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投稿日:2025.05.25  最終更新日:2025.7.15
マーケティング

LINE公式アカウントで手軽に始める顧客コミュニケーション

LINE公式アカウントで手軽に始める顧客コミュニケーション

1.はじめに──メールに代わる“日常チャネル”で顧客とつながる時代

スマートフォン保有率が9割を超えた現在、BtoC ビジネスの顧客はSNS とメッセージアプリで情報を得て購買行動を完結するのが当たり前になりました。国内 MAU 9,600 万(2025 年 1 月時点)の LINE は、企業と顧客の間に“通知を許可してもらえる唯一のアプリ”として定着しています。

メールマガジンの平均開封率が 15〜20%に対し、LINE 公式アカウント(以下 LOA)の初回開封率は 60〜70%台が珍しくありません。「読まれる前提」でコミュニケーションが組めることは、中小企業や個人店舗にとって圧倒的な武器になります。

2.最新アップデート:料金プランと新サービス「Chat Pro」

2‑1.2025 年現在の 3 料金プラン

プラン月額(税別)無料メッセージ数/月追加メッセージ主な適正規模
コミュニケーション0 円200 通不可友だち数 〜150 人
ライト5,000 円5,000 通不可友だち数 〜3,000 人
スタンダード15,000 円30,000 通可(1 通 〜3 円)友だち数 3,000 人〜

ポイントは無料枠が 2023 年比で 1/5 に縮小されたこと。配信コストを抑えるには「セグメント配信で対象人数を絞る」運用が必須です。

2‑2.上位プラン「Chat Pro」の登場

2025 年 3 月に新たにリリースされた Chat Pro は、

  • チャット履歴 13 か月保存
  • チャットタグ・メモの無制限利用
  • オペレーター権限の細分化

など接客チャットに特化した拡張機能を提供する有料アドオンです。個人チャットが多い美容サロンや EC 事業者の導入が見込まれています

3.LINE 公式アカウントで得られる 5 大メリット

  1. 到達率・開封率が高い
  2. チャネルを跨いだ One to One 対応(チャット・通話・ビデオ)
  3. 実店舗/EC 両方で来店誘導が可能(ショップカード/クーポン)
  4. セグメント配信でコスト最適化
  5. API 連携で CRM の顧客行動データを一元管理

これにより「集客→接客→再来店」までを1アプリで循環させることができます。

4.開設準備:目的設計と KPI 設定

フェーズ目的主要 KPI理由
導入前友だち 500 人獲得友だち追加数最低限の配信母数確保
3 か月月商 +10%来店クーポン使用数オフライン売上へ寄与
6 か月配信 ROI 300%売上 ÷ 配信費用有料プラン移行判断

目的と数字を“先に”決めることで、闇雲な配信を防止できます。

5.アカウント開設&初期設定 10 ステップ

  1. ビジネス ID 作成
  2. アカウント名・カテゴリ登録(店舗名+業種で検索性向上)
  3. プロフィール画像 640px/カバー 1080×878px
  4. ウェルカムメッセージ設定(友だち追加直後に特典案内)
  5. 基本応答時間設定(営業時間外は自動返信に切替)
  6. リッチメニュー 6 ボタン構成(来店予約/EC/FAQ など)
  7. ショップカード or クーポン発行
  8. 通知音量テスト & 動作確認
  9. スタッフ用テストアカウントで全フロー検証
  10. 運用ルールマニュアル化(対応 SLA・タグ命名規則など)

6.友だちを増やす 7 つの導線

導線強み留意点
店頭 QR ポップ対面で即追加混雑時はスキャン率低下
レシート下部全購入客へ周知小規模店舗 POS 要設定
名刺・チラシ展示会との相性◎デザインに CTA を明記
SNS プロフィールリンク無料・拡散力高SNS フォロワー数依存
EC サイトの購入完了画面購入熱が高い二重登録を避ける説明
Google ビジネスプロフィール地図検索から誘導カテゴリ一致が必須
オフライン広告(折込・屋外)新規層リーチQR サイズ・配置最適化

“特典”は限定クーポンより即時性が高い「無料ドリンク」「抽選スタンプ」などが有効です。

7.配信設計:頻度・内容・セグメント

7‑1.黄金バランス=月 4 通+個別チャット

  • 第 1 週:新商品/新メニュー告知
  • 第 2 週:クーポン or セール
  • 第 3 週:豆知識コラム+アンケート
  • 第 4 週:月末リマインド+クロスセル提案

これに個別チャットでの問い合わせ対応を加えると、配信過多のブロック率上昇を抑えつつ接触頻度を維持できます。

7‑2.セグメント配信 3 レベル

  1. 属性(年齢・性別・地域)
  2. 行動(クリック・購入履歴・来店回数)
  3. 心理(アンケート回答・チャットタグ)

スタンダードプラン以上ならリッチメッセージ/動画/カルーセルと組み合わせ、配信通数を 60%削減しながら CTR を 1.7 倍にした事例もあります。

8.KPI モニタリングと改善サイクル

指標目安改善策
友だち追加率来店客の 30%店頭でスタッフが口頭案内
ブロック率1 か月 +0.5pt 以内配信頻度を見直し/スタンプ活用
開封率40% 以上ファーストビューに絵文字+短文
CTR6〜8%ボタン配置と AB テスト
クーポン使用率15%有効期限を 3〜5 日に設定

9.成功事例:3 社のリアルデータ

Case 1:個人経営カフェ(友だち 1,200 名)

  • 導入 2 か月で来店回数 +18%
  • 配信は「平日限定ドリンク半額クーポン」のみ
  • クーポン使用率 22.4%、平均客単価 +120 円

Case 2:地方住宅リフォーム会社(友だち 4,800 名)

  • 友だち追加→オンライン相談予約率 7%
  • オンライン診断 PDF をリッチメニューに設置
  • 月 3 棟の契約に直結、広告費対比 ROI 435%

Case 3:美容院チェーン(友だち 16,000 名)

  • スタンダード+Chat Pro を導入
  • リピート来店サイクルを自動でシナリオ化
  • 予約リマインド配信で 無断キャンセル率 38%→12% へ減少

10.よくある課題と解決策

課題典型症状解決アクション
ブロック率急増広告色の強い配信が連発有益情報:宣伝=7:3 を死守
対応工数増大チャット応対が追いつかないChat Pro/ボット/FAQ 整備
コスト超過月末に配信上限ギリギリ①ターゲット指定 ②テンプレ最適化
ガイドライン違反スパム判定・一時停止LINE 利用規約&薬機法チェック

11.セキュリティ・法務・運用ガバナンス

  1. 個人情報の取得目的をトーク内リンクで明示
  2. 二重オプトイン(友だち追加後に同意取得メッセージ)
  3. 未成年向け表現規制──景品表示法の上限(取引価額の 20% or 10,000 円)を遵守
  4. 医療・美容系の効能表現──治療・効果を断定しない
  5. アカウント停止リスクのある行為:多段リスト販売、マルチ商法、ギャンブル誘引

12.運用を軌道に乗せるための“裏ワザ”チェックリスト

  • 競合アカウントを 3 つ友だち追加し、配信頻度・コンテンツを分析
  • LINE VOOM(旧タイムライン)投稿でアルゴリズム拡散を狙う
  • Mini App/LIFF で予約・EC 決済を LINE 内完結
  • Webhook×Google スプレッドシート で新規友だち情報を自動蓄積
  • オフラインイベント × 友だち追加必須抽選 で大型リスト獲得

13.まとめ──今すぐできる 3 ステップ

  1. 目的と KPI を紙に書き出す(5 分)
  2. 0 円プランでアカウント開設(10 分)
  3. 店頭 QR とウェルカムクーポン設置(15 分)

お気づきのとおり、最も時間がかかるのは“運用ルールを決め、改善を継続すること” です。しかし、一度 PDCA が回り始めれば、LINE 公式アカウントは“広告費を使わず売上を伸ばし続けるエンジン”になります。

あなたも今日このあと 30 分で開設を済ませ、まずは身近なスタッフ 10 名にテスト追加してみてください。明日の開封率データには、確かな一歩が刻まれているはずです。