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独自開発CMSを作ってもらったが更新しづらい…改善できる?

はじめに
企業や団体のWebサイトを立ち上げる際に、制作会社が独自に開発したCMS(コンテンツ管理システム)を導入するケースがあります。開発当初は要件やデザイン性に合わせた自由度の高さが魅力となりますが、いざ日常的な運用を始めると、更新のしづらさやメンテナンス性の問題が表面化して困っているという声が少なくありません。特に中小企業の場合、社内リソースが限られ、サイト更新や管理に時間とコストをかけられない状況になりがちです。
本記事では、独自開発CMSの改善策や、WordPressなどの汎用CMSに移行する際のポイントを中心に解説します。サイト運用の現状を見直すきっかけにしていただき、より効率的に情報を発信できるWebサイトを目指すための参考としてお役立てください。
独自開発CMSを改善するメリットと注意点
独自開発CMSの特徴
独自開発CMSは、企業の要件に合わせて柔軟に機能を追加・変更しやすい一方で、以下のような特徴があります。
- 機能が限定的:必要な機能だけを搭載しているために汎用性が低い
- UI(ユーザーインターフェース)のクセが強い:一般的なCMSと操作方法が異なることが多い
- メンテナンスに制作者の専門知識が必要:保守契約を結んでいないと機能拡張やトラブル対応が難しい
- 運用ノウハウが属人化しやすい:更新作業を担当できる人が限られ、引き継ぎが困難
こうした背景から、独自開発CMSの改善を検討するメリットと注意点を整理してみます。
項目 | メリット | 注意点 |
---|---|---|
運用コスト | 必要最低限の機能で運用できるため、追加のライセンス費用などが不要 | 開発元と保守契約が切れている場合、問題発生時の対応に追加コストがかかる可能性 |
カスタマイズ自由度 | 独自仕様やデザインに合わせた機能を柔軟に実装できる | 開発元に依存する部分が多く、大幅な仕様変更に別途費用や時間がかかる |
UI/UX面 | デザインや操作画面を独自に設計できる | 一般的な操作方法と異なるため、新担当者が戸惑いやすい |
機能追加のしやすさ | コアシステムを理解していれば必要な機能のみを拡張できる | 開発元の協力が不可欠で、外部のシステム担当者では対応が難しい場合がある |
セキュリティ面 | 外部に流通していないため、標的型攻撃や既知の脆弱性リストに載りづらい | セキュリティパッチやアップデートを定期的に行わないと、脆弱性が放置される恐れがある |
情報発信のスピード | 既存のデザインに合わせて更新フォームが最低限で済む | 必要な編集項目が少ない分、レイアウト変更などが頻繁な場合は更新速度に支障が出ることがある |
メリットを活かしつつも、運用コストの見直しやUIの改善が必要だと感じた場合は、開発会社に相談して設計をリファインするか、思い切って汎用CMSに移行するかを検討してみましょう。
改善する場合に見落としがちなポイント
- UIの最適化
更新作業が煩雑なケースでは、ボタン配置や入力項目の整理など、UI/UX面を改善するだけでもかなりの効果が期待できます。 - 保守体制の強化
独自開発CMSを改修して使い続ける場合、バグ修正や機能追加への迅速な対応を望むなら、開発元との保守契約をしっかり結ぶ必要があります。 - 将来の拡張性
企業の成長やサービス内容の変化に伴い、新たな機能追加が必要になることがあります。拡張性を見越したアーキテクチャを用意しておくことが重要です。
汎用CMSへの移行という選択肢
汎用CMSの主な特徴
WordPressなどの汎用CMSは世界中で利用されており、プラグインやテンプレートが豊富であることが大きな強みです。更新やカスタマイズについても、専門的な知識がなくとも行いやすい仕組みが充実しています。特に以下のメリットが注目されます。
- 操作性:管理画面が比較的わかりやすく、チーム内での共有もしやすい
- 拡張性:プラグインを利用することで新機能の追加が容易
- 開発コミュニティ:トラブルシューティング情報やサポート体制が充実
- ランニングコスト:システム自体は無料(オープンソース)で利用できるものも多い
ただし、汎用CMSでもデザインや機能を大幅にカスタマイズする場合は、それなりの開発費用がかかることがあります。また、セキュリティ面では世界的に利用されているため、悪意ある攻撃者の標的になりやすいとも言えます。定期的なアップデートやセキュリティ対策は不可欠です。
汎用CMSへの移行時に考慮すべき点
- デザインの再構築
現行サイトのデザインをそのまま汎用CMSで再現するには、テーマやテンプレートをカスタムする必要があります。 - データ移行の手順とコスト
既存のページデータや画像をどのように移行するか、特にデータベース構造が独自の場合は慎重なマッピングが必要です。 - 移行作業のスケジュール管理
移行期間中はサイト更新が止まる、もしくは限定的になる可能性があるため、リリースタイミングやテスト期間を考慮して計画を立てる必要があります。
項目 | 汎用CMS移行のメリット | 注意点 |
---|---|---|
開発・運用コスト | オープンソースのため初期費用が抑えられる | カスタマイズ度合いによっては、結果的に独自開発並みの費用に |
更新作業のしやすさ | 管理画面のUIが統一されているため、初心者でも操作しやすい | 大量のプラグイン導入は管理が複雑化し、動作不安定を招く恐れ |
セキュリティ対策 | コミュニティによる最新情報と定期アップデートがある | 世界的に利用されるため、脆弱性が見つかれば攻撃対象になりやすい |
デザイン・カスタム性 | 豊富なテンプレートでデザインを手軽に変更可能 | 独自性を出すにはテンプレートのカスタムが必要 |
開発元への依存度 | 大勢の開発者コミュニティがいるため、不具合時も情報を得やすい | 特定の制作会社の独自カスタム部分は、引き継ぎに注意が必要 |
独自開発CMSか汎用CMSか:判断材料の整理
自社サイトの目的や運用体制によって、独自CMSを続けるべきか、汎用CMSに移行すべきかは変わります。判断を誤ると、結果的に運用負荷が高まったり、コストがかさんだりする恐れがあります。以下の視点をもとに冷静に検討してみましょう。
- サイトの規模と更新頻度
- 更新頻度が高い場合、操作性や追加スタッフの教育コストは重要なポイントとなります。
- 過去の記事やページ数が多い場合、移行時のデータ変換やリダイレクトの計画が必要です。
- 社内リソースとスキルレベル
- プログラミングやサーバー管理の知識を持つ人材がいるかどうか。
- 更新担当者が複数いる場合は、汎用CMSの方が操作性を共有しやすい傾向があります。
- 将来的な拡張性と機能追加
- 新たな事業やサービスを開始する予定があるなら、必要となる機能を事前に想定しておきます。
- 独自開発CMSであれば、後からでも柔軟に機能追加が可能か、開発元に確認が必要です。
- 初期コストとランニングコスト
- 独自開発CMSを改善する場合の改修費用と、汎用CMSへ移行する場合の制作費・移行費用を比較します。
- ランニングコスト(ホスティング代、保守契約費用など)も考慮し、数年単位で試算しましょう。
判断材料をテーブルで比較
以下のように、各要素を比較すると可視化がしやすくなります。
要素 | 独自開発CMSを継続 | 汎用CMSへ移行 |
---|---|---|
更新作業のしやすさ | UIを改修しないと改善しづらい | 汎用インターフェースで扱いやすい |
コスト | 改修費用 + 保守費用 | 初期移行費用 + カスタマイズ費用 |
拡張性 | 開発元が対応可能なら自由度は高い | 多数のプラグインで機能を追加可能 |
セキュリティ | 改修やアップデートを継続的に行う必要がある | 定期的なアップデートや管理が必要 |
開発者コミュニティ | 開発元に依存 | 世界的コミュニティが存在 |
運用担当者のスキル | 独自ノウハウが必要 | 慣れればノーコードでも更新可能 |
このように、それぞれに利点と注意点が存在します。自社でどのポイントを最優先に考えるのかを整理し、どちらが得策か判断することが重要です。
実際の改善・移行プロセス
ここでは、独自開発CMSを改修して使い続ける場合と、汎用CMSに移行する場合のざっくりとした流れを解説します。いずれの場合も、現状のサイト構成や運用フローの把握から始めることが大切です。
独自開発CMSを改修して継続利用する流れ
- 要件整理
- 不便を感じている点や今後求める機能を社内で洗い出し、優先順位を決めます。
- 開発会社との打ち合わせ
- 改修内容や予算、スケジュールを確認し、対応可能かどうかを判断します。
- 試作・テスト環境での検証
- 改修したUIや機能をテスト環境で検証し、問題点を洗い出します。
- 本番環境への適用
- 移行手順を確認の上、本番サイトに改修内容を反映します。
- 運用マニュアルの整備
- 新機能やUIの使い方をマニュアル化し、担当者間で共有します。
汎用CMSへ移行する流れ
- 現状分析とスコープの確定
- どのページを移行し、どんな機能を追加するかを決めます。
- 移行先のCMS選定
- WordPressを含む複数のCMSを比較検討し、企業の要望や規模に合ったものを選びます。
- 移行プランの策定
- テスト環境を用意し、データ移行の手順やリダイレクト設定などをまとめます。
- データ移行とデザイン構築
- テーマやプラグインの設定を行いながら、旧サイトの内容を新サイトに反映します。
- 動作確認とリリース
- リンク切れやレイアウト崩れがないかなどを確認後、本番公開します。
- 継続的なアップデートと保守
- 定期的にバージョンアップやセキュリティ強化を行い、最新の状態を維持します。
セキュリティとサイトパフォーマンスの最適化
CMS改善や移行の際、同時に検討したいのがセキュリティ対策とサイトパフォーマンスの最適化です。攻撃リスクの増大やユーザー離脱を防ぐためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 不要なプラグインや機能の削除
- 使っていないプラグインや機能が多いと、脆弱性を突かれるリスクが高まります。
- 定期的なバックアップ
- システム障害や攻撃を受けた際の復旧をスムーズにするために、バックアップ体制を整えましょう。
- キャッシュの活用
- ページ表示速度を向上させるために、キャッシュプラグインやサーバー側のキャッシュ設定を活用します。
- 画像やデータの最適化
- 大容量の画像が多いと読み込み時間が長くなります。画像圧縮などを行い、ユーザーの負担を減らします。
- SSL/TLSの導入
- 今や必須となった常時SSL化により、通信を暗号化してセキュリティを高めます。
運用体制の構築と内製化のポイント
改修や移行が終わっても、サイト運用は続きます。社内に専門的なスキルを持つ担当者がいない場合でも、以下のポイントを押さえることで、スムーズなサイト運用が期待できます。
- 運用マニュアルの整備
- CMSの使い方、運用ルール、トラブルシュートの方法などを分かりやすくドキュメント化します。
- 定期ミーティングでの進捗確認
- 更新頻度が高い場合、週や月ごとにタスクを確認し、遅延やミスを防ぎます。
- 担当者を分散化・ローテーション化
- 一人の担当に依存しすぎると、退職や異動の際にノウハウが失われます。複数人が扱える体制が理想的です。
- 学習コストに対する投資
- 社内研修や外部セミナーなどを活用し、担当者のスキルアップを図ります。
- 制作会社や外部パートナーとの連携
- 必要に応じて外部リソースを活用しながら、コストとクオリティのバランスを取りましょう。
まとめ
独自開発CMSは、自社サイトに特化した自由度の高さや操作画面のシンプルさが魅力となる一方、運用が長期化してくると更新の手間やメンテナンス性に課題が生まれることも少なくありません。こうした状況を打破するには、既存のCMSを継続して改修するか、汎用CMSに移行するかのいずれかを中心に検討するのが一般的です。
特に中小企業においては、社内リソースや予算、将来的な拡張性など総合的な観点から判断する必要があります。明確なゴール設定と十分な情報収集を行い、それぞれのメリットとデメリットを整理したうえで、最適な方針を選択しましょう。サイト運用体制を強化し、セキュリティやサイトパフォーマンスにも配慮した取り組みを行うことで、Webサイトがより大きなビジネスメリットをもたらしてくれるはずです。