事業計画書にネット集客を書いたけど具体案が全くないときの進め方

事業計画書にネット集客を盛り込む背景には、「より多くの潜在顧客にリーチし、売上や認知度の向上を狙う」という明確な目的があるはずです。とはいえ、実際に何をどう進めれば効果が出るのか分からず、悩む中小企業は少なくありません。ここでは、ネット集客を事業計画に含める意義を整理しておきます。

まず、ネット集客を導入すると、市場規模やターゲット層が広がる可能性があります。インターネットは場所を選ばず、検索エンジン経由やSNS経由で全国、あるいは世界のユーザーにアプローチできます。これまで取れなかった遠方の顧客にも接触できる点は、大きな魅力です。

さらに、ネット上での顧客行動データを蓄積・分析することで、より戦略的な意思決定が可能になります。広告費の適正化や商品の改善、新サービスの開発など、データを基にした施策が打ちやすくなります。オフラインだけでは見えにくい顧客ニーズを発見できる点もメリットです。

「ネット集客をやります」という一文だけでは融資や補助金の担当者を納得させるのは難しいかもしれません。しかし、実際にどんな施策をどんな順番で進め、どのように効果測定・改善を行うかを示せば、事業計画書に説得力を持たせることができます。

ネット集客の全体像

ネット集客は幅広い手法があり、やみくもに始めると混乱しがちです。大枠としては「自社メディア(WebサイトやLP)を整備し、SNSやネット広告などのチャネルからトラフィックを集める。その後、獲得した見込み客に対してアクションを促し、最終的に売上や問い合わせなどの成果につなげる」という流れになります。大まかなステップの例を以下の表にまとめます。

ステップ主な内容
目的・目標の設定ネット集客を活用して達成したいゴールや指標(売上高、問い合わせ数など)を明確にする
顧客像(ターゲット)の設定ターゲットとする顧客層のニーズや課題を定義し、具体的にイメージする
自社メディアの整備WebサイトやLP、ブログなどを用意し、顧客にとって分かりやすい情報を提供
集客チャネルの選定検索エンジン対策(SEO)、SNS、ネット広告などから、自社に合ったチャネルを優先的に選ぶ
コンテンツや施策の実行実際の記事作成、広告出稿、SNS運用などの具体的アクションをとる
効果測定・改善アクセス解析や問い合わせ数、売上などを計測し、データに基づいて改善を重ねる

上記の表から分かるように、ネット集客を成功させるには継続的なPDCAサイクルが必要です。事業計画書には、このステップを踏まえて「いつ、何をやるか」を具体的に落とし込んでいきましょう。

Webサイトやランディングページ(LP)の設計

Webサイトの役割

ネット集客を検討する場合、まずは自社のWebサイトやランディングページ(LP)の整備が欠かせません。SNSのみで集客するケースもありますが、最終的な問い合わせフォームや購買ページなどに誘導する先として、自社Webサイトを用意しておくと信頼感が高まり、情報が整理しやすくなります。

Webサイトでは「誰に、何を、どのように伝えたいのか」を明確にした上で、構成を考えます。以下のポイントを押さえておくと、質の高いサイトを作りやすくなります。

  • 企業概要(信頼性を示す内容)
  • 主力サービス・商品の詳細
  • 問い合わせや資料請求への導線
  • 顧客の声や導入事例などの社会的証明

ランディングページ(LP)の役割

ランディングページ(LP)は特定のサービスや商品にフォーカスした1枚構成のページで、訪れたユーザーに限定されたアクション(問い合わせ、購入、登録など)を促すために最適化されたデザインを採用します。最初からあれもこれも詰め込むのではなく、メインの商品のみを中心に構成すると、利用者にとって分かりやすいページが作れます。

LPに盛り込みたい要素の例

以下はLPに盛り込みたい主な要素を表にまとめたものです。

要素役割・内容
キャッチコピー商品・サービスのメリットを端的に示し、ユーザーの興味を引く
ビジュアル商品や利用イメージを視覚的に伝え、雰囲気や世界観を演出
詳細説明メリットだけでなく、実際のスペックや具体的効果など、ユーザーが知りたい情報を細かく提示
社会的証明利用者の声や導入事例で実際の評価や体験談を示し、安心感を与える
アクションボタン購入や問い合わせ、資料請求などユーザーにとって次にすべき行動を明確に提示
Q&Aやサポート体制ユーザーの疑問や不安を取り除き、サポート内容を具体的に示して信用度を高める

LPを作るときは、できるだけ内容をシンプルにまとめ、途中でスクロールをやめられないようなストーリー性やデザインを意識すると良いでしょう。

SNSの活用方法

SNSは比較的コストを抑えつつ、自社や商品の魅力を多くの人に知ってもらうチャンスを提供してくれます。代表的なSNSとして、Twitter、Facebook、Instagram、LinkedIn、YouTubeなどがありますが、どれを選ぶかはターゲット層や扱う商品の性質によります。

SNS選定時の比較例

以下のような視点でSNSを比較し、自社に向いているプラットフォームを探るのがおすすめです。

SNS特徴向いている業種・内容
Twitter拡散力が強くリアルタイム性があるが、投稿の寿命が短いニュース性、トレンドに乗りやすい商材、短い情報を頻繁に発信する業種
Facebook個人情報が比較的正確でターゲット広告が細かく設定できるBtoB向けのサービスやコミュニティ形成を重視する企業
Instagramビジュアル重視で若い世代の利用者が多く、おしゃれなイメージファッションや雑貨、飲食、美容など見た目のインパクトが重要な業種
LinkedInビジネス寄りで人脈形成や採用活動に強みがあるBtoBや専門性の高いサービス、人材採用・企業ブランディング
YouTube動画コンテンツで商品やサービスを分かりやすく伝えられる操作方法の説明が必要な商品、エピソードやストーリーを視覚で伝えたいケース

SNSは始めたばかりだとフォロワーが少なく、投稿してもあまり効果が見えにくいのが実情です。しかし、ターゲットが集まるプラットフォームを選んで継続的に運用することで、徐々に認知度を高め、後々の問い合わせや購買につながります。事業計画書においては「どのSNSを選び、どのような目的で運用するのか」を明記し、運用の頻度や担当者の体制もざっくり示しておくと具体性が増すでしょう。

ネット広告の活用と費用対効果

ネット広告には多様な種類がありますが、中小企業が取り組みやすい代表的なものを挙げると以下のようになります。

  • 検索連動型広告(リスティング広告)
  • ディスプレイ広告(バナー広告)
  • SNS広告(Facebook広告、Instagram広告など)
  • 動画広告(YouTube広告など)

費用対効果を考えると、検索連動型広告は「キーワード」に対して出稿するため、潜在的に興味を持つユーザーにアプローチしやすいのが特徴です。一方、バナー広告やSNS広告はユーザーの属性や興味関心をターゲットとして設定しやすく、商品やサービスを幅広く露出させることができます。

事業計画書では「広告費用をどのタイミングでどれくらい投下するか」「広告運用を誰が行うか」「効果をどう測定し、どの指標を改善していくか」をあらかじめ示しておくと、費用対効果を管理しやすくなります。予算が限られている場合は、最初に少額でテストしてみて、効果の高いチャネルに予算を追加配分するやり方がおすすめです。

運用・改善の進め方

ネット集客の効果を最大化するためには、運用と改善のサイクルが欠かせません。やって終わりではなく、継続的にデータを見ながら施策を洗練していくことが、事業計画書にも説得力を持たせるポイントです。

  1. 目標設定
    まず、売上や問い合わせ数、メールアドレス取得数など、分かりやすい数値目標を設定します。目標がないと改善の方向性が定まりません。
  2. データ収集・分析
    アクセス解析ツールを使って、訪問者数、ページ滞在時間、離脱率、コンバージョン数などを測定します。SNSの場合は投稿のエンゲージメント率(いいね、シェア、コメント)も重要です。
  3. 仮説立案と施策実行
    例えば、Webサイトの離脱率が高いページがあれば、原因として「内容が分かりにくい」「ページの表示速度が遅い」「ビジュアルが魅力的でない」などの仮説を立てて修正を行います。
  4. 効果測定・評価
    修正後、再度データを確認し、改善が見られればさらに次の施策を検討、見られなければ別の仮説を検証します。
  5. 継続的な改善
    ネット集客は外部環境の変化や競合の動きによっても効果が上下します。定期的に振り返りを行い、施策を更新していく姿勢が大切です。

よくある失敗例とその対策

ネット集客を進める上で、中小企業が陥りやすい失敗例をいくつか紹介します。

  1. 何から着手すべきか分からず、サイト構築もSNSも広告も一気にやろうとして混乱する
    • 対策: 自社の強みやターゲットを見極め、優先順位をつける。計画書には順序立てた実行プランを書く。
  2. WebサイトやSNSを作っただけで更新せず放置してしまう
    • 対策: 運用担当者やスケジュールを決める。定期的なコンテンツ更新を前提に作業フローを組む。
  3. 効果測定をしておらず、何が成功で何が失敗か分からない
    • 対策: 事前にKPI(重要な指標)を設定し、アクセス解析ツールなどを導入する。小まめにデータをチェックする。
  4. 広告費だけかけて、WebサイトやLPの品質が低くコンバージョンにつながらない
    • 対策: サイトの構成や訴求内容を見直し、改善の意識を持つ。広告と連動して整合性を保つ。
  5. 社内体制が整っておらず、ネット集客の担当が不明確
    • 対策: 明確に担当者を決め、必要に応じて外部パートナーを活用。役割分担を事業計画に明記。

まとめ

事業計画書に「ネット集客」と書くだけではなく、具体的にどのチャネルを使い、どう運用し、どんな成果指標を追うかまで踏み込むことで、説得力のある計画になります。

  • まずは、自社の強みとターゲットを明確にし、Webサイトやランディングページを整備する
  • SNSやネット広告を活用するときは、費用対効果や運用体制、運用目的をしっかりと設定する
  • アクセス解析や問い合わせ数などのデータを用いて継続的にPDCAを回し、改善を続ける

この一連の流れが網羅されていれば、融資・補助金の担当者に対しても、実現可能性の高い事業計画であることを示せるでしょう。自社に合ったネット集客施策を選び、少しずつでも確実に前進していくことが、長期的な成長につながります。

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