はじめに
中小企業においては、ホームページの更新担当者が少人数だったり、場合によっては“その業務を任されていた人”がほぼ一人だけ、というケースが珍しくありません。そのため、担当スタッフが辞めてしまうとホームページの管理や運用が止まり、長期間放置される事態に陥ります。この記事では、そうした状態に陥った背景やリスクを整理したうえで、更新を再開するための具体的な方法や社内体制づくりについて解説します。運用体制を見直したりマニュアルを整備することで、今後のリスク軽減や企業イメージの向上にもつなげられるはずです。
スタッフが辞めるとホームページ更新が止まる原因
担当スタッフが辞めた後にホームページが放置される背景として、いくつかの要因が考えられます。主な原因を挙げてみましょう。
- 担当業務の属人化
一人の担当者が独自に運用していた場合、ノウハウが共有されず、他の社員がサポートできないままになっている。引き継ぎマニュアルがなかったり、口頭でしか説明されていない状況に陥ると、実質的に更新作業がストップしてしまう。 - 経営層や他部署の理解不足
ホームページの更新を重視する意識が社内に浸透していないため、「一時的に放置しても問題ない」と軽視されがち。業務の優先順位が下がり、新たな担当者を育てるリソースが割かれない。 - 更新作業に必要なスキルセットの不足
デザインの編集ツールやCMS(コンテンツ管理システム)の使い方、さらにはHTML・CSSなどの基本知識を必要とするケースもある。担当者が辞めた段階で、スキルを引き継げる人が社内にいない場合、更新ができなくなる。 - 外注コストや手続きのハードル
小さな修正でも外部制作会社に依頼すると、コストややり取りの手間がかかる。そのため更新の必要性を感じても気軽に実行しづらく、そのままになってしまう。
更新が止まることによるリスク
ホームページの更新が止まると、企業のイメージやビジネスに以下のような悪影響が及ぶ可能性があります。
- 情報の陳腐化による信頼低下
企業概要や製品・サービス情報、ニュースリリースなどが古いままだと「きちんと運営されていない会社」と認識されてしまう。 - 顧客との接点喪失
新着情報やブログなどを継続的に更新することでブランド力が高まったりSEO評価が向上するが、それが止まると潜在顧客との接点が薄れてしまう。 - 緊急時の情報発信ができない
トラブル発生時や重要なお知らせをすぐ掲載できないため、混乱やクレームにつながる可能性がある。 - 採用面での不利
採用情報の更新ができないと、応募者が「この会社は大丈夫なのか」と不安に感じる場合もある。 - セキュリティリスクの放置
CMSやプラグインのバージョンを最新に保っていないと、サイト改ざんなどの脆弱性を狙われやすくなる。
ここで、担当者が辞めた際に生じやすいリスクをまとめた表を示します。表を見ることで、具体的にどのような損失が発生し得るのかが分かりやすくなります。
リスク | 具体的な影響 |
---|---|
情報の陳腐化 | 製品情報や会社概要が古いまま残り、顧客に誤解を与える可能性がある |
信頼低下 | 公式サイトにも関わらず更新が滞ることで「管理が行き届いていない」と見られる |
SEO評価の悪化 | 更新頻度が下がり検索エンジンでの順位が低下し、集客力が落ちる |
セキュリティリスク | CMSやプラグインの更新を怠ると改ざんやウイルス感染のリスクが高まる |
採用活動への影響 | 最新の採用情報を発信できず、求職者へのアピール機会を逃す |
自社内で更新を再開するための手順とポイント
スタッフが辞めてしまったあとでも、自社のリソースでホームページの更新を再開することは十分可能です。ただし、下準備や段階的な取り組みが必要になります。以下では、更新を再開するための流れを整理します。
- サイトの現状把握
- どのようなページがあり、どんなシステム(CMS)やサーバを使っているのか
- ログイン情報や契約情報(サーバ、ドメイン管理など)の確認
- 運用担当者の選定
- デザイン知識や文章作成の得意な社員、あるいは興味がある社員を候補に
- 必要に応じて最低限のHTML・CSS、CMS操作の教育を行う
- 更新方針の決定
- どの部分をどれくらいの頻度で更新するのか
- 社内の目線(経営者の視点、現場スタッフの視点)を盛り込む計画を立てる
- 作業フローの確立
- 原稿作成→レビュー→公開などのプロセスを簡易化
- 更新方法が分かりやすいよう、操作マニュアルをまとめる
- 定期メンテナンスのスケジュール化
- CMSやプラグインのアップデート日程
- バックアップの定期実行
- サイト全体の不具合チェック
以下に、自社内でホームページを更新していくためのステップを表にまとめました。
ステップ | 内容 | ポイント |
---|---|---|
1. 現状把握 | サイト構造・使用技術・契約情報を整理し、更新に必要なアカウント情報を確認 | 資料・情報が社内にあるか、なければ元担当者や外部会社に問い合わせ |
2. 担当者選定 | 更新作業を担う社員を決め、必要であれば基礎研修を実施 | デザイン・ライティングいずれも得意な人がいれば心強い |
3. 更新方針策定 | ページごとの更新頻度や内容の優先順位を決める | 経営方針や現場状況を反映させると、サイトに一貫性が生まれる |
4. 作業フローの整備 | 原稿の校閲・承認から公開までのプロセスを簡略化し、責任者を明確化 | 記事やページごとに承認ルートが曖昧だと更新が滞るため役割分担を明確に |
5. 定期メンテナンス | セキュリティアップデートやバックアップを定期的に実施 | システムやプラグインの更新情報をチェックし、セキュリティリスクを回避する |
外部委託を検討する際の注意点
自社内に更新できる人材がいない場合や、専門的なデザイン・開発が必要となる場合は、外部委託を検討するのも一つの手段です。とはいえ、小規模事案の依頼だとコストや契約の柔軟性などで悩むケースがあります。ここでは、外部委託する際に気をつけたいポイントをまとめます。
- 見積もりの明確化
- 単発の修正費用、月額保守費用など、項目ごとにわかりやすい見積もりを提示してもらう
- 修正依頼の度にどの程度の費用が発生するのかを事前に把握する
- 更新頻度と対応スピード
- 急ぎで対応してほしい場合、どの程度のリードタイムが必要か確認
- 更新頻度が少ないならスポット契約、多いなら月額契約など柔軟に検討
- 契約形態
- 長期契約で安定的にサポートを受けるのか、必要なときだけスポットで依頼するか
- 業務委託契約や準委任契約など、法的な位置づけも含めて検討する
- 成果物の所有権
- デザインデータやコーディングデータなどの所有権がどちらに帰属するか
- 担当者がまた辞めても継続運用できるように、引き継ぎやデータ共有のルールを決める
以下に、外部委託を検討する際のメリット・デメリットを簡単にまとめた表を示します。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
専門性の確保 | プロの知見によりデザインや機能面で高品質を期待できる | 小規模の修正でも相応のコストがかかる |
人材育成不要 | 社内で新たに担当者を育成する手間・時間が削減できる | 自社にノウハウが蓄積しにくい |
スピード対応 | 依頼内容によっては早期に対応してもらえる | 対応状況が相手の都合に左右される場合がある |
長期的なリレーション構築 | 定期的な相談ができるパートナーとして継続的に支援を受けやすい | 外部会社の業務方針変更やスタッフ入れ替えによる不安定要素がある |
マニュアルやデータ共有面 | 事前に要件をしっかり伝えることで、合理的なアウトプットが得られる | 発注時のコミュニケーションが不十分だと、意図とずれた仕上がりになる |
引き継ぎマニュアルの重要性と作成のコツ
一度、担当者が辞めてしまうと、次の担当者が何も分からずに困るという状況が発生しやすくなります。そうならないためにも、引き継ぎマニュアルを整備しておくことが重要です。
- マニュアルの目的を明確にする
更新作業の流れや、注意すべきポイントを共有することをゴールとする。 - 作成時のポイント
- わかりやすい言葉を使う
専門用語はなるべく平易な表現や図解を用いる。 - 画像や画面キャプチャを活用
作業手順の画面をスクリーンショットで示すと、視覚的に理解しやすい。 - トラブルシューティングを盛り込む
「画像がアップロードできない」「プラグインでエラーが出る」といった代表的なトラブルと対処法を示す。 - バージョン管理や更新履歴の記録
マニュアルそのものもアップデートが必要なので、日付や改訂内容を記載する。
- わかりやすい言葉を使う
- マニュアル作成の流れ
- サイト概要と目的の整理
・サイトのテーマ、更新の目的を理解 - 作業のステップごとの記載
・更新作業の画面遷移や入力項目を順序立てて説明 - 問い合わせ先や参考資料の提示
・運営会社やホスティング会社の連絡先、トラブル時の対応方法 - 定期的なレビュー
・スタッフの意見を聞いて改善、不要箇所を削除
- サイト概要と目的の整理
具体例やエピソード紹介
ここでは、よくあるケースをいくつか紹介します。実際の企業現場でどのように対処したかをイメージすることで、自社に合った方法を検討しやすくなるでしょう。
- 現場スタッフによる独自更新の試み
営業部の担当者が一念発起してCMSの使い方を学び、ブログ記事の更新やニュースリリースを載せてみた。最初は時間がかかったものの、こつこつ慣れていくうちにスピードも上がり、社内の評価も高まった。 - 必要最低限の機能に絞ったサイトリニューアル
離職した担当者が複雑な機能を追加していたため管理が負担になっていた。そこで機能を最低限に絞り、シンプルな更新作業のみを残す構成にリニューアル。結果的に運用しやすくなり、他部署の協力も得られた。 - 外部デザイナーと月額契約で継続サポート
社内では文章校正や写真撮影を行い、デザイン面や大きな改変時のみ外部デザイナーに依頼する体制を構築。お互いの得意分野を活かすことで、コストと品質の両立を実現。
まとめ
担当スタッフが辞めてホームページの更新が止まってしまうと、企業のブランディングや信頼度、さらに採用や営業活動にも多大な影響が及ぶ可能性があります。重要なのは、更新作業を「担当者一人に丸投げ」するのではなく、社内全体で必要性を理解し、運用体制を構築しておくことです。
- 社内で運用を継続するためのスキルやノウハウを、マニュアルや研修を通じて共有する
- 外部委託する際は契約形態や成果物の所有権などをクリアにして、長期的なパートナーを見据える
- 更新を止めないための仕組みづくりを行い、セキュリティ面でも最新の状態を維持する
今後、同じような状況が起きないようにするには、社内外のリソースを上手に活用し、必要な部分だけサポートを外注するなど柔軟な運用がポイントとなるでしょう。ホームページの更新を円滑に進めることで、企業のイメージ向上や顧客とのつながり強化に繋げていくことができます。
コメント