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リピーターと新規客向けのページは分けた方がいい?

はじめに
ECサイトを運営するうえで、多くの中小企業が共通して抱える悩みの一つに「新規客とリピーターをどう取り扱うか」という課題があります。新規客とリピーターでは、欲しい情報や求めるサービスが異なるにもかかわらず、同じページ・同じメッセージを使い回してしまい、結果としてどちらにとっても訴求が弱い状態になりがちです。
たとえば新規客は「商品を詳しく知りたい」「初めて買うので使い方や評判が気になる」という段階。一方リピーターは「買い回りのメリット」「追加購入や定期購入の便利さ」など、より深いサービスを求めます。両者のニーズが違うのに同じ導線や同じコンテンツで済ませると、せっかくのサイト訪問を十分に活かせず、離脱率が高くなりかねません。
本記事では「リピーターと新規客向けのページを分けるメリットや運用のポイント」について、具体的な例や運用方法を交えながら詳しく解説します。これからサイトを見直そうとしている方や、離脱率を下げて購買率を高めたいと考える中小企業のマーケティング担当者にとって、ヒントとなる情報をお伝えします。
新規客とリピーターの違い
新規客とリピーターを一括りに扱っていると、それぞれの購買心理やニーズの違いを見落としてしまいます。まずは両者の特徴を理解することから始めましょう。
- 新規客
- 商品やブランドをまだよく知らない
- サイトの導線やシステムに慣れていない
- 評判・口コミ・商品詳細を重視する
- 安心感・信頼性が高いところから買いたい
- 価格面や購入のハードルを慎重に判断する
- リピーター
- すでに商品やブランドに親しみがある
- 再購入のメリット(会員特典、ポイントなど)を重視する
- 過去の購入履歴があるため、求める情報が明確
- 新商品のリリース情報やキャンペーンに敏感
- より短時間でスムーズな購買体験を望む
たとえば家電や食品など、多くの新規客は最初に「製品のスペック」「使用感」「安全性」「口コミ」をチェックするでしょう。しかしリピーターは「再購入に伴う値引き」「定期購入のメリット」「アップグレード情報」「買い忘れ防止策」などを気にします。両者が同じページに詰め込まれていると、リピーターにとって不要な基本説明が多すぎる一方、新規客には再購入特典や上級者向けの情報が先に目に入ってしまい混乱する可能性があります。
ページを分けるメリットとデメリット
新規客とリピーター向けページを実際に分割するメリット・デメリットを整理してみましょう。
観点 | メリット | デメリット |
---|---|---|
ユーザー体験 | 新規客・リピーター別に最適化した情報を提供できるため、ユーザーは余分な情報に惑わされない | ページ数が増えるため、ユーザーがどこを見ればいいか迷う可能性もある |
運用 | それぞれのユーザー層に特化した施策(クーポン、追加購入案内)を打ちやすくなる | ページ構成が複雑になり、運用コストが上がる |
集客 | 新規客向けページは検索で「初めての方」「使い方」などのキーワードに対応しやすい | リピーター向けページは会員ログイン後しか見られない設定にすると、検索流入が見込みにくい |
コンバージョン向上 | メッセージやレイアウトを細かくチューニングしやすく、CVRの最適化が期待できる | コンテンツ量が多くなりすぎると全体の検証やABテストが複雑化する |
実際にページを分割すると、運用に手間がかかるなどの懸念は少なからずあります。しかしながら、新規客とリピーターが求める情報をしっかり切り分けることで、離脱率の改善や購買率アップが期待できるという大きなメリットがあります。
ページ構成の具体例
では具体的にどのようにページを分割すればよいのでしょうか。ここでは、一般的なECサイトが導入している例を挙げてみます。
ページ名 | 主なコンテンツ | 対象ユーザー |
---|---|---|
「はじめての方へ」ページ | 企業の理念・商品ラインナップ紹介・初回購入特典・購入ガイド・よくある質問 | 新規客 |
会員専用ページ | 過去の購入履歴・再購入リンク・メルマガ・キャンペーン案内・購入金額に応じたポイント制度 | リピーター |
商品別詳細ページ | 新規客もリピーターも閲覧できるが、詳しいスペックや使用方法、レビュー | 新規客・リピーター兼用 |
FAQ・問い合わせ | アフターサポートや使い方の詳細案内 | 新規客・リピーター兼用 |
このように完全にサイトを分断するのではなく、必要に応じて「新規客向け」「リピーター向け」「共通」の3種類に大まかに分けると分かりやすくなります。
また、会員登録を促すタイミングも重要です。最初に購入する前の段階で会員登録を求めるとハードルが高すぎるケースもあるため、「購入時に会員登録も同時にする」もしくは「初回購入後に登録を勧める」という方法を検討するのもよいでしょう。
ページ分割の導入手順
「新規客とリピーター向けのページを分ける」といっても、思いつきで急にページ数を増やしてしまうと余計に混乱してしまいます。ここでは、おすすめの導入手順をまとめます。
- 現状分析
- 現在の訪問者数・離脱率・CVR(コンバージョン率)などの基本指標を把握
- ユーザーがどのページで離脱するか、どんなキーワードで流入しているかを確認
- ターゲットの設定とゴールの明確化
- 新規客には何を伝えたいか
- リピーターにはどんなメリットを用意したいか
- 具体的なコンバージョン目標(例:月間売上○円増、離脱率○%減など)を設定
- ページ構成の設計
- 新規客向けページの導線(サイト上のメインメニューやバナー配置など)
- リピーター向けの会員ページやログイン後の特典案内
- 商品ページへのアクセス方法(新規客には使い方やレビューの強調、リピーターには追加購入ボタンを目立たせる)
- デザインとコンテンツ作成
- 必要最低限のデザイン要素を考慮しつつ、文字量や写真を適切に配置
- 新規客向けには安心感を高める素材を、リピーター向けには購入意欲を高める訴求を
- テスト運用と解析
- 新規客向けページとリピーター向けページで離脱率や購入率がどのように変化するかを定期的に比較
- ABテストやアクセス解析ツールを活用して改善点を洗い出す
- 継続改善
- 分析結果に基づいてページの内容や導線を見直す
- キャンペーンやセール時にはリピーター向けの特典を強化し、新規客には割引クーポンをわかりやすく提示するなど、施策を随時調整
上記の流れを段階的に進めることで、大きな混乱を招くことなく「分割されたページ」の運用を軌道に乗せることができます。
運用・改善のポイント
ページを分割して終わりではなく、継続的な運用と改善が肝心です。以下の項目を定期的に振り返ると、より効果的なサイト運営が期待できます。
- ユーザーの行動データを収集する
アクセス解析ツールを使って、新規客向けページの滞在時間や直帰率、リピーター向けページの利用率をチェックします。それぞれのページでどんな商品が多く閲覧されているか、特典ページのクリック率はどうか、定期的に把握しておきましょう。 - 新規客向けキャンペーンとリピーター向け特典のバランス
新規客を増やすために初回クーポンや送料無料施策を打つ一方で、既存顧客を優遇する施策が弱いとリピート率が伸び悩みます。双方のメリットをバランスよく考え、常に見直す姿勢が必要です。 - 導線に無駄がないか
ページを増やすと、導線が複雑になりがちです。ユーザーがどのページから目的の情報に到達しているのか、余計なステップはないかなどを可視化し、定期的に確認しましょう。 - サイト全体の統一感を損なわない
新規客向けとリピーター向けでデザインや雰囲気があまりにも違うと、同じサイトなのに「別サイト」に来てしまったような混乱を招くかもしれません。ブランドイメージや色使い、フォントなどは一貫性をもたせる工夫が大切です。
以下に、運用・改善を行う際にチェックすべき主なポイントをまとめました。
チェック項目 | ポイント | 改善の方向性例 |
---|---|---|
デザインの一貫性 | 新規客ページ・リピーターページでイメージが統一されているか | ロゴやカラー、レイアウトの基本パターンを固定 |
メッセージの明確さ | 新規客向けには分かりやすい説明、リピーター向けには再購入メリットを強調 | 余計な要素を入れず、メイン訴求を絞る |
ユーザーの遷移動線 | ページ間の移動がスムーズか、クリック数が多すぎないか | ナビゲーションやバナーで目的の情報へ簡単に誘導 |
データ解析の適切さ | 離脱率・CVR・滞在時間などの指標を定期チェックしているか | データをもとにセクション単位でABテストを実施 |
コンテンツ更新頻度 | 情報が古くなっていないか、キャンペーンはタイムリーか | 季節や時期に合わせてコンテンツを更新 |
よくある疑問への回答
ここでは、新規客とリピーター向けにページを分ける際によく寄せられる疑問と、その回答をまとめます。実際に導入を検討する際のヒントにしてください。
ページを増やすとSEO的に不利になりませんか?
ページ数が増えると、確かにサイト構成が複雑になる可能性があります。しかし、狙うキーワードやコンテンツの質が明確であれば、むしろ検索エンジンから見て「専門性が高いページが増えた」と評価されることもあります。要は、ユーザーのニーズに合ったコンテンツを整理して提供するかどうかが重要です。
全てのページを完全に分割しないといけないのですか?
必ずしも全てのページを分割する必要はありません。たとえばトップページや商品詳細ページは新規客とリピーター兼用でよく、初回購入特典や会員専用特典など一部のページ・機能だけを区別するという方法もあります。まずは最低限のページ分割からスタートして徐々に調整していくと負荷が少ないでしょう。
運用コストを抑えながらページ分割を進める方法はありますか?
初めから大がかりにサイトリニューアルを行うのはリスクも大きく、コストもかかります。おすすめは、現行サイトに「初めての方へ」「会員ページ」などの入り口を少し追加する形から始めることです。最終的に効果が見えてきた段階で本格的に分割ページを増やすと、無駄な投資を抑えられます。
会員登録を促すタイミングはいつがベストでしょう?
一般的に、初回購入時や、購入後のメールマガジンの案内などが代表的なタイミングです。最初の訪問時にあまりに強く会員登録を求めると離脱されやすいので、購入を検討している段階に自然に組み込むのが望ましいです。試験的にABテストを行い、登録率が高まるタイミングを見極めましょう。
まとめ
新規客とリピーターが求める情報は大きく異なるため、ページを分けることで離脱率低減やコンバージョン率向上が期待できます。とはいえ、ただページを増やすだけではなく、適切な導線づくりや運用設計が重要です。新規客にはサイトの安心感や購入ハードルを下げる情報を、リピーターには再購入メリットやキャンペーン情報などを分かりやすく提供することで、双方にとって使いやすく効果的なECサイトを目指せます。
この記事で紹介したページ分割のメリットやデメリット、具体的な構成例、運用改善のポイントなどを参考に、自社のECサイトの現状を振り返ってみてください。少しずつ改良を重ねることで、中小企業でも十分に新規客の獲得とリピーターの育成を両立させることが可能です。ぜひ、継続的なチェックと改善を行いながら、自社のECサイトをより発展させていってください。