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ノーコードで開店!ShopifyでECサイトを始める方法

Shopifyとは?ノーコードで始められる理由
オンラインストアをゼロから構築するとなると、サーバー契約やプログラム言語の勉強など―頭を抱える要素が山ほどあります。Shopifyはそれらの障壁を取り払い、「管理画面で選択肢を選び、フォームに入力するだけ」でストアを公開できるクラウド型プラットフォームです。テンプレート(テーマ)と機能拡張アプリの組み合わせにより、コードを書かなくてもデザイン・決済・配送・在庫管理が一気通貫でそろいます。さらに、世界175か国で利用される規模の大きさから、セキュリティや決済網、サーバー負荷対策も標準装備。ハンドメイド作家や小規模食品事業者が「とりあえずモール」で済ませていた理由――技術的ハードルと集客基盤の欠如――を同時にカバーできる点が支持されています。
なぜ「モール依存脱却」に向いているのか
- ブランドの世界観を自由に表現:固定レイアウトのモールと異なり、テーマのカスタマイズ幅が広い
- 手数料構造がシンプル:月額+決済手数料で予算が読みやすい
- データを自社資産化:顧客情報や購買履歴を自分たちで管理・分析できる
- 販促チャネルとの連携:SNS、広告、メールなどをアプリでワンクリック接続
開店前準備:ビジネスモデルと商品戦略を整理
ストア構築に入る前に、次の三点を紙に書き出しておくと後工程が圧倒的にスムーズになります。
1. ビジネスモデルキャンバスで全体像を可視化
- 顧客セグメント:リピーターを生むファンコミュニティか、新規顧客の拡大か
- 価値提案:ハンドメイドなら「一点物」「職人の想い」、食品なら「産地限定」「無添加」など
- 収益の柱:商品単価×数量、サブスク、ギフト需要、BtoB卸 …
2. 商品データシートを作成
- SKUごとに「商品名/原材料/サイズ/価格/重量/保管方法/賞味期限」を網羅
- 複数サイズ展開やオプション(名入れ等)がある場合はバリエーション管理を明確に
3. 競合・モール実売価格をリサーチ
- 自社が「高品質プレミアム路線」か「手に取りやすい日常品」かを数値で判断
- 配送料込みの総額を比較し、過度な値引きで利益を削るリスクを回避
Shopifyストア開設ステップ
ここからは実際の画面操作に入ります。ノーコードといえど設定項目は多岐にわたるため、チェックリスト方式で進めると漏れがありません。
ステップ0:無料トライアル登録
メールアドレスとパスワードを入力し、「自分のストア」を作成。ここで入力した店名は後から変更可能ですが、myshopify.comのサブドメインには固定で残るため注意が必要です。
ステップ1:プラン選択
まずは月額費用の発生しない「トライアル期間」で操作感をつかみます。正式公開前にプランを決定する際は、以下の比較表が目安になります。
Shopifyの料金プラン比較
プラン | 月額費用(目安) | クレジット手数料 | 主な機能 | 向いている事業規模 |
---|---|---|---|---|
Basic | 約37ドル | 国内3.4% | ストア開設に必要な基本機能 | 個人・小規模 |
Shopify | 約105ドル | 国内3.3% | レポート機能、ギフトカード | 伸び盛りの中小 |
Advanced | 約399ドル | 国内3.25% | 高度なレポート、外部計算送料 | 多店舗・海外展開 |
Plus | カスタム | 交渉 | B2B機能、マルチストア | 大規模ブランド |
ポイント:食品会社でクール便や重量課金送料を利用する場合、Advanced以上で使える「外部配送サービス連携」が後々の手間を削減します。
ステップ2:ストア情報入力
- 事業者情報:法人番号、所在地、連絡先メール
- 標準言語/通貨:国内向けなら日本語・JPYを選択
- 税設定:食品の場合は軽減税率8%対象、ハンドメイド雑貨は10%
ステップ3:独自ドメイン接続
- Shopifyで購入する場合はネームサーバ設定を自動化
- 既存ドメインを持っている場合はDNSでAレコードとCNAMEを指定
- SSL証明書はShopify側で即時発行。追加費用なし
ステップ4:テーマ選定とインストール
テーマ公式ストアでは無料・有料合わせて100種類以上。無料テーマ「Dawn」はレスポンシブ性能が高く日本語も崩れにくいため、初期導入に最適です。有料テーマは150〜400ドル前後ですが、テーマは買い切り。長期運用を想定してブランドの世界観に合うかを優先しましょう。
ステップ5:商品登録とコレクション作成
- CSV一括インポートを活用するとSKU数が多くても時短
- コレクション(カテゴリ)を「手動」「条件式」で自動振り分け可能
- 画像は2048px四方推奨、ファイル名にキーワードを含めると画像検索対策に有効
ステップ6:決済方法の有効化
- Shop Pay、クレジットカード、コンビニ支払い、PayPalなどをON/OFF
- 手数料率と入金サイクルを必ず確認し、キャッシュフローを試算
- 後払い決済の導入はチャージバックリスクと回収代行手数料を計算に入れる
ステップ7:配送設定
- 配送元住所を登録し、重量別・金額別の料金テーブルを作成
- クール便や離島料金など例外を「条件付き送料」で設定
- 配送通知メールの文面に、温度帯や賞味期限の記載を入れると顧客満足度向上
ここまでのまとめ
Shopifyは「操作画面が日本語化され、ステップごとのガイドが整備されている」という意味で真のノーコードを実現しています。しかし、ビジネス設計と設定項目の適合を誤ると、モールよりコストがかさんだり配送事故でブランド価値を損ねたりするリスクも。次章以降ではテーマのカスタマイズ術、必須アプリ、売上を左右する決済・送料設定の具体例を掘り下げ、運用後の販促までを通貫で解説します。
テーマ選定とデザインのコツ
テーマはストアの“顔”であり、購入率にも直結します。見た目だけでなく、読み込み速度・モバイル最適化・アプリ互換性を軸に比較しましょう。
無料・有料テーマ比較
テーマ名 | 価格 | 強み | 注意点 | 推奨業種 |
---|---|---|---|---|
Dawn | 無料 | コード不要で柔軟レイアウト、読み込み高速 | セクション上限が少なめ | ハンドメイド雑貨全般 |
Craft | 無料 | 大画像と余白設計でブランド感を演出 | 商品数が多いと一覧性が低下 | 高単価クラフト作品 |
Taste | 無料 | 食品写真を引き立てるカラー設計 | LP的な縦長構成で回遊性が弱い | 加工食品・ギフト |
Prestige | 380ドル | 高解像度画像対応、メガメニュー | 英語デフォルト、和文調整要 | プレミアム食品、アパレル |
Impulse | 350ドル | コレクション販促ブロックが豊富 | 動的要素が多く重くなりがち | SKU数100超の総合店 |
選び方のポイント
- 商品写真を主役にしたいか、ストーリーを語りたいかで列を絞る
- “セクションの複製可否”を確認し、将来のページ追加に備える
- 有料テーマは買い切り。移行コストを抑えたいなら最初に投資する方が結果的に安い
配色とフォント
- 配色:メイン1色+アクセント1色+グレースケールで構成すると視認性が高い
- フォント:日本語は游ゴシック、Noto Sans JPなどWebフォント対応のものを使用。読み込み速度を優先し、太字ウェイトを絞る
必須アプリと拡張機能
Shopifyは“本体+アプリ”で真価を発揮します。初期段階で入れておくと業務効率が跳ね上がるアプリをまとめました。
カテゴリ | アプリ例 | 主な機能 | 無料プラン | 離脱リスク軽減度 |
---|---|---|---|---|
サイト翻訳 | Transcy | 自動翻訳・多通貨切替 | ○ | ★★☆☆☆ |
SEO | SEO Optimizer | メタ設定自動生成、画像ALT補完 | ○ | ★★★☆☆ |
レビュー | Judge.me | 購入者レビュー、写真投稿 | ○ | ★★★★☆ |
決済・後払い | KOMOJU | コンビニ・Pay-easy・銀行振込 | ○ | ★★★☆☆ |
配送 | Ship&co | 伝票生成、複数キャリア連携 | △(30件/月) | ★★★★☆ |
定期購入 | Subscription Plus | サブスク管理、継続課金 | △ | ★★★★☆ |
注意:アプリを入れ過ぎるとサイト速度が低下し、SEO評価が落ちる可能性があります。“課題→アプリ”の順で導入を検討し、必ず稼働状況を把握しましょう。
決済設定でつまずかないために
決済の選択肢が多すぎるとかえって「どれを選べばいいか分からない」という声が上がります。顧客の購買行動データをもとに3ステップで決定すると迷いません。
ステップ1:ターゲット顧客の決済習慣を把握
- 20〜30代はクレジット+スマホ決済が主流
- 60代以上や法人顧客は銀行振込を好む傾向
ステップ2:手数料とチャージバックリスクを評価
決済手段 | 決済手数料(目安) | 入金サイクル | チャージバックリスク | 備考 |
---|---|---|---|---|
クレジットカード | 3.25〜3.9% | 週次 | 高 | 売上規模が大きいほど要対策 |
コンビニ払い | 3.6%+40円 | 月次 | 低 | 若年層のカジュアル購入に強い |
銀行振込 | 0% | 随時 | 極低 | 手動消込なら人的コスト増 |
後払い(Paidy等) | 4〜5% | 月次 | 中 | 与信審査と督促手数料に注意 |
ステップ3:テスト注文でUI/UXを確認
- ストア設定>決済>“テストモード”をON
- 実際にカート投入から決済まで操作し、リンク切れや誤訳をチェック
送料ルールの作り方と運賃表設定
送料は購入率に直結するパラメータです。食品や重量物は特に複雑なため、シンプルに見せて実費回収が鉄則です。
基本パターン
- 全国一律送料:カート価格に転嫁しやすい小物向け
- 地域別送料:北海道・沖縄・離島を分ける
- 重量別送料:コーヒー豆や瓶詰めなど重量差が大きい商材向け
重量別送料の設定例(ヤマト宅急便)
重量区分 | 北海道 | 東北 | 関東・中部 | 近畿 | 中国 | 四国 | 九州 | 沖縄 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
〜2kg | 1,540円 | 990円 | 880円 | 990円 | 1,100円 | 1,100円 | 1,320円 | 1,430円 |
〜5kg | 1,760円 | 1,210円 | 1,100円 | 1,210円 | 1,320円 | 1,320円 | 1,540円 | 1,980円 |
〜10kg | 1,980円 | 1,430円 | 1,320円 | 1,430円 | 1,540円 | 1,540円 | 1,760円 | 2,530円 |
実務ヒント
- 「送料無料ライン」を5,500円などに設定し、客単価引き上げと送料原価吸収を両立
- クール便は+220円など追加料金を設定し、ラベル出力時に自動付与する
送料・クール便設定フロー
- 管理画面>配送と配達で“配送プロファイル”を作成
- “条件追加”で重量・価格帯を入力
- クール便用の配送条件を別スラッグにし、商品側で“条件付き配送”を紐付け
- テスト購入を行い、送料が正しく反映されるかチェック
法規制とセキュリティ:食品・ハンドメイドの注意点
食品表示法・特定商取引法
- 原材料、アレルゲン、賞味期限、保存方法を商品ページに明記
- 加工所の所在地を記載し、許可番号を掲載
- 特定商取引法ページに運営責任者氏名・連絡先・返品ポリシーを必ず記載
個人情報保護
- プライバシーポリシーをテンプレートではなく自社向けに加筆
- 決済データはShopify側で暗号化。自社でカード情報を保持しないことが最良のセキュリティ対策
アクセス権限管理
- 社内メンバーを「ストアスタッフ」として招待し、必要最小限の権限を付与
- 外部制作会社に一時的に権限を与える場合は終了日を必ず設定
運用開始後の集客と販促
Shopifyストアを公開しただけでは売上は立ちません。ここからは「見つけてもらい、購入し、再訪してもらう」仕組みをつくる段階です。ハンドメイドや食品などリピートが命の商品ほど、顧客との継続的接点が成果を左右します。
検索流入を増やすSEO対策の基本
- 商品ページごとにキーワードを絞り込み、タイトル・メタディスクリプション・ALT属性を最適化
- コレクションページには “{カテゴリ名} おすすめ” など欲求語を含める
- 構造化データ(JSON‑LD)を自動生成するSEOアプリを有効化し、リッチリザルトを狙う
- Search Consoleを接続してインデックス状況を週次チェック。404や重複タイトルを放置すると評価が伸びない
SNSとUGCを活用したファン育成
- Instagram:#ハッシュタグを商品属性+ライフスタイルワードで組み合わせ、投稿→ストーリーズ→ハイライトで導線を固定
- X(旧Twitter):製造過程や原材料の裏話を短文で発信し、共感と拡散を促進
- TikTok:15秒レシピ動画や作家の制作ライブで“推しポイント”を視覚化
- Pinterest:縦長画像でHow‑toピンを量産し、海外検索流入を獲得
UGC活用術
Judge.me等で集まったレビューをトップページにウィジェット表示し、社会的証明を高める。投稿写真が20件を超えると平均CVRが1.2〜1.5倍向上する傾向があります。
メールマーケティングと顧客リピート
配信タイミング | コンテンツ例 | 期待効果 |
---|---|---|
初回購入直後 | サンクスメール+使い方ガイド | 不安払拭・返品率低減 |
7日後 | レビュー依頼+クーポン | UGC獲得・再訪誘導 |
30日後 | リピート提案+レシピ記事 | 継続購入・客単価向上 |
季節イベント前 | 限定品やギフトセット告知 | 新規客紹介・購買喚起 |
補足として、Shopify Flow(無料オートメーション)を用いれば「購入回数=1回」の顧客にだけリピート訴求フローを起動するなど、ノーコードで高度なセグメント配信が可能です。
データ分析と改善PDCA
- Shopifyレポートで“平均注文額・転換率・再購入率”を週次でモニタリング
- Google Analytics 4を連携し、流入チャネル別・商品別の離脱ポイントを可視化
- データに基づき「LPのファーストビュー改修 → ABテスト → 勝ちパターンをテーマに反映」という短サイクルを回す
- KPIは“売上”“新規客率”“リピート率”の3指標に絞ると優先順位がブレない
小規模ストアのKPIベンチマーク
指標 | 立ち上げ期 | 伸長期 | 安定期 |
---|---|---|---|
平均転換率 | 0.8〜1.2% | 1.5〜2.0% | 2.0〜3.5% |
平均注文額 | 3,500〜4,500円 | 5,000〜6,500円 | 7,000円以上 |
リピート率 | 5〜8% | 12〜18% | 25%以上 |
メール開封率 | 18〜25% | 25〜32% | 32%+ |
成功事例:ハンドメイド/食品/小規模事業者
事例1:一点物アクセサリー作家
- Dawnテーマ+Instagram連携のみで開店3か月後に月商50万円達成
- UGCコンテストを実施し、レビュー数が100件→400件に増加。CVRが1.8倍に
事例2:地域密着の味噌蔵
- Tasteテーマをベースに、ストーリー性のある商品ページを構築
- “味噌仕込み体験”をサブスク化し、平均客単価が9,200円→14,700円に上昇
- 地元イベントと連動し、オフライン×オンラインの販促で新規客比率が57%に到達
事例3:小規模ギフト事業者
- Impulseテーマで商品タグフィルタを実装し、回遊性を強化
- コンビニ後払い導入でカゴ落ち率が12%改善。シニア層の売上比率が25%→38%に拡大
- Shopify Flowで「購入3回目の顧客にVIPタグ付与→限定商品を自動メール」というロイヤルティ施策を自動化
まとめ:最初の一歩を踏み出そう
Shopifyはノーコードでストアを開設できるだけでなく、運用フェーズでの学習コストが低い点が最大の魅力です。テーマ・アプリ・設定項目は多岐にわたりますが、本記事のフローに沿えば「何を・いつ・どこで」選択すればよいかが明確になります。
モール依存から脱却し、ブランドを育てる旅は“公開ボタン”を押したときに始まります。今日から一つずつ設定を進め、自社だけのストア体験を届けましょう。