はじめに
コロナ以降、多くのカフェが席数を減らし、ソーシャルディスタンスを確保する対策を迫られています。しかし、「席数が減った分、売上が戻らない」「新たな取り組みを検討しているが、具体的に何をどうすればいいのかわからない」といった不安を抱える経営者やオーナーも少なくありません。本記事では、席の間隔確保にともなう売上低迷を解消するための具体策や、ネット予約・モバイルオーダーなどの導入ステップ、そしてSNSで安心感を訴求するためのポイントをわかりやすく解説します。
以下では、ソーシャルディスタンスを踏まえたカフェ経営の課題と、それを解決するためのアイデアを順を追って見ていきます。
ソーシャルディスタンスを踏まえたカフェ経営の課題
ソーシャルディスタンス確保のために席数を減らすことは、来店客に「安全・安心」を提供する重要な取り組みです。しかし、その一方で以下のような課題も発生しがちです。
- 席数減少による売上ダウン
席数を単純に減らしてしまうと、そのまま回転率や客数の減少につながります。特に客単価の低い時間帯や集客力の弱い平日昼間などに顕著に影響が出やすいです。 - 店内レイアウトや設備への投資負担
席間隔を広げるためには、場合によってはカウンター席の撤去やパーティションの設置など新たな設備投資が必要となり、負担が大きい場合があります。 - 安心・安全への訴求と過剰アピールのバランス
「うちは感染対策をしっかりしています」とアピールしたい反面、あまりにも強調しすぎるとかえって客を緊張させてしまうリスクも考えられます。
こうした課題を解決するうえで、売上維持・回復策やデジタルツールの導入、SNSでの情報発信など、多角的な取り組みが必要となります。
売上低迷を回復するための席数減対策
席数を減らしたからといって、ただ諦めるのではなく、それをきっかけに新たな施策を打つことで売上を回復させることは十分可能です。代表的な対策として、以下のようなアイデアがあります。
- 回転率向上のためのタイム管理
- モーニング・ブランチの強化
朝~昼の中間時間帯におけるメニュー開発や割引サービスを導入し、通常は閑散としがちな時間帯を活性化する。 - 時間制の設定
長時間の滞在を目的とする利用者が多いカフェでは、混雑時のみ利用時間を限定するルールを導入し回転率を上げる。
- モーニング・ブランチの強化
- 客単価アップのための新商品・セットメニュー導入
- 高付加価値メニューの投入
自家製スイーツやオリジナルコーヒーブレンドなど、単価を上げても満足度を得られるメニュー開発。 - セット販売
ドリンク+スイーツなど、お得感のあるセットメニューで、ひとり当たりの単価向上を図る。
- 高付加価値メニューの投入
- テイクアウト・デリバリーの強化
- 店内の混雑を回避しつつ売上を確保
店舗が混んでいても商品を受け取りやすい形を整え、来店客数に依存しない売上を作る。 - 顧客の安全意識に配慮した受け渡し方法
例えば、カウンター越しではなく専用棚や受け取り口を設置するなど、対面接触を抑える工夫を行う。
- 店内の混雑を回避しつつ売上を確保
- 席配置や内装の工夫
- パーティションや観葉植物での仕切り
席数を減らしすぎず、アクリル板や観葉植物など柔らかい印象の仕切りを活用して距離感を保つ。 - 席間隔の余裕を逆にPR
「ゆったりくつろげる空間」として席数減をプラスイメージで伝える。
- パーティションや観葉植物での仕切り
以下に、「ソーシャルディスタンス確保」を前提としつつ売上向上を図る主な取り組みをまとめた比較表を示します。
取り組み | 概要 | 期待効果 | 注意点 |
---|---|---|---|
モーニング・ブランチの強化 | 朝~昼の中間帯向けメニュー開発やキャンペーン | 閑散時間帯の売上向上 | 当初は認知度向上のためにプロモーションが必要 |
高付加価値メニューの開発 | オリジナルコーヒーや自家製スイーツなど価格をやや上乗せした商品ラインナップ | 客単価アップ | ターゲット層の好みや相場を踏まえ、価格設定に注意 |
テイクアウト・デリバリーの強化 | 店内以外での購入機会を増やし、密を回避 | 売上チャネルの拡大 | 包装・容器コストや配達サービス手数料、オペレーションが増えるための人員配置検討が必要 |
席配置・内装の工夫 | パーティションや空間づくりの見直し | 安全かつ雰囲気の良い空間づくりによる集客力維持 | 設備投資やレイアウト変更の費用がかさむ場合あり |
時間制や混雑緩和施策の導入 | ピークタイムのみ利用時間を制限するなど | 回転率改善、待ち時間の軽減 | 常連客への配慮やトラブル防止のための事前周知が必要 |
こうした取り組みを組み合わせることで、席数を減らしても売上を補完できる可能性が高まります。また、店舗としてどこに強みがあるかを見極め、重点的に施策を打つことが大切です。
ネット予約・モバイルオーダー導入の基本
ソーシャルディスタンス対応において、混雑状況を可視化し、来客のタイミングを分散させるためにネット予約システムを導入する事例も増えています。また、店内での接触を減らすため、モバイルオーダーを取り入れるカフェも出てきています。初心者の方でも取り組みやすいよう、導入の基本手順を整理してみましょう。
手順 | 詳細 |
---|---|
1. 目的の明確化 | 席数管理・混雑緩和・オペレーション効率化など、どの課題を優先して解決したいかを明確にする。 |
2. ツールの選定 | ネット予約・モバイルオーダーシステムは、費用・機能・サポート体制がさまざま。自店の規模や提供メニュー、客層に合うものを比較検討し選択する。 |
3. 初期設定 | 席数や予約時間枠の設定、メニュー登録、決済方法の設定などを行う。導入前に想定シナリオを洗い出しておき、導線や操作性をスタッフ全員で確認する。 |
4. スタッフ教育 | 新しいシステム導入後は、スタッフがスムーズに対応できるよう研修を実施し、不測の事態に対する対処マニュアルを準備する。 |
5. プロモーション | 導入しただけでは利用が広がらないので、SNSや店内ポスターなどを使って「ネット予約・モバイルオーダーが使えます」と告知する。利用者の手順をわかりやすく説明する工夫が必要。 |
6. 運用・改善 | 導入後、顧客からのフィードバックやスタッフの声をもとにシステムの設定やオペレーションを改善していく。より使いやすいサービスにして、リピート率を高める。 |
初心者がつまずきがちなポイントとしては、「ツール選定の判断基準がわからない」「初期費用がどの程度かかるのか不透明」「使いこなすためのスタッフ教育にどのくらい時間がかかるか」などが挙げられます。事前に試用版やデモを確認し、店舗の運営スタイルに合ったシステムを選ぶと良いでしょう。
費用対効果を測るためには、「どれだけ予約が増えたか」「どれだけ回転率が改善したか」「業務効率がどの程度向上したか」など具体的な数値を記録しておくことが大切です。初期費用や月額費用だけを見るのではなく、これらの効果を総合的に比較検討すると導入後の成功率が高まります。
SNSを活用した「安心・安全」アピール術
席数を減らしたりパーティションを設置したりといったソーシャルディスタンス対応が万全でも、それを認知してもらわない限り、来店促進にはつながりません。そこでカギとなるのがSNSでの情報発信です。
- ビジュアル(写真・動画)を活用した店内イメージの訴求
店内の席の配置や消毒の様子、スタッフがマスクや手袋を着用している様子などを写真や動画で公開することで、「安心感」がよりリアルに伝わります。 - 日々の取り組みレポート
定期的に「今日はこういう取り組みをしました」と具体的に発信すると、「常に気を配っているんだな」という印象が伝わりやすくなります。 - トーン&マナーに気をつける
「感染対策を徹底してます!」と大げさに強調しすぎると逆に不安を煽る可能性もあります。シンプルかつポジティブな言葉選びを心がけ、「心地よく過ごせる空間づくり」をメインテーマに据えるのがおすすめです。
SNSでの情報発信アイデア
- 店内のレイアウト変更ビフォーアフター
写真を並べ、「以前よりも席間を広げて、ゆったりと過ごしていただけるようになりました」といったポジティブなメッセージを添える。 - スタッフ紹介&対策紹介
スタッフがどのような感染対策を実施しているかをユーモアを交えて伝える。 - お客様の声のシェア
SNS上で好意的なコメントがあった場合は、許可を得てリポストする。「安心して過ごせた」「席の間隔が広くて落ち着いた」などの生の声は効果的です。
店舗オペレーションと店内表示の工夫
ソーシャルディスタンスを徹底し、安心感を高めるためには、オペレーション面での配慮や、店内掲示・サインなど視覚的な工夫も重要です。
- 入口・カウンターでの誘導
消毒液の設置位置をわかりやすく示し、スタッフから利用を促す声がけを行う。並ぶ場所にも床ステッカーやテープで目印をつけると良いです。 - メニューのデジタル化
テーブルに紙のメニューを置く代わりにQRコードを読み取ってスマートフォンでメニューを確認できるようにするなど、接触を最小限に抑える試みも増えています。 - 店内表示・サインのデザイン性
「密を避けてください」などの文字だけでは緊迫感が出すぎる場合もあります。アイコンやイラストを用いてやわらかい印象にすると、来店客も窮屈に感じにくくなります。
こうしたオペレーションと表示の工夫により、感染対策の徹底感と店舗イメージの両立が図れます。単に「注意を促す」だけでなく、「どう行動すれば快適に過ごせるか」をわかりやすく示すことが大切です。
成功事例に学ぶ工夫とアイデア
ソーシャルディスタンス確保が求められる中でも、うまく工夫をこらして売上を維持・回復した事例は数多く存在します。たとえば以下のような具体例があります。
- 事例1:席数を減らして高級感アップ → 客単価向上に成功
あるカフェでは、席間を広げるにあたって内装を落ち着いた雰囲気に統一し、メニューを一新。客単価の高いスイーツとドリンクのペアリングセットを打ち出し、「少し贅沢な時間を過ごせるカフェ」としてブランドイメージを高めました。その結果、客数の減少分を客単価アップでカバーできるようになりました。 - 事例2:テイクアウト専門カウンターを新設 → 回転率と売上アップ
席を大幅に減らす代わりに、店内の一部をテイクアウトカウンターに変更。ネット予約やモバイルオーダーで事前注文を受け付け、受け取りだけでサッと帰れる導線を確保しました。待ち時間が少ないため来客満足度が高く、ピークタイムでも密を避けられるというメリットがあります。 - 事例3:SNSで「席に余裕がある時間帯」をこまめに発信 → 混雑緩和と顧客満足度UP
平日午後や週末の早朝など、比較的空いている時間帯をSNSで告知。「今ならゆったり過ごせます」と情報を発信することで、その時間帯を狙って来店するお客様が増え、混雑と閑散のバランスが改善しました。
こうした事例に共通するのは、ソーシャルディスタンスによる席数減少を「デメリット」と捉えるのではなく、新しい価値を生み出すチャンスと見ている点です。店内レイアウトやメニュー、オペレーションの見直しを総合的に行い、店舗のブランディングを高めることで、結果的に売上もついてくるケースが多く見受けられます。
まとめ
ソーシャルディスタンスが当たり前となった今、席数を減らしただけで「売上が下がってしまう…」と嘆くのは早計です。視点を変えれば、今まで以上に**「ゆったり過ごせるカフェ」としてのブランディング**を確立できるチャンスにもなり得ます。
- 席数を減らした分、単価アップや回転率向上で補う
- ネット予約やモバイルオーダーで接触を減らしつつ運営効率を高める
- SNSで「安心・安全」を上手に訴求し、常連客・新規客へアピール
- 店内オペレーションの見直しや店内表示を工夫し、快適な空間を演出
これらを総合的に行うことで、ソーシャルディスタンス対応と経営の安定化を両立できます。中小企業でも比較的導入しやすいツールやSNS運用術が充実している今だからこそ、積極的に取り組んでみることをおすすめします。自店の状況や強みを活かしながら、お客様が「来てよかった」「また来たい」と思えるカフェづくりを目指していきましょう。
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