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投稿日:2025.09.05  最終更新日:2025.9.30
運用・改善

Googleタグマネージャー初心者設定ステップバイステップ

Googleタグマネージャー初心者設定ステップバイステップ

Googleタグマネージャーとは?導入で得られる3つの価値

Googleタグマネージャー(以下、GTM)は、複数ページに散在する計測タグを「コンテナ」にまとめ、ブラウザ側で一括読み込みする仕組みです。ページに直接コードを書き込む必要がなくなるため、更新スピード保守性サイト速度の3点で大きなメリットがあります。士業サイトの問い合わせフォーム、ECサイトの購入完了ページ、建設会社の施工実績ギャラリー――用途が違っても、タグ管理を整理する考え方は共通です。

なぜタグを一元管理する必要があるのか

  1. タグ追加のたびに制作会社へ依頼するコストとリードタイムを削減
  2. テスト環境で動作を確認してから本番へ公開できるため、計測ミスを防止
  3. 読み込み順序を最適化し、ファーストビューの表示速度を維持

導入前後の変化比較

項目旧来の直接設置GTM 導入後
タグ更新工数コード修正→リリース管理画面操作のみ
サイト速度タグごとに HTTP リクエストgtm.js 1本+非同期
テスト環境混在しやすいコンテナ バージョン管理
リマーケ設定広告管理画面とサイトの両方を編集GTM 側で完結

初期準備:アカウントとコンテナの作成

GTM を使い始めるにはまず「GTM アカウント」と、その配下に作られる「コンテナ」を準備します。アカウントは基本的に企業単位、コンテナはサイト単位と考えると整理しやすいでしょう。複数ドメインを運用する建設会社の場合でも、サブドメインをまたいで 1 つのコンテナで管理できます。

  1. Google アカウントで Tag Manager にログイン
  2. 「新しいアカウントを作成」→会社名を入力
  3. コンテナ名にサイト URL を入力し、ターゲットプラットフォームを「ウェブ」に設定
  4. 発行された gtm.js スニペットを <head><body> に貼り付け

GA4 と UA を併用する安全な設計図

2024年7月にユニバーサルアナリティクス(UA)が完全停止しましたが、「アーカイブとして UA を残したい」という士業事務所は少なくありません。GTM であれば UA と GA4 の測定 ID を両方入れ、トリガーで同時発火させるだけで移行期を乗り切れます。

  • タグ設定: GA4 設定タグ、UA タグをそれぞれ追加
  • トリガー: 全ページビュー
  • 公開フロー: コンテナバージョンを「移行準備版」として保存し、テスト環境で比較

ウェブサイトへの設置と動作確認

コンテナコードを貼り付けただけでは終わりません。正しく読み込まれているかを必ず確認してください。

プレビュー(デバッグ)モードの活用

GTM 画面右上の「プレビュー」ボタンを押し、サイト URL を入力すると、別タブでデバッグツールが立ち上がります。発火状況やデータレイヤーの中身をリアルタイムで確認できるため、誤発火パラメータ抜けを公開前に発見できます。

CMS 別設置ポイント早見表

CMShead への挿入方法body への挿入方法注意点
WordPressfunctions.php でフック追加同上プラグイン多用サイトはキャッシュクリア
Shopifytheme.liquid 編集同上テーマ更新で上書きに注意
カラーミーテンプレート編集同上有料テンプレは子テーマ推奨
MakeShop共通テンプレ編集同上gzip 圧縮設定と競合しないか確認

士業・EC店長・建設会社それぞれの導入シナリオ

  • 士業事務所:問い合わせフォームと資料ダウンロードページでコンバージョンを計測したいが、個人情報を含む URL パラメータをログに残さないようにフィルタ設定が必要
  • EC 店長:売上連動の広告出稿を行うために購入金額をデータレイヤーに送信し、Google広告の動的リマーケティングで平均 ROAS を 120% まで高めたい
  • 建設会社:写真を多用した実績ページが多く、ファイルサイズが大きい。画像遅延読み込みと同時に GTM でタグを非同期読込にすることで、LCP(Largest Contentful Paint)の目標 2.5 秒以内を維持

これらのケースに共通するのは「タグ管理を最小限の負荷で運用したい」というニーズです。GTM はタグを JavaScript の非同期ロードへ統合し、不要なタイミングでの発火を抑えることでページパフォーマンスを保ちます。特に Core Web Vitals の LCP と CLS(Cumulative Layout Shift)は検索順位へ直結する指標のため、タグの最適化は SEO でも重要な施策です。

GTM 運用で押さえるべきルール

  1. 命名規則を統一する
    • タグ名:「媒体_計測対象_目的」例)GA4_AllPages_PageView
    • トリガー名:「発火条件_詳細」例)PageView_All
    • 変数名:「データ種類_用途」例)DL_PurchaseAmount
  2. バージョン管理を徹底する
    テスト→承認→公開の 3 ステップを踏むことで、誰がいつ何を変更したか履歴を追える。
  3. 権限を細分化する
    編集権限と公開権限を分け、誤操作による全タグ停止リスクを回避。
  4. 定期的に不要タグを棚卸しする
    シーズンキャンペーン終了後に広告タグが残り続けると、読み込み負荷とデータ汚染を招く。

よくあるミスと対策

ミス事例原因防止策
コンテナを複製してテストしたが本番と混線同じ測定 ID を使い回し測定 ID を環境別に切り替える
リンククリック計測が発火しないaタグがJavaScriptで生成DOM Ready ではなく Click All Elements を使用
ページ表示が遅くなったタグの同期読み込みが残存タグ設定で「サポートされていない同期」を非同期に

ここまでで GTM の基礎と初期設定の全体像を把握できました。続きを読み進めれば、広告リマーケティング速度チューニングといった実践的なノウハウを習得できます。ここで理解した内容を自社サイトにすぐ適用してみましょう。

GA4タグをGTMで設定・移行するステップ

現状のUAイベントを棚卸しする

まずはユニバーサルアナリティクス(UA)で送信していたイベントを一覧化し、何を残して何を捨てるかを決めます。資料請求完了、購入完了、電話クリックなど、目的と KPI にひも付かない計測は思い切って削除することで、データ品質とサイト速度の両方を高められます。

GA4 設定タグを作成する

GTM の「新規タグ」からテンプレート「Google アナリティクス: GA4 設定」を選び、測定 ID(G-XXXXXX)を入力します。ここで<strong>送信先(既定のイベント送信先)</strong>にチェックを入れると、後続の GA4 イベントタグが自動的にこの設定を継承するため、タグ間のメンテナンスが大幅に楽になります。

データレイヤー変数を設計する

EC サイトの場合、購入金額や商品 ID を計測しないと広告最適化が機能しません。トラッキング ポイントごとに必要なパラメータを洗い出し、開発担当に JSON 形式で渡して実装してもらいます。

旧 UA イベントカテゴリ旧 イベントアクションGA4 推奨イベント名推奨パラメータ解説
purchasecompletepurchasevalue, currency, items購入完了金額と通貨、商品情報
contactsubmitgenerate_leadform_id, method資料請求フォーム送信
phoneclickselect_contentcontent_type, item_id電話番号タップ

GA4イベントタグの登録とテスト

  1. GA4 設定タグを基に「Google アナリティクス: GA4 イベント」を新規作成
  2. イベント名に UA で整理した新イベント名を入力
  3. 追加パラメータにデータレイヤー変数をマッピング
  4. トリガーを「該当ページビュー」または「リンククリック」に設定
  5. プレビューでイベント発火とパラメータ値を確認

リマーケティング用タグを追加する方法

Google広告のリマーケティングタグ

GTM のテンプレート「Google Ads リマーケティング」を利用します。コンバージョン ID とラベルを入力したら、トリガーを「すべてのページ」または「コンバージョンページ」に設定。広告管理画面でオーディエンスリストが増えているかを翌日確認しましょう。

SNS ピクセルの統合

X(旧 Twitter)や Meta 広告用ピクセルはカスタム HTML タグで挿入するケースが多いですが、タグテンプレートギャラリーを検索すると公式提供のテンプレートがある場合もあります。テンプレートがないときは、サードパーティ製テンプレートを使うよりも、公式スクリプトをカスタム HTML で挿入した方が安全です。

タグ種別必須パラメータトリガー例主な活用シーン
Google Adsconversion_id, conversion_label全ページ / 購入完了検索広告・ディスプレイ広告
Meta ピクセルpixel_id全ページ / カート追加動的広告・Lookalike
LINE Tagtag_id, event_id全ページLINE VOOM 広告
X Pixelpartner_id資料DL完了フォロワー類似配信

タグ同士の重複を防ぐコツ

  1. 命名規則で媒体名を先頭に付与し、検索しやすくする
  2. フォルダ機能で「広告」「解析」「その他」に分類する
  3. 複数ドメインを横断する場合は環境変数で ID を切り替える

サイト速度を損なわないタグ運用のコツ

タグ発火条件を最小化する

「すべてのページ」で発火しているタグが多いほど、HTTP リクエスト数が増えます。計測が不要な下層ディレクトリでは「Page Path 含む /blog/」など、ディレクトリ単位で発火条件を制御してください。

Server-Side GTM の導入可否を判断する

サーバー側 GTM はブラウザでのリクエストを 1 本にまとめ、Cookie 制限にも強くなります。ただし、App Engine などのインフラ費が発生するため、月間 50 万 PV 以上あるサイトや、広告経由売上が高いEC でないと費用対効果が出にくい点に注意しましょう。

チェック項目目標値確認ツール改善ヒント
LCP2.5 秒以内PageSpeed Insights非同期読込・画像最適化
FCP1.8 秒以内Chrome DevTools不要 JavaScript の削減
JS ペイロード総量500 KB 未満WebPageTestライブラリ統合
タグ数30 以内GTM 管理画面終了キャンペーン削除

設置後のモニタリング体制

  • Looker Studio ダッシュボードで「タグ発火回数」と「Core Web Vitals」を週次確認
  • Site KitSearch Console のアラートメールをオンにし、速度低下の兆候を早期検知
  • 3 か月ごとに「不要タグ棚卸し会議」を開催し、広告・解析・ABテストの担当者が横断で見直す

よくあるトラブルシューティング Q&A(抜粋)

Q. GA4 にイベントが届かない

A. ブラウザ拡張の広告ブロッカーが原因の場合があります。拡張機能をオフにして再確認し、それでも届かない場合は測定 ID の入力ミスを疑いましょう。

Q. タグを減らしたのに CLS が悪化した

A. HTML 内のイメージタグに widthheight 属性がないとレイアウトシフトが起きやすくなります。タグ削減だけでなくマークアップの最適化も同時に行いましょう。

Q. プレビューで問題なくても本番で発火しない

A. キャッシュ系プラグインが旧バージョンの gtm.js を配信している可能性があります。公開後に必ずサーバーキャッシュと CDN キャッシュをクリアしてください。

運用フェーズ別チェックリスト

GTM を導入した後は「運用」「改善」「管理」の 3 フェーズで課題が変わります。下記チェックリストを四半期ごとにレビューすると、タグの劣化を防げます。

フェーズ重点項目やるべきこと推奨頻度
運用タグ正常稼働コンテナバージョン確認、プレビュー稼働テスト毎月
改善KPI 達成度GA4・広告管理画面で指標比較、A/B テスト計画四半期
管理ガバナンス権限棚卸し、不要タグ削除、ポリシー更新半年

権限ガバナンスのベストプラクティス

  • 管理者:GTM 構成変更と公開が可能。役員または責任者 1~2 名に限定。
  • 編集者:タグの追加・編集のみ可能。公開には別途承認が必要。
  • 閲覧者:デバッグとプレビューのみ。広告代理店や外部パートナーに付与し、勝手に公開されるリスクを防ぎます。

コンプライアンスとプライバシー対応

Cookie 規制が強まる中、タグ管理にも法務視点が欠かせません。GTM には「コンセント モード」が用意されており、ユーザー同意状態に応じてタグ発火を制御できます。

コンセント モード設定手順

  1. GTM 管理画面で「管理」→「コンセント設定」をオン
  2. デフォルトステータスを「denied」に設定
  3. 同意バナー JS から gtag("consent", "update", { ad_storage:"granted", analytics_storage:"granted" }) を送信
  4. GA4・広告タグ側の「同意チェック」を有効にする

これにより、同意が得られるまでは広告・解析 Cookie が保存されず、プライバシー規制をクリアできます。士業事務所のように個人情報を扱うサイトは特に重要です。

ケーススタディ:建設会社サイトの速度改善と計測最適化

背景

  • 施工実績 200 ページ、画像総容量 120 MB
  • タグ:UA、GA4、Google Ads、Meta ピクセル、動画トラッキングなど計 18 本
  • LCP:4.1 秒、CLS:0.21(主要ページ平均)

施策

  1. タグ整理:終了済みキャンペーン 6 本を削除
  2. Server‑Side GTM:Cloud Run に導入し、ブラウザ読込タグを 7 本まで削減
  3. 画像遅延読込loading="lazy" と WebP 変換を実装

結果(実装 2 週間後)

  • LCP:2.3 秒(‑1.8 秒)
  • CLS:0.05(‑0.16)
  • 広告 ROAS:+32%
  • GA4 イベント欠損率:ほぼ 0

ポイントは「タグ削減」「非同期化」「サーバーサイド化」の三段構えでパフォーマンスを守りながら広告効果を高めたことです。

長期運用ロードマップ

  1. 0–3 か月目:導入と GA4 への移行完了、主要コンバージョンイベントの計測確立
  2. 3–6 か月目:広告タグ統合とリマーケティング運用開始、速度改善第 1 弾
  3. 6–12 か月目:Server‑Side GTM の投資判断、データ品質監査、法規制対応
  4. 12 か月以降:BI 連携(BigQuery/Looker)によるデータ活用フェーズへ

各フェーズで KPI とタスクを明確にすることで、タグ管理が目的化するのを防ぎ、事業成果へ直結させられます。

まとめ:今日から始める計測改善ロードマップ

Googleタグマネージャーを使えば、タグ更新のリードタイム短縮とサイト速度の両立が可能です。

  • 導入:アカウント・コンテナ作成と GA4 設定タグで基盤を作る
  • 移行:UA イベント棚卸しと GA4 への再設計でデータ品質を向上
  • 拡張:リマーケティングや SNS ピクセルを統合し、広告効果を最大化
  • 最適化:発火条件の最小化と Server‑Side GTM で Core Web Vitals を守る
  • ガバナンス:権限管理とコンセント モードで法規制とリスクに備える

これらを計画的に実行すれば、士業事務所・EC 店長・建設会社いずれのサイトでも、計測とビジネス成長を両立できます。