ホームページのターゲットを1人に絞れない時は、事業のお客様を無理に一人へまとめる必要はありません。先に決めるのは、トップページで最初に案内する優先読者と、その人に取ってほしい一つの行動です。ほかの相手は対象外にせず、入口と下層ページを分けて、必要な情報へ進めるようにします。

複数の顧客層へ同じ強さで話しかけると、トップページの言葉もボタンも増え、結局どの人にも「自分向け」と伝わりにくくなります。一方で、一人へ絞ることを「ほかの顧客を捨てること」と捉えると、社内の合意が止まりがちです。この記事では、両極端を避けるために、顧客候補の並べ方、優先順位を決める判断軸、別導線の作り方、公開後の見直しまでを一つの相談メモにまとめます。

結論:顧客層を一種類に固定するのではなく、「トップページの優先読者」「その人の次の行動」「ほかの読者の入口」の三つを決めます。

ターゲットを1人に絞る意味を誤解しない

最初に整理したいのは、「事業の顧客」と「ホームページで先に案内する相手」は同じ範囲でなくてもよい、という点です。事業としては個人と法人の両方へ提供していても、トップページでは今期に増やしたい法人相談を先に案内し、個人向け商品は見失わない入口から専用ページへ導く設計ができます。

逆に、事業の顧客層を一人へ決めても、ホームページには既存顧客、取引先、求職者、報道関係者などが訪れます。全員をトップページの主役にするのではなく、ページごとに「この場所では誰の疑問へ先に答えるか」を決めると、対象を狭めすぎずに説明の順番を整えられます。

整理する層決めること変わりやすさ
事業の顧客層誰へ商品・サービスを提供できるか事業戦略や提供体制が変わる時に見直す
サイト全体の読者誰がどの目的で訪れる可能性があるかサービス、採用、取引関係の変化で増減する
ページの優先読者このページで誰へ何を先に伝えるかページの目的や公開後の反応に応じて調整する

この三層を分けずに「ターゲットは誰ですか」とだけ聞くと、営業対象、サイト訪問者、トップページの主役が混ざります。そこで制作前の相談では、まず事業として対応する範囲を確認し、そのうえでページごとの優先読者を決める順番が現実的です。

まず、ターゲットを絞れない理由を三つに分ける

ターゲットを絞れない会社には、単に決断を先送りしているのではなく、複数の相手が必要になる事情があります。理由を分けずに「一人を選びましょう」と進めると、事業実態に合わない人物像を作るだけになるため、最初に次の三つのどれかを確認します。

事業やサービスそのものが複数ある

一つの会社が、法人向けの受託サービスと個人向けの商品販売を行っている場合、相手が違うのは自然です。ここでは一人の人物像へ統合するのではなく、会社全体を知る入口と、各事業を詳しく知る下層ページの役割を分けます。事業ごとの名称、強み、相談方法まで大きく異なるなら、下層ページだけでなく別サイトやランディングページ(LP)を検討する余地もあります。

購入者・利用者・決裁者が違う

企業間取引(BtoB)では、サービスを探す担当者、実際に使う人、予算を承認する人が別になることがあります。この場合、「誰が顧客か」を一人へ固定するより、最初に検索して比較する担当者を優先読者としつつ、利用者向けの使い方や決裁者向けの費用・契約情報へ進めるようにすると、意思決定の流れを止めにくくなります。

今のお客様と、これから増やしたいお客様が違う

現在の売上を支える顧客と、今後増やしたい顧客が同じとは限りません。現状だけで決めると将来の方向を反映できず、希望だけで決めると対応体制が追いつかないため、実績と事業目標を別々に書きます。トップページの優先順位は、この二つを比べたうえで、今回のホームページが担う役割に合わせて決めます。

三つの理由が重なることもあります。大切なのは、「ターゲットが多い」という結論で止めず、何が違うために同じ説明では足りないのかを言葉にすることです。その違いが、入口を分けるのか、下層ページを分けるのか、サイト自体を分けるのかを考える材料になります。

顧客候補は属性より「場面・疑問・行動」で一覧にする

顧客候補を出す時は、年齢や業種だけで分類せず、その人がサイトを見る場面、最初に抱く疑問、読後に取りたい行動まで並べます。J-Net21も、顧客の分類は年齢などの属性だけでなく、地域、心理的特徴、行動的特徴を組み合わせ、来店・購買動機を捉える考え方を示しています。ホームページでは、この動機を「何を確かめに来たか」まで具体化すると、掲載内容へつなげやすくなります。[1]

最初の一覧は、具体的な人物像を詳しく設定するペルソナ資料でなくても構いません。営業担当の記憶だけで決めず、実際の問い合わせ、商談で繰り返し聞かれる質問、既存顧客が選んだ理由、サイト内検索や、検索に使われた語句(検索クエリ)、問い合わせフォームの選択内容など、確認できる根拠を横に置きます。分からない項目は推測で埋めず、「要確認」と残します。

候補サイトを見る場面最初の疑問望む次の行動根拠
初めて比較する法人担当者社内で候補会社を探し始めた自社の条件に対応できるか対応範囲と事例を確認する過去の商談、問い合わせ
個人で利用したい人商品名や悩みから検索した自分でも購入・利用できるか個人向けページで条件を見る購入前質問、検索語
既存顧客追加依頼や手続き方法を探しているどこへ連絡すればよいかサポート窓口へ進む電話・メールの問い合わせ
求職者会社名や職種から調べている仕事内容と応募条件は何か採用情報を見る採用時の質問

この表を作る目的は、候補を増やすことではなく、同じページで説明できる相手と、説明を分けた方がよい相手を見つけることです。たとえば「初めての法人担当者」と「既存の法人顧客」は会社属性が同じでも、知りたいことと次の行動が違います。反対に、年齢や業種が違っても、同じ悩みを抱え、同じ説明を読み、同じ相談へ進むなら、一つの入口にまとめられる場合があります。

優先読者は、事業目標とページの役割で決める

候補を並べたら、好みや声の大きさではなく、今回のホームページで達成したいことに照らして優先順位を決めます。判断は点数の多数決ではありません。ある項目が高くても、対応できない相手を強く集める、契約条件が未整備なのに申し込みを促す、といった重大な不一致があれば優先できないためです。

確認軸確認する質問優先が上がる状態注意点
事業目標との関係今回、何を増やすためのサイトか売上、相談、採用などの目標へ直接つながる目標が複数なら期間と担当を分ける
提供・対応体制問い合わせが増えても対応できるか商品、担当、受付、納期の準備がある希望だけで先に訴求しない
説明の必要量その相手は何が分からず止まるか最初に整理すべき疑問が明確である情報量が多いだけで優先しない
次の行動読後に何をしてほしいか事例閲覧、見積相談、購入など一つに定められる複数の同格ボタンを並べすぎない
根拠の確かさ実績や問い合わせで確かめられるか実際の相談、受注、検索行動に手掛かりがある根拠がなければ仮説として扱う

たとえば、業務用部品の受託と個人向けキット販売を行う会社が、今期は法人の継続取引を増やしたいとします。法人案件に対応できる体制があり、商談で聞かれる条件も整理できているなら、トップページは法人担当者を優先し、個人向けには「個人向け商品を購入する」という独立した入口を用意する案が考えられます。個人向け売上が経営上欠かせない、または法人対応がまだ整っていないなら、同じ結論にはなりません。

優先読者を選ぶ時は、候補同士の価値を人として比べるのではなく、今回のページでどちらへ先に説明する必要があるかを比べます。この考え方なら、ほかの顧客を否定せず、トップページの限られた場所に順番を付けられます。

トップページと下層ページの役割を分ける

ホームページのターゲットを1人に絞れない時は?優先する相手を決める相談メモ

トップページは、全顧客へすべてを説明する場所ではありません。初めて訪れた人が、何を提供する会社か、自分に関係する入口はどこか、次に何を見ればよいかを判断できるようにします。詳しい条件、事例、料金、進め方は、相手やサービスに対応する下層ページで説明した方が、情報の関係を保ちやすくなります。

Google Search Centralの検索エンジン最適化(SEO)スターターガイドも、サイトを論理的に整理すると、ユーザーと検索エンジンが各ページの関係を理解しやすくなると案内しています。これは「ターゲットごとに必ず別ページを作る」という意味ではありませんが、異なる疑問を一つのページへ重ねるより、役割に沿って情報をまとめる判断の裏付けになります。[2]

役割トップページ下層ページ
優先する相手事業目標上、最初に案内したい読者サービス、立場、検討段階ごとの読者
伝える内容会社・事業の全体像、優先メッセージ、入口対象、課題、違い、条件、事例、進め方
情報量自分に関係があるか判断できる短さ比較や社内確認に必要な深さ
次の行動適切な詳しいページへ進む相談、購入、応募など一つの具体的行動へ進む

下層ページを作る時も、同じ会社紹介を少しずつ言い換えて増やすのではなく、その相手に固有の疑問へ答えます。個人向けと法人向けで料金体系、必要書類、相談方法が同じなら一つのページで案内できますが、決裁に必要な資料や契約条件が違うなら、同じサービスでも説明の入口を分ける理由があります。

複数読者の入口は、名前より「何が分かるか」まで書く

別の入口を用意しても、「法人のお客様」「個人のお客様」「詳しくはこちら」だけでは、次のページで何が分かるかを判断しにくいことがあります。入口のラベルには、相手の呼び方だけでなく、確認できる内容や取れる行動を短く添えます。

Google Search Centralは、リンクの文字を説明的で簡潔にし、リンク先への期待が分かるようにすることを推奨しています。ホームページの入口でも、「こちら」より「法人向けの導入条件と相談方法を見る」の方が、読む人は進む理由を判断しやすくなります。[3]

分かりにくい入口役割が伝わる入口
法人のお客様へ法人向けの対応範囲と相談方法を見る
個人のお客様へ個人向け商品と購入条件を見る
サービスサービス別に内容と進め方を比べる
詳しくはこちら導入事例から自社に近い相談を見る

入口を増やすほど親切になるわけではありません。トップページでは優先読者が迷わず進める主な入口を一つ置き、ほかの読者には必要な数だけ明確な補助入口を用意します。各入口の先で同じ問い合わせフォームへ進む場合も、フォームまでの説明を相手別に整えると、「自分は対象か」「何を伝えればよいか」という不安を減らせます。

二つの相手を同じくらい優先する必要がある場合は、無理に一方を小さくせず、二つの入口を同じ階層で置く方法もあります。ただし、両方へ同じ抽象的なキャッチコピーを見せるのではなく、それぞれの目的と次の行動を分けてください。二つまでなら並列で比較しやすくても、三つ、四つと同格の入口が増える場合は、事業別のまとめページやナビゲーションの再編を検討します。

優先読者の相談メモを1枚にする

ホームページのターゲットを1人に絞れない時は?優先する相手を決める相談メモ

社内や制作会社へ共有する時は、長い人物設定より、トップページと下層ページの役割が分かる一枚のメモが役立ちます。項目をすべて埋める必要はありませんが、優先読者、最初の疑問、次の行動、ほかの読者の入口は空欄にせず、決め切れない場合は迷っている理由を書きます。

項目書く内容記入例
対象ページ今回、役割を決めるページトップページ
優先読者最初に案内したい相手初めて業務用製品を比較する法人担当者
見る場面どの段階で訪れるか候補会社を三社ほど探している
最初の疑問先に解消したい不安小ロットや特注に対応できるか
最初に伝えることページ冒頭の中心メッセージ用途に合わせて仕様と数量を相談できる
次の行動読後に一つだけ進めたい行動対応範囲と事例を見る
ほかの読者の入口対象外にしないための導線個人向け商品を購入する
根拠判断に使った事実直近の問い合わせ内容と営業担当の記録
未確定事項公開前に確認すること対応可能な最小数量と返答担当

メモを書いたら、優先読者の欄だけを見て合意したことにせず、「最初の疑問」と「次の行動」がつながっているかを確認します。たとえば最初の疑問が費用なのに、次のページが会社沿革だけなら、入口の順番か下層ページの内容を見直す必要があります。反対に、疑問へ答えた直後に相談しか選べない場合は、事例や条件を確認したい人の判断材料が不足しているかもしれません。

また、未確定事項は制作側の想像で補わず、事業側が確認する項目として残します。対象地域、料金、納期、対応可能な数量、契約条件など、問い合わせ前の判断に影響する事実が決まっていないなら、断定的なコピーより「相談後に確認する範囲」を明示した方が、実態に合う案内になります。

公開後は問い合わせ内容で優先順位を見直す

優先読者は、一度決めたら永久に固定するものではありません。公開前の判断は仮説を含むため、問い合わせや商談が一定量たまった時点で、想定した相手が来ているか、別の相手が迷っていないかを確認します。単純なアクセス数だけでなく、どのページを見て、何を質問し、どの行動へ進んだかを合わせて見ます。

  1. 公開時のメモを残し、優先読者・最初の疑問・次の行動を記録する。
  2. 問い合わせや商談を、相手の種類、相談内容、流入ページ、決まらなかった理由で分類する。
  3. 想定と実際の差を、「入口の名前」「説明不足」「対象条件」「受付体制」のどこで生じたか確認する。
  4. 差に応じて、トップページの順番、入口の言葉、下層ページの内容、フォーム項目を必要な範囲だけ直す。
公開後に見えたこと考えられる原因見直し候補
優先した相手の相談は来るが、同じ質問が多い下層ページの説明不足よく聞かれる条件や事例を追加する
補助読者が自分の入口を見つけられない入口名が抽象的、配置が分かりにくい用件が分かる名称へ変え、導線を見直す
対応できない相談が増えた対象条件が広く見える対応範囲と対象外の案内を明確にする
二つの読者が同じ説明と行動を選んでいる分ける必要が小さいページや入口を統合できないか検討する
増やしたい相手から反応がない仮説、流入、訴求、提供条件のどこかが不一致アクセスだけで断定せず、営業情報と合わせて再検討する

問い合わせが少ない時は、少ないデータから優先順位を逆転させないことも大切です。営業担当が受けた質問、既存顧客への聞き取り、検索結果で使われる言葉、電話での相談など、サイト外の情報も合わせて判断します。根拠が不足している場合は、主な入口を保ったまま補助読者の説明を試すなど、戻しやすい変更から始めます。

どうしても1人に決められない場合の例外

事業上、二つの顧客層が同じくらい重要で、どちらにも十分な提供体制があり、次の行動も明確なら、トップページに二つの主入口を置いても構いません。たとえば法人向け研修と個人向け講座を同じブランドで運営し、売上と運用を両輪としている場合は、「法人研修を検討する」「個人講座を探す」を同じ階層で示す方が実態に合います。

ただし、二つの入口を置くことと、二つの説明を一段落へ混ぜることは別です。冒頭では会社全体の共通価値を短く示し、その後に相手別の入口へ分けます。料金、契約、利用方法、担当部署まで大きく違うなら、下層ページを分けるだけでなく、サービス紹介サイト、LP、別サイトのいずれが管理しやすいかを検討します。

新規事業などで、どの相手が有望かまだ分からない場合もあります。その時は、架空の一人を正解として固定せず、「今回まず確かめる優先読者」を仮置きし、期間、確認する反応、変更条件をメモへ加えます。仮説であることを社内共有できれば、公開後の結果を失敗ではなく判断材料として扱えます。

制作会社へ渡す前の最終確認

ここまでの内容を制作会社へ渡す前に、次の六点が一続きになっているか確認します。資料が完璧でなくても、決まっていることと未確定のことが分かれていれば、ページ構成や原稿の相談を始められます。

  • 今回のホームページで増やしたい行動を、一文で説明できる。
  • 顧客候補ごとに、見る場面・最初の疑問・次の行動を並べている。
  • トップページの優先読者と、その判断に使った根拠が分かる。
  • ほかの読者を対象外にせず、入口または下層ページを決めている。
  • 料金、対応範囲、納期など、事業側で確認する未確定事項を分けている。
  • 公開後に何を見て、どの条件で順番を見直すかを決めている。

Bäm(バム)では、サイト名やページ数が決まっていない段階でも、会社・サービスの目的から必要な形を整理する方針を案内しています。顧客候補が複数いて構成を決めにくい場合は、完成したペルソナを用意するより、現在の問い合わせ、増やしたい相談、迷っている理由を共有した方が、実態に合う検討を始めやすくなります。[4]

まとめ:優先する相手を決め、ほかの読者は見失わない

ホームページのターゲットを1人に絞れない時は、事業のお客様全員を一人へ固定するのではなく、トップページで最初に案内する優先読者を決めます。そのうえで、ほかの読者には目的が分かる入口と下層ページを用意すれば、伝える順番と対応範囲を両立できます。

判断は、事業目標、対応体制、説明の必要量、次の行動、根拠の五つを確認し、点数だけで機械的に決めません。同じくらい重要な相手が二つある、新規事業で根拠が少ないといった例外では、並列入口や仮説運用も選べます。最後に相談メモを残し、公開後の問い合わせと照らして順番を見直せる状態にしておくことが、無理なく続けられる設計につながります。

参考資料

  1. 顧客ターゲットを明確化するには、どうすればよいのでしょうか?(J-Net21(独立行政法人中小企業基盤整備機構)、2026-08-28確認)
  2. SEO Starter Guide: The Basics(Google Search Central、2026-08-28確認)
  3. SEO Link Best Practices for Google(Google Search Central、2026-08-28確認)
  4. ホームページ制作サービス一覧|目的から選べる4つの制作|Bäm(Bäm、2026-08-28確認)