はじめに
中小企業が自社をアピールする際、動画の活用が広がっています。特にトップページやSNSなどで活用できる短い会社紹介動画は、視覚的に訴求できるため多くの企業で注目されています。しかし、制作会社に依頼すると予算面でハードルが高いと感じることもあるでしょう。そこで、スマホなどを使って“それなり”に自分たちで会社紹介動画を制作し、ホームページやSNSに載せたいというニーズが高まっています。
本記事では、会社紹介動画を自分で撮影・制作するときにおさえておきたい基本的な流れや、企画・撮影・編集のポイントを分かりやすく解説します。特別な機材やスキルがなくても取り組める具体的な手順についても紹介します。中小企業の経営者や担当者が、限られた予算でも効果的な動画制作に挑戦できるような情報をお届けします。
会社紹介動画を自分で作るメリット・デメリット
まずは、「なぜ自作するのか」という点を整理するために、メリット・デメリットを比較してみましょう。自社で作るのか、外部へ依頼するのか、判断材料として参考にしてください。
項目 | 自分で制作する場合 | 外部に依頼する場合 |
---|---|---|
コスト | 比較的低コストで済む | 高額になりがち |
制作スピード | 社内調整次第で柔軟に進められる | 発注から納品まで時間がかかる場合がある |
クオリティ | 撮影や編集の知識・技術に左右される | プロが手掛けるため高品質が期待できる |
企画の自由度 | 自由に変更・試行錯誤しやすい | 契約内容に沿った制作になるため、大幅変更は追加コストが発生する場合がある |
社内リソース | 撮影・編集の担当が業務負担を感じる可能性 | 社内スタッフの負担は少ない |
自作はコストを抑えられ、自由度も高い反面、撮影や編集の手間を社内で負担する必要があります。一方、外部に依頼すれば質の高い動画が期待できますが、どうしても予算がかさんでしまいがちです。まずは、自社のリソースや目指すクオリティを踏まえて検討してみてください。
会社紹介動画の構成要素と企画の立て方
会社紹介動画を制作するにあたり、まず「何を伝えたいのか」を明確にすることが重要です。撮影機材や編集ツールを検討する前に、動画のゴールや構成要素を整理しましょう。
1. 動画の目的を設定
- ホームページのトップページに載せて「企業イメージの向上」を図りたい
- SNS上でシェアして「知名度アップ」につなげたい
- 取引先へのプレゼン用素材として「信頼感を高めたい」
目指したい効果に応じて、動画の尺や内容が変わってきます。とくに「どんな印象を与えたいか」は明確にしておくと企画が立てやすくなります。
2. ターゲットを明確にする
- 新規顧客へのアプローチがメインか
- 既存取引先との関係強化か
- 求職者向けの企業イメージづくりか
このように視聴者を想定すると、必要な情報やアピールポイントを絞り込みやすくなります。
3. 強みや特徴をピックアップ
会社紹介動画では、自社の「独自性」や「強み」を短時間で伝えることが求められます。たとえば、次のような要素がよく取り上げられます。
- 事業内容の概要
- 企業の歴史や成り立ち
- 製品・サービスの特徴
- 働くスタッフや社内の雰囲気
- 将来ビジョンや理念
すべてを盛り込み過ぎると、動画が冗長になりがちです。要点をきちんと絞り込みましょう。
4. 動画の長さを想定
一般的に、短い企業PR動画の尺は30秒〜90秒程度が見やすいといわれています。短尺であればあるほど、要点が分かりやすくなります。一方、もう少し詳しく会社の様子を紹介したい場合は、2〜3分程度の動画も検討してみてください。
撮影に必要な機材と撮影時のポイント
ここからは具体的な撮影方法に入ります。自分で撮影する場合、カメラやマイクなどの準備をどこまでそろえるかが課題になるでしょう。スマホで十分に対応できるケースもありますが、以下の点を検討してください。
撮影機材の例
機材 | 必要度合い | 特徴・ポイント |
---|---|---|
スマホ | 高 | 最近のスマホは画質が良く、手軽に撮影可能 |
デジタルカメラ | 中 | レンズ交換式なら画質・表現力が高まるが、操作に慣れが必要 |
三脚 | 中 | スマホ・カメラともに、安定した映像を撮るのに必須 |
外部マイク | 中 | 音声のクオリティを重視するなら検討したい |
照明(LEDライトなど) | 低〜中 | 室内で撮影する際、影を減らし明るさを確保できる |
スマホ撮影のコツ
- 横向きで撮影する(一般的な映像のアスペクト比16:9に合わせやすい)
- 手ブレ防止のために三脚やスタビライザーを活用
- 周囲の騒音を避け、できるだけ静かな場所で録音
音声について
意外と見落としがちなのが音声のクオリティです。会社紹介動画ではナレーションやインタビューの音声が大きな役割を果たします。もし外部マイクが用意できなければ、なるべく雑音が少ない場所や時間帯を選び、撮影時にスマホを被写体に近づけるなどの工夫をするとよいでしょう。
編集ソフトと編集プロセスの基本
撮影が終われば、次は編集作業です。編集ソフト(アプリ)については、無料から有料までさまざまな選択肢があります。特別なソフトを使わずとも、スマホのアプリだけで基本的なカットやテロップ入れは可能です。以下は編集ソフト選びの一例です。
- 無料ソフト・アプリ: 導入コストがかからず、基本的な編集が可能
- 有料ソフト: エフェクトや高度な編集機能が充実している
編集のポイントとしては、以下の流れを意識してみてください。
- 素材を取り込む: 撮影データをPCやアプリに取り込み整理する
- 不要部分のカット: 長すぎる場面やミスショットを短くする、または削除する
- 構成に合わせて並べる: 企画段階で決めたストーリーに沿ってクリップを並べる
- テロップやBGMを追加: 要点を文字で補足し、雰囲気に合うBGMを必要に応じて入れる
- 色味や音量の調整: 映像が暗すぎたり、音声が小さすぎたりしないように調整
あまり手の込んだ演出をしなくても、必要十分なクオリティを出せる場合が多いです。自作であれば、撮って出しの素材を活かしつつ、要点だけ編集するシンプルな方法もおすすめです。
自分で制作する場合の具体的手順表
ここでは、実際に会社紹介動画を完成させるまでの流れを、簡単な工程表としてまとめました。社内で担当者を決める際やスケジュールを組む際の参考にしてください。
手順 | 作業内容 | ポイント |
---|---|---|
1 | 動画の企画・目的設定 | ゴールを明確にし、企画書か箇条書きで整理 |
2 | 撮影スケジュールと撮影場所の決定 | 社内施設や外部ロケ地の選定、利用許可の確認 |
3 | 機材の用意(スマホ・三脚・マイクなど) | 必要に応じてレンタルや購入も検討 |
4 | 撮影実施 | インタビューや社内風景など、シーンを撮りこぼさないよう計画的に |
5 | 映像素材の取り込み・整理 | ファイル名を分かりやすく整理すると編集が楽 |
6 | 編集(カット・テロップ・BGM追加) | 簡易編集ソフトでも基本的な演出は可能 |
7 | 試写・修正 | 社内でレビューし、内容や音量をチェック |
8 | 完成・ファイル出力 | 公開媒体(Webサイト・SNS)に合わせた形式に |
このように整理しておくと、どのタイミングで誰が何をするのかが明確になり、スムーズな動画制作を進められるでしょう。特に中小企業の場合、限られた人数で作業を行うケースが多いので、工程ごとの役割分担や締め切りをはっきりさせることが大切です。
スマホ撮影でも“それなり”に見せる工夫
ここでは、スマホ撮影でも「それなり」のクオリティを確保するための工夫を紹介します。気をつけるべき点は大きく4つあります。
- 照明・光の取り込み
- 室内撮影では、逆光や暗い場所を避け、できれば窓際の自然光を活用
- 照明機材がない場合は、室内の明かりをフルに点灯するだけでも改善可能
- 安定した映像
- 三脚やスタンドを使ってブレを最小限に
- 歩きながら撮影する場合は、スマホを両手で支えてゆっくり動く
- 音声のクリアさ
- 周囲の雑音が少ない場所を選ぶ
- インタビューを行う場合は、撮影対象の口元付近にスマホやマイクを近づける
- 編集時の工夫
- 無音部分をカットしてテンポをよくする
- テロップを入れて映像で伝わりにくい情報をサポート
これらのポイントを押さえるだけでも、動画全体の質がグッと上がります。特別な機材がなくても、撮影時の意識次第で見栄えや聞こえ方が大きく変わるのです。
参考になる構成例や撮影アイデア
動画の構成に迷った場合、以下の例を参考にしてみてください。
- オープニング(5秒〜10秒)
- 自社ロゴ、キャッチコピーなどをシンプルに入れる
- 印象的なBGMを入れて関心を引く
- 業務内容・理念の説明(20秒〜40秒)
- テキストやナレーションで「何をやっている会社か」を端的に紹介
- 実際の作業風景や製品を映し出すと説得力が増す
- 社員紹介・インタビュー(30秒〜1分)
- 社長やスタッフの短いコメントを挟む
- 社内の雰囲気や人柄が伝わると、企業のイメージが具体的になる
- 実績や取り組みの紹介(20秒〜40秒)
- 実際の事例や画像を交えて、自社の成果・信頼性をアピール
- テロップで箇条書きにして分かりやすく伝える
- エンディング(5秒〜10秒)
- ロゴやスローガンで締めくくる
- 視聴者に「どんな印象を残したいか」を考えて演出を決める
短い動画なら1〜3分程度に上記の要素をコンパクトにまとめることが多いです。また、「音楽だけ」「簡単なテロップだけ」で魅せるスタイリッシュな構成や、スタッフ全員で一言ずつコメントをつないでいく演出など、アイデア次第でオリジナリティを出せます。
まとめ
会社紹介動画を自分で撮影・制作する際のポイントを中心に解説してきました。中小企業にとっては、予算の都合で外注が難しい場合でも、スマホや手軽な編集ソフトを活用して“それなり”のクオリティを目指せる方法があります。大切なのは、最初に動画の目的とターゲットをしっかりと定め、社内で役割分担を決めたうえで計画的に進めることです。
撮影に関しては、光や音声など基本を押さえれば大きくクオリティを向上させられます。また、編集時には長くなり過ぎないように配慮し、要点や印象的なシーンを重点的に組み込むことが大切です。自社の雰囲気やアピールポイントが存分に伝わる動画づくりを意識しながら、ぜひ試行錯誤してみてください。
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