BtoBサービスの導入事例を作りたいけれど、削減時間や売上への効果を計測していない。そんなときも、導入前の困りごと、選んだ理由、使い始めてからの仕事の変化は、取材で確かめて伝えられます。
数字がない部分を「劇的に改善」「大幅な効率化」といった言葉で埋める必要はありません。読み手が知りたいのは、自社と似た仕事で使えるか、導入に何が必要か、使う人がどのように動くようになったかです。確認できる変化を、一つの業務に沿って説明します。
成果の数字がなくても、仕事の前後は比べられる
例えば、社内の問い合わせを共有するサービスの架空例を考えます。以前は、総務への質問にメールで回答していました。同じ内容の質問が来ても、前の回答が別の担当者のメールにあるため、その人へ聞き直していました。
導入後は、質問と回答を共有の記録に残し、新しい質問を受けた担当者が過去の対応を検索する運用になったとします。回答時間の短縮率は調べていませんが、「過去の回答を確認する場所」と「誰が確認できるか」が変わったことは説明できます。
この場合の見出しは、「問い合わせ対応を大幅に効率化」よりも、「担当者ごとのメールにあった回答を、チームで検索できる記録へ」とすると、実際の変化が伝わります。これは書き方を示す架空例です。自社の事例では、利用者への聞き取りと実際の運用を照合してから文章にします。

取材では「便利になりましたか」から一歩進める
「導入して便利になりましたか」と聞くと、答えも「便利になりました」で終わりがちです。最近の実際の仕事を思い出してもらい、導入前ならどうしていたかを尋ねると、文章にできる場面が見つかります。
先ほどの例なら、「直近の問い合わせでは、最初に何を見ましたか」「そこに答えがなかったときは、誰に確認しましたか」「前は同じ内容をどう探していましたか」と聞きます。画面の使い方だけでなく、例外が起きたときの動きまで確認すると、サービスに任せられることと人が判断することが分かります。
取材する相手によって、知っていることも違います。導入を決めた人には選定理由を、日常的に使う人には具体的な作業を聞きます。一人の担当者が話した実感を、そのまま会社全体の成果に広げないようにします。
残せる記録があれば、当時の手順書、導入時の説明資料、現在の画面などと照合します。資料がない部分は追加で確認し、裏付けが取れない変化を見出しの中心に置かないようにします。
選んだ理由と、使えるようにした準備を書く
導入事例は、導入後の感想だけでなく、なぜその方法を選び、どのように運用へつなげたかも判断材料になります。機能一覧を繰り返すより、当時の仕事にとって必要だった条件を示します。
架空例では、「質問を記録できる」という機能だけでなく、「複数の担当者が、質問と回答を一緒に探せること」が選定条件だったとします。それが実際に選んだ理由なら、読者は自社でも同じ条件が必要かを考えられます。選定理由を後からもっともらしく作るのではなく、当時の担当者や検討資料で確かめます。
kintone AWARD 2016のUSEN経営企画室によるエントリー情報には、導入前の管理方法、対象業務、求められた条件、構築の経緯が掲載されています。現在の製品性能を評価する資料としてではなく、導入の背景や判断を説明する構成の参考になります。
使い始めるまでの準備も省かないようにします。架空例なら、過去の回答を選んで移し、記録する項目を決め、回答後に追記する担当を決めたことが当てはまります。提供会社が支援した部分と、利用企業が決めた運用を分けると、読者が導入時の仕事を想像できます。
事実、実感、まだ測っていないことを分ける
「回答を共有の画面に残す運用へ変えた」は、運用として確認する事実です。「前の担当者に尋ねる負担が軽くなったと感じる」は、話した人の実感です。「回答時間が何割減ったか」は、条件をそろえた計測が必要な別の話です。
実感を掲載するなら、誰が、どの仕事について話しているかが分かる形にします。本人が「探しやすくなった」と話したことを、「全社の生産性が向上した」へ書き換えると、意味が広がってしまいます。発言を読みやすく整えた場合も、完成文を本人に確認してもらいます。
時間を測っていないのに、担当者の記憶から正確そうな削減率を出す必要はありません。本文の成果説明が数値効果まで連想させる場合は、「対応時間の変化は計測していません」と添え、確認できた運用の変化へ話を戻せます。

残っている課題を含めて、現在の到達点を示す
事例を良い話だけに整えるより、どこまで使えているかが分かる方が、導入後の姿を考えやすくなります。架空例で、過去の回答がすべて移せていないなら、その範囲を説明します。複雑な質問は専門の担当者へ確認しているなら、その人の判断が今も必要なことを残します。
また、運用の変化がサービスだけによるものか、同時に行った業務整理や社内ルールの変更も関係しているかを確かめます。「導入しただけで変わった」と見せず、利用企業が取り組んだことも記載すると、同じ成果を無条件に約束する文章になりません。
原稿は、導入前の場面、選定理由、準備と役割、現在の運用、残る課題の順で組み立てられます。見出し、本文、写真や画面の説明を含む公開案を取材先へ確認し、取材時点も残します。後日、利用範囲が変わった場合は、当時の話と現在の案内を混ぜずに更新します。
BämのIT・BtoBサービスのホームページ制作では、利用場面や支援範囲を、原稿・図・画面へ整理します。成果の数字がそろっていない場合も、今ある資料とお話から、何を追加で確認すれば事例として伝えられるかを考え、サービス紹介につながる構成をご提案します。