営業をしないで顧客を増やすという発想
対面での飛び込み営業や電話を使ったアプローチに負担を感じている経営者の方は少なくありません。特に中小企業の場合、人員や予算に限りがあるため、負担の大きな営業スタイルを継続するのは難しいというケースもあるでしょう。そこで近年注目されているのが、直接的な“営業行為”を減らしながらも新規顧客を獲得できるWeb活用の方法です。
本記事では、「営業をしないで顧客を増やす」という発想の背景や、Webを使った具体的な手段、その成功のポイントを解説します。コロナ禍で対面接触が難しくなった状況下でも使えるヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
営業をしないで顧客を増やすための基本的な考え方
インバウンドマーケティングの思想
従来型の営業は、見込み客に積極的にアプローチして契約を取る「アウトバウンド型」が中心でした。しかし近年、Webマーケティングでは「インバウンド型」が重要視されています。これは、
- 自社の情報発信やコンテンツによって見込み客を呼び込み
- 興味を持ったタイミングで問い合わせ・成約へ導く
という流れを作る考え方です。
インバウンド型マーケティングのメリットとしては、
- 飛び込み営業やテレアポのような“押し売り”感がなく、見込み客に受け入れられやすい
- 対面や電話に頼らなくても、Web上で興味を持ってもらえる
- 担当者の人数が少なくても運用しやすい
などが挙げられます。
仕組みづくりの重要性
「営業をしない」というと極端に聞こえますが、実際には“自分が動かなくても自動的に見込み客が来る仕組み”を作ることが目標です。WebサイトやSNS、広告などの仕組みが整っていれば、飛び込みやテレアポに頼らなくても新規顧客を獲得できます。
この仕組みづくりには少し時間がかかりますが、一度軌道に乗せれば安定したリード(見込み客)を得やすくなり、営業の負担を大幅に軽減できます。
Web施策1:自社サイトやブログを活用する
なぜ自社サイトやブログが重要なのか
「営業をしないで顧客を増やす」にあたって、まず検討したいのが自社サイトやブログの充実です。自社サイトやブログは24時間365日、企業のサービスや商品情報を発信し続ける存在であり、見込み客が興味を持ったときにアクセスしてくれる“受け皿”になります。
たとえば商品やサービスに関する具体的な情報、導入事例、業界動向のコラムなど、多角的なコンテンツを用意しておけば、見込み客が疑問を解決する際に役立つでしょう。そして、そこで十分な価値を提供できれば問い合わせにつながりやすくなります。
SEO対策の基礎
自社サイトやブログを活用するうえで欠かせないのが、検索エンジン対策(SEO対策)です。見込み客は何かしらの課題やニーズがあって検索エンジンを利用します。そのタイミングで自社コンテンツが検索結果に上位表示されれば、自然とサイトへ誘導できるのです。
SEO対策には以下のようなポイントがあります。
- 関連性の高いキーワードの選定:自社の商品・サービスと関連するキーワードを洗い出し、効果的に盛り込む。
- 質の高いコンテンツの作成:ただ単にキーワードを詰め込むのではなく、読者にとって有益な情報を提供する。
- 内部リンクの最適化:関連記事同士をリンクさせ、ユーザーが次の情報を探しやすい導線を作る。
- モバイルフレンドリー:スマホでの閲覧にも対応したデザインや表示速度の確保。
下記の表は、自社サイトやブログで押さえるべき主なポイントをまとめたものです。
項目 | 内容の例 | 重要度 |
---|---|---|
コンテンツの質 | 読者の疑問や課題を解決し、信頼感を与える記事か | 高い |
キーワード選定 | 業界特有の用語やニーズを意識しているか | 高い |
サイト構造・内部リンク | 関連ページを適切にリンクし、読みやすい導線を作っているか | 中くらい |
ページ速度 | PC・スマホ双方で表示速度が遅くないか | 中くらい |
デザイン・UI/UX | 視認性が高く、操作しやすいレイアウトになっているか | 中くらい |
Web施策2:SNSを活用する
SNSがもたらす拡散効果
営業に疲れた中小企業にとって、SNSはコストを抑えながら効果的なマーケティングができるツールです。SNS上で情報が拡散されることで、興味を持った潜在顧客を引き寄せられる可能性があります。特にビジネス向けの情報発信を行いやすいSNSも増えており、BtoB領域での活用も広がっています。
SNSの選び方とポイント
ただしSNSと一口にいっても、複数のプラットフォームが存在し、それぞれユーザー層や特徴が異なります。自社のターゲット層がどのSNSを利用しているのかを見極め、最適なプラットフォームを選びましょう。
下記はSNS活用の簡単な比較表です。
SNS名 | 主なユーザー層 | 投稿内容の特徴 | コメント |
---|---|---|---|
幅広い個人ユーザー(若年層中心) | リアルタイムな情報発信が得意 | 拡散性が高いためバズる可能性大 | |
ビジネス層や中高年層が多い | グループ機能を使ったコミュニティ形成 | BtoB向けのつながりを作りやすい | |
若年層・女性ユーザーが多い | ビジュアル重視、写真・動画を活用 | 商品やブランディングとの相性良 | |
ビジネスパーソン、企業関係者 | キャリアや仕事関係の投稿が多い | 人材確保・BtoB取引に強み |
SNSを運用する際は以下のポイントが大切です。
- 更新頻度を一定に保つ
- 企業としての世界観や価値観を表現する
- フォロワーとのコミュニケーションを大事にする
- 見込み客が求める情報やノウハウを提供する
Web施策3:見込み客との接点を増やす戦略
リード獲得フォームの整備
「営業しないで顧客を増やす」にあたっては、いつでも問い合わせ・資料請求できるようなフォームの整備が不可欠です。見込み客が興味を持ったタイミングを逃さないよう、ホームページの目立つ部分に問い合わせ先やアクションにつながるボタンを配置し、簡単にアクセスできるようにしておきましょう。
メールマガジンやステップ配信
SNSやブログで興味を持ってくれた見込み客に対して、定期的にメールマガジンやステップ配信(特定のタイミングで自動的に送られるメール)を活用するのも効果的です。対面の営業なしでも、継続的に情報を届けることで、顧客の信頼感を高めることができます。
- メールマガジン:新しい商品情報、導入事例、キャンペーンなどを定期配信
- ステップ配信:資料請求や問い合わせをした人に、自動的に段階的な情報を送る
これらの施策によって、見込み客が「知りたい」と思うタイミングで情報を受け取れるため、購買や契約へつながりやすくなります。
具体的な実践手順とポイント
ここでは、「営業しないで顧客を増やす」ための流れをシンプルにまとめた手順表を示します。
手順 | やること | ポイント |
---|---|---|
1 | ターゲット分析 | どんな顧客層を狙うのか、ニーズや検索意図を整理する |
2 | キーワード選定とコンテンツ計画 | 主要キーワードと関連キーワードを洗い出し、記事構成を考える |
3 | サイト・ブログの整備 | デザインやカテゴリ構造、内部リンクを整理 |
4 | 記事・ページを作成 | SEOを意識しながら有益な情報を掲載する |
5 | SNSアカウントの運用開始 | 最適なSNSを選び、継続的に更新する |
6 | 問い合わせフォーム・メール配信の設定 | お問い合わせ導線やステップメールを設定する |
7 | 定期的な振り返りと改善 | アクセス解析や反応を見ながら改善策を打ち出す |
ポイントは、これらの施策を「一度作って終わり」ではなく、継続的に運用・改善し続けることです。なぜなら、アクセス解析やSNSの反応をもとに記事や投稿内容をアップデートしていくことで、より多くの見込み客にアプローチできるようになるからです。
成功を加速させるための工夫(比較表・具体例)
コンテンツマーケティングと広告の組み合わせ
自社サイトやSNSを運用しているだけでは、拡散や集客が物足りないと感じるケースもあるでしょう。その場合、広告を使った導線強化を検討してもよいかもしれません。
しかし、広告だけに頼るとコストがかさむ一方で、一時的な流入しか得られないリスクもあります。そこで、「有益なコンテンツを整備したうえで広告をスポット的に活用する」というバランスが重要です。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
コンテンツマーケティング主体 | ・長期的に安定した集客が見込める ・顧客の信頼度が高まりやすい | ・成果が出るまでに時間がかかる |
広告主体 | ・短期間でアクセス数や認知度を高められる ・ターゲットを絞った訴求が可能 | ・継続的に費用が発生 ・広告停止で流入が途絶える |
両者を組み合わせるパターン | ・コンテンツで信頼を獲得しつつ、広告で瞬発力を補える ・予算やターゲットに合わせて柔軟に運用できる | ・運用ノウハウが必要 ・継続的な分析と改善が不可欠 |
具体例:製造業のブログ活用(簡単なイメージ)
たとえば製造業で、自社の生産技術やノウハウをブログ記事で紹介するとします。製造業の場合はオンラインでのイメージが湧きにくいかもしれませんが、実は技術の要点や品質管理のポイントを発信することで、見込み客(他社の開発担当者など)からの問い合わせを得る例があります。
具体的には、
- 品質管理のフローを写真つきで解説する
- 製造工程でのトラブル事例と対処法をまとめる
- 新製品の研究開発ストーリーを継続的に発信する
といった形で、ブログや記事を通じて専門性を示すことで「この会社なら安心して任せられそうだ」という信頼を得られます。さらにSNSでシェアされれば、対面の営業なしでも「知ってもらう機会」を増やすことができるのです。
成功事例に見るポイントの共通点
上記のような成功事例を見ると、以下の共通点が多く見られます。
- ターゲットニーズを十分に把握している
- 見込み客がどんなキーワードで検索するか、どんな内容を欲しているかを深く分析している。
- 継続的なコンテンツ発信
- 一度ブログを開設して終わりにするのではなく、定期的に情報をアップデートしている。
- SNSやメール等で複数の接点を確保
- 公式サイトだけではなく、SNSやメールマガジンなど多方面から情報を配信している。
- アクセス解析と改善を繰り返す
- 検索順位やSNSでの反応を見ながら、タイトルや内容を変更したり、SEO対策を強化したりしている。
これらを踏まえて運用を続けることで、営業活動の負担を最小限に抑えながら顧客を増やすWeb仕組みが構築できます。
まとめ
営業しないで顧客を増やす方法は、本質的には「見込み客が自発的に問い合わせたくなる状況を作る」ことにほかなりません。それを実現するためには、以下のポイントが重要です。
- インバウンドマーケティングの考え方を取り入れる
- 自社サイトやブログのコンテンツを充実させ、見込み客が検索してきた際の“受け皿”を作る
- SNS運用やメール配信を通じてコミュニケーションを継続する
- 広告をうまく組み合わせ、短期的な拡散と長期的な信頼獲得の両面を狙う
- アクセス解析・反応分析→改善のプロセスを繰り返し、最適化を続ける
これらを地道に実践していくことで、飛び込み営業やテレアポに頼らなくても、見込み客との接点を増やし、安定的に顧客を獲得することができるでしょう。
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