
社員の仕事をホームページで紹介したいのに、本人が取材日に参加できない。上司なら仕事内容を説明できるため、代わりに話を聞いて原稿を進めたいことがあります。
上司が確かめられる業務の事実から、仕事紹介の下書きを作ることはできます。ただし、本人の経験や気持ちまで想像して、社員インタビューの回答に仕立てるのは避けます。誰が確認できる情報なのかと、誰の言葉として載せるのかを分けると、進められる部分が見えてきます。
担当業務の説明と、本人の実感は情報の出どころが違う
所属する部署、担当している工程、使う設備、他部署との関わりなどは、上司や業務資料から確認できる場合があります。現在の担当範囲を確かめれば、会社から読者へ仕事内容を説明する材料になります。
一方で、入社を決めた理由、仕事でうれしかったこと、難しさをどう乗り越えたかは、本人に聞かなければ分からない部分を含みます。上司から見て楽しそうに働いていても、それが本人のやりがいと一致するとは限りません。
「今は検査工程を担当している」と「検査の仕事に一番やりがいを感じている」は、同じ人についての文章でも確認先が違います。取材メモの段階で業務説明と本人への質問を分けておくと、文章を整える途中で混ざりにくくなります。
上司の説明は、会社からの仕事紹介として書ける
ここでは、部品の出荷前検査を担当する社員が不在の、架空の製造会社を考えます。上司への取材と現行の作業資料で、検査する内容と、不明点があった場合の相談先を確認できたとします。
その材料から、「出荷前検査では、指示書を見ながら部品の外観と寸法を確認します。基準に照らして判断できないものは、責任者へ確認してから次の工程へ進めます」という業務紹介を作れます。これは会社の仕事を説明する文章であり、不在の社員が語った言葉として載せるものではありません。
同じ材料だけで「私は、製品の品質を守ることに誇りを感じています」と書くと、確認した業務の事実から、本人の気持ちへ踏み込んでしまいます。内容が会社にとって望ましくても、その気持ちを本人が持っているという根拠にはなりません。
写真や名前を添える場合も、見出しが「社員の声」で、文章が本人の一人称なら、本人の回答として読まれます。業務説明として進めるなら、「検査の仕事」「出荷前の確認」といった内容に合う見出しにし、名前・写真を載せる可否も別に確かめます。
上司の評価を、本人の発言へ置き換えない
上司から「細かな変化によく気付く人です」と聞けたなら、それは上司の見方として扱えます。会社が掲載してよい内容かを確認したうえで、「上司から見た仕事ぶり」のように、誰の説明なのかが分かる形にします。本人の回答欄へ移して「小さな変化を見逃さないことを大切にしています」と言い換えると、情報の出どころが変わってしまいます。
AP通信の編集基準でも、引用の文脈や意味を保つこと、書面から引用する際はその出所を示すことを説明しています。報道向けの基準ですが、発言と書き手の説明を混同しない考え方は、社員紹介を編集するときにも参考になります。
過去に本人が書いた社内報や回答文がある場合は、現在も同じ担当・考え方なのか、ホームページへ載せてよい内容なのかを確認します。昔の発言を使って、今回新しく取材したように見せないことも大切です。
本人には、足りない経験だけを短く聞く方法もある
取材への参加が難しくても、短い書面回答なら可能な場合があります。上司から確認できた仕事の説明を用意したうえで、「判断に迷った場面はありましたか」「そのとき誰に何を相談しましたか」と、本人でなければ分からない点を聞きます。
仮例の検査担当者なら、作業全体を初めから説明してもらう代わりに、基準の読み方を覚えたときの経験を一つ聞く方法があります。実際の回答が得られれば、業務紹介に本人の経験を添えられます。回答の方法も「書面で聞きました」など、実態に合う形で示せます。
「品質を守るのがやりがいですよね」と結論を先に渡すと、本人が違うと伝えにくくなることがあります。「特に印象に残っている作業はありますか」と聞き、話せる経験から原稿を考えます。回答できない、掲載したくないという場合も、業務紹介だけで成立する構成を残しておきます。
本人確認は、文章のきれいさより意味を見てもらう
本人の回答を原稿にしたら、「自分が伝えたかった意味と合っているか」「今も同じ内容で紹介してよいか」を確認してもらいます。仕事の名称や担当範囲は上司や担当部署、経験や気持ちの表現は本人というように、確認する箇所を示すと読みやすくなります。
原稿の前後も渡します。一文だけなら正しくても、見出しや写真と組み合わさることで、本人がすべての業務を一人で担当しているように見えることがあるためです。上司の評価を掲載する場合も、本人の発言と隣り合わせで混同されないかを確認します。
返事がない状態は、確認が済んだ状態ではありません。公開日までに本人の回答や確認が得られなければ、その箇所を待つか、確認済みの業務説明へ構成を変えます。未確認の感想を、文章の完成度のために残さないようにします。
社員の声を待つ間も、確認できた仕事の説明は進められる
ページ全体を止める必要があるかは、読者へ何を伝えたいかによります。担当業務や仕事の流れを知らせることが目的なら、会社として確認した業務紹介を先に整えられます。本人の入社理由や経験が中心の記事なら、その回答を得てから仕上げるほうが目的に合います。
Bämの原稿・写真の準備に関する相談では、お話と手元の資料から下書きを作り、会社側で事実を確認しながら仕上げます。取材できる人と現在ある資料を伝え、どこまで仕事紹介として進め、どの部分を本人への質問として残すかを相談できます。
参考資料
資料確認日:2026年9月21日。製造会社の業務・原稿は説明用の仮例です。実際の担当業務、本人の回答、掲載できる範囲を確認して原稿を作ります。
