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2025.05.13
運用・改善

写真の著作権はややこしい?自分で撮ったものならOK?

写真の著作権はややこしい?自分で撮ったものならOK?

写真の著作権の基本とは

写真は、撮影した人(著作者)に著作権が発生します。これは法律で「写真の著作物」として定められており、撮った瞬間から自動的に権利が付与されることがポイントです。インターネット上には数多くの写真が存在し、簡単にダウンロードや転載ができるように見えますが、そのほとんどには撮影者の著作権があり、勝手に利用すると違法行為につながる可能性があります。

また、写真の被写体が人物であれば肖像権が発生する場合があり、ロゴやキャラクターなどが写り込むと商標権やパブリシティ権なども関わります。こうしたさまざまな権利を無視してしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれることもあるため、正しい理解が大切です。

以下の表は、写真を使う際に考慮したい主な権利・要素を簡単にまとめたものです。

権利・要素概要注意点・代表例
著作権撮影者に発生する権利無断使用禁止
肖像権写真の被写体である人物の権利顔が特定できる場合に配慮
商標権ロゴやマークの保護一部デザインには権利あり
パブリシティ権有名人の氏名・肖像の営利的利用権勝手に広告等に利用できない

上のように、ひと口に「写真」といっても多方面にわたる権利が絡むケースがあります。特に商用利用を考える場合は、いったん立ち止まって権利の有無を確認し、問題になりそうな部分を整理しておくと安心です。

自分で撮った写真は完全に自由?

「自分で撮った写真なら全部自由に使える」と考えがちですが、実はそう単純ではありません。なぜなら、写真の被写体に別の権利が存在するケースがあるからです。たとえば人物が写っていれば肖像権、著名な建物や街頭広告などが写り込んでいればそれらの意匠・商標など、外部の権利が影響を及ぼす場合があります。

ただし、通常の風景写真や商品写真などを自分で撮影した場合、著作権の点では基本的に撮影者が権利を持つため、他人の著作物を真似したり、撮影禁止の施設で撮ったりしない限り、大きな問題になる可能性は低いでしょう。それでも、以下のような点は注意が必要です。

  • 人物やロゴ、キャラクターがはっきり写り込んでいないか
  • 撮影禁止エリアや撮影禁止のモチーフを撮っていないか
  • 公共の場で撮影する際に、周囲の人のプライバシーが侵害されないか

こうした細やかな配慮は、後々のトラブルを避けるうえで欠かせません。

人物・肖像権の注意点

人物が明確に特定できる写真を無断で使用すると、肖像権侵害とみなされる可能性があります。本人がSNSで公開している写真だからといって、第三者が商用サイトや広告に転用していいわけではありません。また、個人のプライベートを侵害したり、本人の名誉やイメージを損ねるような使い方をすると、さらに問題が大きくなることがあります。

一般的に、被写体が個人である場合は掲載許可を取るのが無難です。場合によっては、同意書や利用規約などを交わしておくことが望ましいでしょう。特に商用利用を検討している場合は、本人に使用目的や掲載媒体をきちんと説明したうえで、ご了承を得る手続きがトラブル回避のカギとなります。

以下の表では、人物写真を使う際の主なリスクと対策をまとめました。

リスク対策備考
肖像権侵害明確な合意を得る(書面やメールでの許可)特に商用利用では同意書を交わす
プライバシー侵害写り込む背景や個人情報がないかを確認家族写真や子どもの写真はさらに慎重に
名誉・イメージの毀損写真の扱い方やキャプションで誤解を与えない誹謗中傷にならないか事前にチェック
勝手な二次利用(本人が気づかない場合)連絡先を確保し、使用範囲変更時に再確認写真を使う媒体が増える場合にも要配慮

商標やロゴが写り込む場合の扱い

写真の中に有名企業のロゴや商標が写り込んだ場合、「これって使っていいの?」と迷う方が多いでしょう。商標権は特定の商品やサービスを示すマークなどを保護するものであり、原則的に他者の商標を勝手に使ってはいけません。

ただし、写真にたまたまロゴが写っている程度であれば、商標権の侵害にならないケースもあります。ポイントは「商標を使用する意図」があるかどうかです。たとえば、そのロゴを使って自社商品に見せかけたり、他社ブランドを装うような使い方でなければ、商標権侵害にならない可能性が高いと考えられます。しかし、ロゴが写真の主役になっているような場合や、大きくクローズアップして利用すると「商標を無断で利用した」と見なされる恐れもあるため、慎重な判断が必要です。

また、キャラクターの肖像権やパブリシティ権という観点もあり、人気キャラクターや有名人の写真を勝手に商用利用するのは大変リスクが高い行為です。以下の表では、「商標やロゴが写り込んだ写真の扱い方」について整理しました。

状況使える可能性留意点
ロゴが小さく写っている高い商品のイメージを損なわないか確認
ロゴを大きくクローズアップ低い商標権侵害とみなされるリスクあり
キャラクターや著名人のイラスト・写真非常に低いパブリシティ権やキャラクター使用許諾が必要
街並み撮影で偶然映り込んでいる看板や広告やや高い意図的に利用しない範囲なら許容される場合が多い(状況により要相談)

撮影後の加工や二次利用のリスク

撮影した写真を加工や編集する場合、「もう原型がわからないくらいに加工したから著作権は関係ないのでは?」と考える人もいます。しかし元となる写真の著作権は消えません。たとえコラージュやフィルタリング、部分的な切り出しをしたとしても、原版となる写真が他者の著作物なら無断使用となる可能性があります。

自分が撮った写真であれば著作権者は自分ですが、被写体に権利がある場合は同様に注意が必要です。また、加工後に二次利用を考えるときは、改変や再配布を許可する範囲をどう設定するかを明確にしておくことが大切です。外部に写真データを提供するケースでは、契約書や利用規約などで細かく取り決めを交わしておくと安心です。

写真使用の具体的なケーススタディ

ここでは、写真の使用にまつわる具体的なシチュエーションをいくつか紹介します。

1. 社内イベントの写真をSNSにアップする

  • 社員の顔が写っている場合は、事前に公開について了承を得る
  • SNSにアップする範囲やアカウントの設定(公開範囲)を検討する
  • 企業のロゴや取引先のロゴが映っている場合でも、SNS上で宣伝目的に利用するなら許可が必要なことがある

2. 自社商品の写真をホームページで紹介する

  • 商品そのものに著作権のあるデザインがある場合でも、自社の所有物やライセンスがあるなら問題は少ない
  • 商品の背後にある他社の商標や個人情報などが映り込んでいないかチェックする

3. スタッフ紹介ページに人物写真を掲載する

  • 社員が自分で撮った写真を提供する場合、肖像権の取り扱いには十分注意
  • 退職後に写真を下げるかどうか、事前ルールを決めておく

これらのケースはあくまで一例ですが、実際の企業活動では写真を使うタイミングが頻繁にあります。利用するメディアが多いほど権利関係が複雑になるため、組織として基本的なルールづくりが欠かせません。

外注や撮影代行時の権利関係

写真撮影を外部のプロカメラマンや制作会社に依頼する場合、著作権の帰属先に注意しましょう。一般的に、写真の著作権は撮影者に帰属しますが、契約書で「著作権はクライアントに譲渡する」などと取り決めをすることもあります。ただし、譲渡には追加費用がかかったり、使用範囲に制限が設けられる場合もあるため、事前の打ち合わせが大切です。

撮影代行サービスでも、同様に「写真の著作権は撮影者にあるが、使用許諾を取得する」形が多く見られます。自社メディア以外の二次利用(たとえば広告や印刷物など)を見越しているなら、最初からその範囲まで交渉しておくと後々のトラブルが軽減されます。

著作権トラブルを回避するポイント

著作権や肖像権などに関する知識は、すべてを完全に把握するのが難しいほど広範囲に及びます。しかし、下記の基本的なポイントを押さえておけば、大半のトラブルを未然に防ぐことができます。

  1. 写真の出どころを確認する
    • インターネットで拾った写真はむやみに使わない
    • 自分で撮影した場合も被写体の権利を確認する
  2. 商用利用の範囲を意識する
    • 広告や販促で使う場合は、個人利用と扱いが違う
    • 肖像権やパブリシティ権の問題が大きくなる可能性が高い
  3. 契約や同意を明文化する
    • 外注撮影時は著作権の帰属や使用範囲を契約書に明記
    • 人物写真の許可は書面やメールで確認しておく
  4. 加工・編集も元写真の権利を消さない
    • リサイズやフィルターだけでなく、コラージュなど大幅な加工でも注意
    • 元写真の撮影者や被写体の権利を尊重する
  5. まとめて管理する仕組みを整える
    • 社内で使用する写真の使用ルールや注意点をガイドライン化する
    • 著作権表示やクレジット表記の要否を把握しておく

権利侵害の警告やトラブルが一度起こると、謝罪や賠償金の支払いはもちろん、企業イメージの低下を招きかねません。日ごろから「著作権は大丈夫かな?」と意識するだけでも、大きなリスク回避につながります。

まとめ

写真の著作権は撮影者に発生するものであり、自分で撮った写真だからといって必ずしも自由に使えるわけではありません。被写体の肖像権や商標の存在、撮影禁止エリアなど、複数の要素が絡む場合も多いため、常に細心の注意を払うことが必要です。また、外部のカメラマンに依頼する場合は、契約書によって使用範囲を明確にし、後から利用メディアを増やすときの手続きや費用についても合意を取り付けておくと安心です。

企業の活動シーンでは、ウェブサイトやSNS、広告、カタログなど、写真を活用する場面が数多く存在します。それだけに、早い段階で写真利用に関するガイドラインやフローを整備しておけば、日常業務での運用もスムーズになります。知らずにルールを破ってしまう前に、正しい知識と手続きを学んでおきましょう。