に判断したうえで最適な手段を選ぶことです。
- 外注の強みは、短期間で専門家による高品質なサイトを実現しやすい点にあります。その反面、コミュニケーションコストや保守費用の発生、ノウハウが社内に蓄積されにくいなどの課題もあります。
- 内製の強みは、サイト運用の自由度の高さとノウハウの蓄積です。自社担当者がスキルを身につけることで、将来的には柔軟かつ低コストでサイト改修ができる可能性があります。ただし、担当者の育成や離職リスク、コア業務との両立などクリアすべき問題も少なくありません。
- 現実的には、両方のメリットを取り入れたハイブリッド型を選ぶ企業が増えています。初期構築や高度な機能部分は外注し、日常の更新や軽微な改修は内製で行うなど、業務範囲を明確に切り分けることで、リスクを抑えつつスピード感とコストを両立できます。
いずれの形を選ぶにしても、最終的には「ターゲットユーザーにとって価値あるサイトかどうか」が成功を左右します。デザインや機能のみならず、提供する情報の質や更新頻度、ユーザーが欲しい情報にすぐたどり着ける導線設計など、総合的な視点でWebサイトを最適化し続ける姿勢が不可欠です。
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