スタッフブログと会社ブログの違いとは
中小企業が情報発信する方法として、ブログはとても有用なツールです。しかし一口にブログと言っても、執筆者や運営目的によって「スタッフブログ」と「会社ブログ」という2種類に分けられることがあります。まずはこの2つのブログの役割や特徴について整理し、それぞれどう使い分ければいいのか理解しましょう。
スタッフブログとは
スタッフブログとは、社員個人の視点や日常にフォーカスした内容を中心に発信するブログを指します。会社公式の内容というよりは、よりフランクで親しみやすい雰囲気が特徴です。執筆者自身の体験談や趣味、仕事の中で感じたことなどがメインテーマになりがちです。社内行事やイベントレポート、普段の社風などが垣間見えることで、企業の「人」の部分を発信できるメリットがあります。
会社ブログとは
会社ブログは、公式メッセージや製品・サービスの最新情報、業界ニュース、経営陣からのコメントなど、企業全体として伝えたい内容をまとめるためのブログです。コーポレートサイトの一部として、対外的に正確な情報やブランディング要素を打ち出すことを目的とするケースが多いです。広報・PRが中心で、公式の口調やフォーマルな表現が多用される傾向があります。
ここで、2つを比較した表を見てみましょう。
視点 | スタッフブログ | 会社ブログ |
---|---|---|
主な発信者 | 社員一人ひとり | 企業(広報担当・経営層など) |
コンテンツの内容 | 個人的な体験談や日常エピソード、社内行事・イベントレポートなど | 公式発表、サービス・製品情報、経営に関する話題、会社の方針など |
トーン・雰囲気 | 親しみやすくフランク | 公式的、フォーマル |
主な目的 | 親近感の醸成、企業文化の発信、身近なブランドイメージの形成 | 企業イメージの確立、公式情報の発信、広報・PR |
更新頻度・運営負担感 | 執筆メンバーが増えると更新しやすいが、内容にばらつきが出やすい | 組織的に管理されるので一定のクオリティが期待できるが負担が集中 |
このように、スタッフブログは「人」に焦点を当て、会社ブログは「企業全体」の視点で情報を伝える役割があります。
スタッフブログのメリット・デメリット
スタッフブログは、社員個人が執筆するからこそ得られるメリットと、運営上のデメリットが存在します。ここで、スタッフブログに関する代表的な利点と注意点をまとめてみましょう。
メリット
- 企業の人柄をアピールできる
文章の筆者が具体的にわかるため、社内の雰囲気や人間関係、社員の個性が見えやすくなります。企業文化に興味を持つ求職者や取引先にとって、親しみを感じるきっかけになります。 - 柔軟で幅広いトピックを扱いやすい
社員一人ひとりの趣味や得意分野、またはプロジェクトの進捗状況など、公式ブログでは扱いにくいテーマにも取り組めます。結果として多彩な情報発信が期待できます。 - 執筆ハードルが低め
フランクな文体で良いので、一歩踏み出せば誰でも記事を書きやすいのもスタッフブログの利点です。更新頻度を高めやすいというメリットにつながります。
デメリット
- 内容のばらつき・ブランドイメージの統一性
社員各自が自由に書く分、記事の質や方向性にばらつきが出やすいという面があります。企業のイメージから外れた内容や公序良俗に反する話題を扱ってしまうリスクもゼロではありません。 - 責任の所在が曖昧になる可能性
執筆者が複数いるため、万一問題が起きたときに「誰が管理・監修をしていたのか」が不透明になりやすいです。コンプライアンス意識や管理体制が不十分だと、思わぬトラブルに発展する恐れがあります。 - 継続性の確保が難しい
最初は意気込んでいても、忙しくなると更新が止まってしまうことがよくあります。せっかくファンが付いても不定期更新になり放置状態になると、逆に企業のマイナスイメージを生む可能性があります。
会社ブログのメリット・デメリット
次に会社ブログについて見ていきましょう。会社全体として公式に情報発信する分、メリット・デメリットはスタッフブログとはまた違った側面があるはずです。
メリット
- ブランドイメージをしっかり統一できる
会社としての方向性やメッセージが明確になるため、企業カラーに沿ったブランディングが行いやすいです。公式見解として発信することで、読者の信頼を高める効果が期待できます。 - 信頼性が高い情報源として利用される
製品情報や事業に関する内容は、公式ブログであれば読者が「企業の公式情報だ」と認識しやすく、安心して受け取れるでしょう。特に業界ニュースやノウハウなどを提供する際は、専門家の立場から発信できるのも強みです。 - 検索エンジンでの評価が得やすい
組織立ったコンテンツ制作を行うことで、検索エンジン対策を計画的に実施しやすくなります。ビジネス関連のキーワードでの露出を高め、見込み顧客の獲得を狙うことが可能です。
デメリット
- 更新頻度が落ちがち
会社としての正式な承認や編集を経るため、記事公開のハードルが高くなることがあります。その結果、更新ペースが遅くなり、継続的な情報発信が難しくなるかもしれません。 - 硬いイメージになりやすい
公式の広報色が強い内容なので、文章がどうしても堅苦しくなりがちです。読者が興味を持ちにくいと感じるリスクもあり、親しみやすさの確保が課題となります。 - 担当者への負担が集中する
執筆担当や校正担当など、限られたメンバーに作業が偏りやすいです。小規模事業者であればあるほど、運用する人材リソースの確保が大きな課題となるでしょう。
スタッフブログ運営のポイント
スタッフブログを成功させるには、ただ「自由に書いてください」とするだけでは上手くいきません。会社のイメージを守りながらも、スタッフそれぞれが個性を発揮しやすい仕組みづくりが重要です。ここでは、スタッフブログ運営の具体的なポイントをいくつか紹介します。
- ガイドラインの作成
・書いてはいけない内容や言及を避けるべきテーマなど、最低限のルールをまとめる
・個人情報や機密事項への取り扱いを明確にする
・誤字脱字や公序良俗に反する表現を防ぐために、投稿前のチェック体制を整える - テーマの大枠を決める
完全に自由にすると執筆者が「何を書いていいかわからない」と迷うことも多いです。例えば「社内イベントやチームの取り組み」「業務に役立つ小ネタ」など、ジャンルを大枠で指定しておくとスムーズになります。 - 執筆担当のローテーションを決める
スタッフブログは複数メンバーが入れ替わりで更新してこそ生きます。1人に負担が集中しすぎると続かなくなるため、あらかじめ割り振りを決めておきましょう。 - ネタ出しリストを共有する
ふとした日常の出来事や社内行事など、記事化できそうなネタが出たらチームで共有できるシステムを整備します。思いついたときにすぐメモできるようにしておくことで、更新が滞りにくくなります。
参考として、スタッフブログに取り上げやすいトピック例と、その効果をまとめた表を確認してみましょう。
ジャンル | 具体的な例 | 期待できる効果 |
---|---|---|
社員の日常 | オフィスでのランチ紹介、業務の空き時間での雑談など | 社員の人柄や職場環境が伝わり、親近感を持ってもらえる |
社内イベント | 研修、レクリエーション、季節イベントなど | 社内文化やチームワークの雰囲気を感じられ、企業理解につながる |
成功・失敗体験談 | プロジェクトでの苦労話、学んだ教訓など | 読者にとっても参考になる情報が多く、経験談の共有が好感度を上げる |
業務ノウハウ | 自分の仕事術、ツール活用例、効率化のコツ | 意外に専門性を感じさせやすく、実用的な記事として評価される |
採用にまつわる話 | 新入社員の声、職場の研修制度、実際の業務内容など | 求職者にリアルな職場の雰囲気を伝え、採用にもプラスに働く |
会社ブログ運営のポイント
一方で、公式情報を発信する会社ブログは、より計画的・戦略的な運用が求められます。以下のようなポイントに留意して運用を検討してみましょう。
- 運営目的の明確化
・会社の公式見解や新商品情報を届けるのか、業界情報を含めたコンテンツマーケティングの一環なのかを明確にする
・SEOによる集客を重視するのか、既存顧客への最新情報のアナウンスを主目的とするのか、ゴールをハッキリさせる - 編集・公開フローの整備
公式情報なので、担当者が書いて経営層がチェックし、最終的に広報や編集の責任者が公開するといったフローを確立する必要があります。誤った情報発信を防ぐための仕組み作りが大切です。 - メディアの一貫性を意識する
公式SNSやプレスリリース、ニュースリリースなど、他の媒体との連携を意識しましょう。発信内容がチグハグにならないよう、会社のトーン&マナーを各媒体で揃えておくことが大切です。 - 中長期的なコンテンツ計画を立てる
短期的にアクセスを狙う記事と、長期的に読まれる記事(いわゆるストック型記事)をバランスよく組み合わせます。社内の知見を活かした専門的な記事やノウハウ紹介は、長期的に高い評価を得る場合があります。
会社ブログは比較的フォーマルな分、記事が増えるほど管理や確認に時間がかかる傾向があります。運用体制の構築と手順の可視化が成果につながる鍵です。
両方を併用するときの戦略
実は、スタッフブログと会社ブログはどちらか一方に絞る必要はありません。むしろ両方をうまく使い分けることで、企業イメージを向上させながら検索エンジン対策やブランディングも強化できます。しかし、併用する際は役割分担や運営ルールをしっかりと決める必要があります。以下はその一例です。
週 | 更新担当 | 主なトピック |
---|---|---|
第1週 | 会社ブログ担当 | 製品・サービス情報の最新アナウンス、経営層のコメントなど |
第2週 | スタッフブログ担当 | 社員の日常エピソード、社内イベントレポート |
第3週 | 会社ブログ担当 | 業界動向や市場の最新トレンド、コラム形式の情報発信 |
第4週 | スタッフブログ担当 | 社員の仕事ノウハウ、裏話や苦労話など |
このように定期的なローテーションを組むと、読者にとっては「公式なニュースもあるし、スタッフのリアルな声も聞ける」という両面からの情報が楽しめる構成になります。また、社内でも運営の体制や責任分担が明確になるため、更新漏れや内容のダブりを防ぎやすくなるでしょう。
使い分けのコツ
- 公式発表や業界情報は会社ブログに集約
企業としての立場をしっかり出す内容を会社ブログにまとめることで、読者が公式情報を探しやすくなります。対外的な信用度も高まりやすいです。 - 社員個人の人柄や企業文化はスタッフブログで発信
会社ブログには掲載しきれないちょっとした出来事やスタッフならではの視点は、スタッフブログのほうが相性がいいです。柔軟性を持たせることで、社内の雰囲気を伝えられるでしょう。 - 基本ルールとブランドガイドラインを全員で共有
どちらのブログも結局は企業全体の一部です。誹謗中傷や企業のイメージを著しく損ねる発言は厳禁など、守るべき最低限のルールは全員が理解しておく必要があります。
まとめ
スタッフブログと会社ブログの違い、運営のポイント、そして両方を併用する際の戦略について解説しました。
- スタッフブログは「社員個人の視点」をフックにして、読者との心理的な距離を縮める効果が期待できます。ただし、自由度が高い分、ブランドイメージとの整合性や継続管理には注意が必要です。
- 会社ブログは「企業としての公式情報」を発信しやすく、専門性の高い話題やブランディングを行ううえで大きな強みとなります。更新フローの確立や執筆担当の負担軽減策を講じて、定期的に運営することが大切です。
- 両方を併用する場合は、それぞれの役割を明確化し、コンテンツの統一感を保ちながら更新スケジュールを管理すると、読者からも信頼されやすくなるでしょう。
自社に合ったブログのかたちを見極め、目的や運営体制に合わせて柔軟に運用していくことで、オンラインでのブランド力や認知度を高め、見込み顧客や求職者を惹きつける情報発信へとつなげることができます。
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