ネットショップを運営するうえで、「商品写真は売上を左右する重要要素」といわれることがあります。実店舗であればお客さまが実物を手に取って確認できますが、オンライン上では写真こそが商品の“第一印象”を決定づけるからです。とはいえ、プロに依頼する予算がない、あるいは頻繁に撮影するので自社内で済ませたいというケースも多いでしょう。
本記事では、プロカメラマンに頼まずとも、スマホや簡易的な機材で商品写真をクオリティ高く撮るためのノウハウを解説します。個人で運営するネットショップや中小企業、あるいは「撮り方がわからずなんとなく撮っている」という初学者の方まで、ぜひ参考にしてください。
商品写真の重要性と背景
商品写真は、ネットショップにおける「商品の顔」。
実際に店舗に足を運ばない分、顧客は視覚情報から判断するしかありません。
写真が暗かったりぼやけていたりすると、興味を持ったとしても「購入後に失敗するのではないか」と不安を抱え、結果として離脱されやすくなります。
一方、背景や光の使い方を工夫し、商品の特徴をしっかりと引き出せば、「実際に使ってみたい」「詳しく知りたい」という感情を引き出すことが可能です。写真にこだわることは、売上に直結する投資といえるでしょう。
また、ネットショップにおいては写真点数も多くなりがちです。撮影技術が上がれば、既存の商品写真の改善や、新商品の撮影サイクルもスムーズに回せるようになります。撮影のコツを知り、実践できる体制が整えば、長期的に大きな費用削減と売上向上につながるはずです。
プロと自前撮影の比較
「プロカメラマンに頼むべきか、自社で撮影すべきか」と迷う方も少なくありません。
まずは、プロに依頼した場合と、自前で撮影した場合の特徴をざっくり比較してみましょう。
項目 | プロに依頼 | 自前撮影(スマホ含む) |
---|---|---|
費用 | 一般的に高額になることが多い | 初期投資を抑えられる |
仕上がりのクオリティ | 確実に高品質。ブランドイメージを向上できる | コツを押さえれば十分見栄えを出せる |
撮影の柔軟性 | 日程調整や撮影カット数の制約が発生しやすい | 必要なタイミングで気軽に追加撮影が可能 |
撮影時間 | スケジュールを組む必要あり | 空き時間を使って作業できる |
機材 | 高価なカメラや照明機材が使える | スマホや簡易ライトなど、手軽なものでも対応可能 |
プロに依頼すれば、撮影経験や機材の面で圧倒的なアドバンテージがあります。しかし、頼むたびに費用がかさみ、日程も調整しなければなりません。
一方、自社や個人がスマホで行う撮影は、初期コストこそ抑えやすいですが、クオリティを上げるためのノウハウが必要です。
この記事では、後者の「自前撮影で、どこまでクオリティを上げられるか」という点にフォーカスしていきます。
スマホ撮影で押さえたい基本ポイント
スマホカメラの性能は年々向上しています。うまく撮影環境を整えれば、従来のコンパクトデジタルカメラにも引けを取らないクオリティを得ることが可能です。ここでは、まず最低限意識したいポイントを整理します。
- 明るさを確保する
スマホ撮影では光量が不足しがちです。屋外や窓際など明るい場所を選ぶだけでも、写真の見栄えが大きく変わります。 - ピントをしっかり合わせる
商品の主役となる部分がぼやけてしまうと台無しです。撮影時にはタップして焦点を合わせましょう。 - 解像度を下げない
画像データを保存するときに解像度を落としすぎると粗くなります。サイト表示の軽さとのバランスが大事ですが、商品写真はある程度の解像度が必要です。 - 水平・垂直を意識する
背景や構図のバランスが傾いていると素人感が出てしまいます。スマホのグリッド表示などを活用すると良いでしょう。 - 撮影したらすぐ確認し、微調整を繰り返す
デジタル撮影の利点は、何度でも撮り直しができること。撮影した写真をその場で確認し、「暗い」「ブレてる」などの問題があればすぐに修正を行います。
構図・背景・ライティングの工夫
商品写真を魅力的に見せるには、被写体となる商品の魅力を最大限に引き出す構図や背景、ライティングが重要です。
1. 構図
- 三分割法
撮影画面を縦横3分割したグリッドをイメージし、主役を交点や線上に置くとバランスが取りやすいといわれます。 - 余白をつくる
商品を中央に大きく写すばかりではなく、周囲に適度な余白を入れることで高級感や落ち着きを演出できます。
2. 背景
- シンプル背景
白や淡色の紙・布を使ったシンプルな背景は商品が映えやすく、ネットショップに多く見られる定番スタイルです。 - 利用シーンを連想させる背景
アパレルなら着用イメージを見せる、食品ならキッチンや食卓でのシーンを撮影するなど、実際の使用感を想起させる工夫も有効です。
3. ライティング
- 自然光を活用
窓際などで撮ると自然な明るさと陰影が得られ、商品の質感を引き立たせられます。 - 簡易照明を導入
夜間や屋内の暗い場所で撮影するときは、手軽なLEDライトやレフ板で影を補正すると一段ときれいに仕上がります。
撮影の具体的ステップ
ここでは、スマホでの撮影を想定し、実際の撮影フローを簡単な表にまとめます。撮影環境を毎回整える手間を減らすために、ポイントを押さえておきましょう。
ステップ | 内容 | ポイント |
---|---|---|
1. 準備 | 背景シート、照明(LEDライトなど)をセット | なるべく雑多なものが写り込まないようにスペースを確保する |
2. 設定 | スマホカメラの解像度を最大に設定 | HDR機能やグリッド表示をオンにするとさらに便利 |
3. 試し撮り | 商品を置いて構図と明るさをチェック | 必要に応じてライトや背景の角度を微調整 |
4. 本撮影 | ピントを合わせて複数枚撮影する | 角度や距離を変えながら撮影すると、後から最良の1枚を選びやすい |
5. 確認 | 撮影後、その場で写真を拡大して確認 | ブレやピンぼけがあればすぐに取り直す |
このようなステップを踏むことで、スマホ撮影でも一定のクオリティを確保しやすくなります。特に、複数枚の撮影がとても重要。ネットショップ用に掲載する写真は1商品あたり数枚必要になることが多いため、いろいろな角度・シーンを撮って使えそうなものをセレクトしていきましょう。
画像編集のコツ
撮影後の画像編集(レタッチ)も、写真の完成度を上げるうえで欠かせない作業です。以下は基本的な編集ポイントです。
- 明るさ・コントラストの調整
画面が暗い場合や淡い印象になる場合は、少しだけ明るさを上げてみましょう。ただし、上げすぎると白飛びし、商品の質感が損なわれるので注意が必要です。 - 色味(ホワイトバランス)の調整
実物の色味と写真の色味が違うと、顧客に誤解を与えかねません。商品の実際の色合いに近いホワイトバランスを意識しましょう。 - トリミング
商品以外の不要部分をカットして見せたい部分にフォーカスを当てると、写真のインパクトが増します。 - レタッチのやりすぎに注意
無理に加工しすぎると、実物とのギャップが生まれ、クレームの原因にもなり得ます。あくまで自然に魅力を引き出すイメージで。
撮影時に注意すべきミスと対策
慣れないうちは、撮影中にいくつかの「よくあるミス」をしがちです。ここでは、ありがちなトラブルと対処法を表にまとめます。
ミス事例 | 問題点 | 対処法・対策 |
---|---|---|
商品が暗く写ってしまう | ライティング不足。影が強調される | 自然光を使う、ライトの位置を見直す、レフ板を活用する |
背景と商品の色が同化してしまう | 商品が埋もれて目立たない | 背景の色を変える、背景紙・布を白や黒などコントラストのある色にする |
ピントが合わずぼやけている | スマホが被写体以外に焦点を合わせている | タップフォーカスを使う。スマホを固定してブレを防止する |
反射で商品が見えにくい | 光が強すぎてテカってしまう | 反射を抑える角度に調整する、ディフューザーで光を柔らかくする |
写真の色味が実物と違う | ホワイトバランスが狂っている | 色温度やホワイトバランスを調整し、実物の色に近づける |
撮影時は一度に多くのことを意識する必要がありますが、習慣化すればスムーズにこなせるようになります。どのミスに当てはまるかを判断できるだけでも、大幅に時間と手間を省けるでしょう。
まとめ
プロに撮影を依頼できれば理想的ですが、予算やスケジュールの都合で難しい場面は多々あります。そんなときこそ、スマホや簡易的な機材でも十分に魅力的な商品写真を撮るスキルが役立ちます。
明るさや構図、背景、ライティングなど、いくつかの基本ポイントを押さえれば、仕上がりは大きく向上するでしょう。また、商品のジャンルやブランドイメージに合わせて、背景や撮影シーンを工夫することで、ネットショップ全体の世界観を演出することも可能です。
一度身につければ長期的に活かせる技術なので、ぜひ日々の撮影に取り入れてみてください。あなたのネットショップを彩る素敵な商品写真を、自前で実現していきましょう。
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