はじめに
新たに事業を始める際、近所の商工会議所が提供する創業支援の相談窓口は心強い存在です。特に中小企業の立ち上げや運営に必要な情報を得られるうえ、融資や補助金などの資金調達に関するアドバイスも期待できます。しかし、ここ数年はインターネットによる集客や販路拡大の重要性がさらに増していることから、「Webをどう活用すればいいのか」「ホームページをどのように作ればよいのか」といった疑問を抱える経営者が多いのではないでしょうか。
いざ商工会議所で相談するにしても、限られた時間内で有意義なアドバイスを受け取るためには、事前に準備をしておくことが大切です。本記事では、創業支援の相談に行く前に押さえておくべきWeb関連の情報整理やサイト構想、最低限知っておきたい用語などをわかりやすく解説していきます。
近所の商工会議所で創業支援を受けるメリット
商工会議所の創業支援には多くの利点がありますが、その中でも特筆すべきは以下のとおりです。
- 地域密着のアドバイス
事業を展開する地域の特性や顧客層を踏まえて、各種支援やセミナー、専門家の紹介などが受けられる。 - 資金調達や補助金情報
融資や補助金の申請にあたって、制度の概要や必要書類についての助言を受けられる。 - 幅広いネットワーク
相談員やアドバイザーが地元の企業や専門家を紹介してくれる場合があり、ビジネスを加速させやすい。
ただし、商工会議所によってはWeb関連の相談に力を入れているところと、まだ対応が薄いところがあります。そこで重要となるのが、相談前に自分なりに必要なポイントを整理し、「こうしたWeb施策について意見を聞きたい」という具体的な事項を提示することです。そうすることで、自分に合った専門家や具体的な回答を得やすくなります。
Web関連の準備事項1:事業概要の再確認とターゲット設定
商工会議所での相談時にWebの話題を含めるなら、まずは自社の事業概要をしっかりと整理しておきましょう。どのような商品やサービスを提供し、誰に向けて売るのか、そのターゲット設定を改めて明確にすることが大切です。
事業概要のポイント
- 提供する商品・サービスの特徴
- 顧客ニーズと自社の強みの一致点
- 業界や競合の状況
ターゲット設定の重要性
Webサイトやオンライン広告を制作・運用する際、どのような層に向けて情報発信するかによってページのデザインやコンテンツが変わってきます。
たとえば、若い層が顧客の中心ならSNS活用を重点的に考える必要があるかもしれませんし、BtoB主体なら問い合わせフォームを充実させるなど、サイト構成そのものが異なります。
下記の表は、ターゲット設定をする上で代表的な要素をまとめたものです。
ターゲット要素 | 例 | チェックポイント |
---|---|---|
年齢層 | 20~30代、40~50代など | ライフスタイルやメディア接触状況は? |
地域 | 地元、全国、海外 | 配送・サービス提供範囲は? |
職業・業種 | サラリーマン、自営業など | ビジネス向けか、個人向けか? |
悩み・課題 | 時間不足、情報不足など | 具体的にどんな解決策を提供できる? |
ターゲット設定をしっかり行うと、相談時にも「うちはこういう顧客層を狙っており、こんなサイトを作りたい」という明確なリクエストを伝えやすくなります。
Web関連の準備事項2:サイト構想と目的の明確化
続いて、Web関連の相談をするうえで最も重要といえるのが、サイト構想や目的の明確化です。ただ漠然と「ホームページが欲しい」「ネットで集客したい」と言うだけでは、具体的なアドバイスを得にくいかもしれません。
ホームページを作る目的を考える
ホームページにはさまざまな役割や目的があります。目的が異なれば、サイトのデザインやコンテンツ、更新体制もまったく異なってきます。
- 会社案内・ブランディング用
企業の信頼性を高めたり、ブランドイメージを伝えたりすることが中心。 - 販売(EC)用
ネットショップとして商品を販売し、売上に直結させる。 - サービス告知・問い合わせ獲得
予約フォームや問い合わせフォームを設置し、新規顧客や契約を増やす。 - 情報発信・集客(ブログ・SNS連携)
ブログやSNSを使って自社のファンを育成する。
相談時には「サイトで何を達成したいのか」「成功をどのように測るのか」を整理しておくことが大切です。
目標設定の例
次の表では、Webサイトを持つ上で考えられる代表的な目標とKPI(重要業績評価指標)の例を示します。
サイトの目的 | 具体的なKPI例 | 主な運用方法 |
---|---|---|
ブランディング | 月間サイト訪問数 | 定期的な新着情報発信、SNS連携 |
ネットショップでの売上 | 月間売上額、客単価 | 商品ページの改善、プロモーション企画 |
問い合わせ獲得 | 月間問い合わせ件数 | フォーム設計、ターゲットに合ったコンテンツ |
ファン化・リピート獲得 | メルマガ登録数など | 定期的なキャンペーンやコミュニティ運営 |
事前にざっくりでも良いので「この目標が大事」という方向性を固めておくと、商工会議所でのヒアリングも具体的に進められます。
Web関連の準備事項3:必要な制作・運用体制の把握
サイトを作るにあたっては、制作や運用にどの程度のリソースやコストをかけられるかも重要です。外部のWeb制作会社に依頼するのか、社内で担当者を置くのか、あるいは専門家に部分的にサポートを依頼するのかといった選択肢を検討しておきましょう。
自社内か外部委託か
- 自社内で対応
社内にWebデザインやプログラミング、マーケティングの知識がある人材がいる場合。迅速な対応ができる反面、人材育成のコストやノウハウの蓄積が必要。 - 外部委託
専門会社に発注することで品質が安定しやすいが、制作費や保守費用の見積もりを明確にし、コミュニケーションロスを防ぐ必要がある。
以下の表は、Webサイト制作において考えられる対応パターンと、それぞれのメリット・デメリットをまとめています。
対応パターン | メリット | デメリット |
---|---|---|
すべて自社内制作 | 社内ノウハウが蓄積され、運用コストが下がる | 専門知識が必要で、担当者の教育や採用が必要 |
制作のみ外部委託 | プロのデザインや技術を活用できる | 制作費が高額になる場合がある。完成後の更新は社内で要対応 |
運用・更新も外部委託 | 定期的な更新や修正に対応してもらえる | 継続的なコストがかかる。連絡や指示出しの手間が発生する |
ハイブリッド型 | 得意分野は内製、苦手分野は外注できる | スケジュール管理やタスク分担が複雑になりやすい |
こうした体制面の検討を事前にしておくと、商工会議所での相談の場でも「制作は外注したいが、運営は社内でやりたい」といった具体的なリクエストを出せます。
創業相談で押さえたいオンライン施策の基本
商工会議所での創業支援相談では、必要に応じてオンライン施策についてもアドバイスを受けることが可能な場合があります。時間を有効に使うためにも、次の基本を理解しておきましょう。
SEO(検索エンジン最適化)
検索エンジンで上位表示を目指す施策です。キーワード選定やコンテンツの質、サイト構造の最適化など、多角的な取り組みが必要になります。
- メリット:自然検索からの流入を増やし、広告費を抑えられる可能性がある。
- 注意点:成果が出るまで時間がかかる場合が多い。
SNS活用
FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用して情報を発信し、ファンを増やしていく方法です。
- メリット:拡散力が高く、顧客とのコミュニケーションが取りやすい。
- 注意点:継続的な運用と更新が必要。投稿内容の質やタイミングが重要。
ネット広告(リスティング広告・SNS広告など)
Googleなどの検索結果ページやSNS上に有料で広告を出稿し、クリックや問い合わせにつなげる施策です。
- メリット:ターゲットを絞り込んで集客でき、短期間での効果が期待できる。
- 注意点:広告費がかかり続けるため、費用対効果を常に検証しながら運用する必要がある。
創業支援相談をスムーズに進めるためのポイント
商工会議所での相談を有効にするためには、次の点を意識しておくとよいでしょう。
- 目的と質問を事前にリスト化する
「ホームページの公開タイミングをいつにするか」「広告を出すべきか」など、気になる質問を箇条書きにしておくと、相談の場で効率的に話が進みます。 - 予算とスケジュール感を伝える
Web施策はコストや制作期間などが幅広いため、目安となる予算や希望のタイミングを伝えておくと具体的な助言を得やすくなります。 - 相談後のフォローアップを意識する
相談が終わってからの行動計画をどのように進めるか、誰にサポートを依頼するのかなど、次のステップを想定しておくと成果につながりやすいです。 - 複数回の相談を視野に入れる
一度きりの相談で完結しない場合は、定期的に経過を報告したり、新たなアドバイスを受けたりすると、より実践的な取り組みができるでしょう。
具体例:中小企業が取り組みやすいWeb施策
ここでは、創業初期の段階で取り組みやすいWeb施策をいくつか挙げます。自社の事業内容やターゲットに合わせて検討してみてください。
1. コーポレートサイト(基本的なホームページ)の立ち上げ
最低限の情報として、企業概要・サービス内容・問い合わせ先がわかるページを整備します。特に創業時は予算の都合もあり、大掛かりなサイトではなくても構いません。簡潔に事業の強みや代表者の想いを伝えられるページを用意するだけでも、信頼感が違います。
2. ブログやニュースページの運用
サイトにブログやニュースのコーナーを設け、定期的に更新することで検索エンジンからの流入や顧客との接点を増やすことができます。長期的に見れば、SEOの観点でも有利になる可能性があります。
3. SNSを活用した認知度向上
FacebookやInstagramなどで自社の活動をアピールし、フォロワーとのコミュニケーションを図る方法です。多くの場合は無料で始められるため、初期コストを抑えつつ集客に役立てることが可能です。
4. 簡易ネットショップの開設
もし商品販売を考えているなら、ECプラットフォームを利用して簡単にネットショップを開設することも選択肢の一つです。専門のECサイト構築よりも低コストで始められるので、創業初期のテストマーケティングに活用できます。
まとめ
近所の商工会議所で創業支援の相談に行く前に、Web関連の最低限の準備や知識を整理しておくと、相談時間をより有効に使うことができます。ターゲット設定やサイト構想、運用体制の検討などはすべて連動しており、1つが曖昧だと次のステップに進みづらくなります。Webサイトには様々な形があるため、まずは「自社がWebで何を実現したいか」を具体的に描き、そのために必要な要件を洗い出しましょう。商工会議所の創業支援を上手に活用し、専門家からのアドバイスを得ながら、ぜひ効率的に事業を軌道に乗せていってください。
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