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離脱ページ診断:GA4で問題ページを特定する方法

なぜ離脱ページ診断が必要か
公開したばかりのサイトで直帰率が高い、あるいはカートや応募フォームで離脱が続く――そんな状況に陥ると、アクセス解析を見ても「どこから手を付ければよいのか」が見えにくくなります。特に士業サイトのように専門情報が多いページ、ECカートのように購入ステップが複雑なページ、採用LPのように心理的ハードルを下げたいページでは、ユーザー心理とサイト構造の両面から課題を探る必要があります。GA4の離脱ページ診断は、こうした迷路を地図化し、どの道でユーザーが引き返しているのかを視覚的に示してくれる重要な手がかりです。
直帰率と離脱率の違い
- 直帰率:ランディングページのみを閲覧してサイトを離れた割合
- 離脱率:そのページを最後にサイトを離れた割合
直帰率は主に入口ページの訴求力を、離脱率はページ全体の流れの妥当性を測る指標です。どちらも高い場合は入口と出口の両方が機能していない可能性があります。
ユーザーストーリーから逆算する
ユーザーは「情報収集」「比較」「行動」という三つのフェーズを行き来します。離脱が多い地点は、このフェーズ間の橋渡しが破綻している箇所。士業サイトなら「専門用語の壁」、雑貨店なら「送料や在庫情報の不足」、介護施設採用LPなら「働くイメージの不透明さ」などが障壁になりがちです。
解析指標 | GA4上の名称 | 読み取れる示唆 |
---|---|---|
Engaged sessions | エンゲージの高いセッション | 入口ページが期待を満たしたか |
Avg. engagement time | 平均エンゲージメント時間 | コンテンツの深掘り度合い |
Exits | 離脱数 | ボトルネックページの量的把握 |
Event count | イベント数 | クリックやスクロールの質 |
GA4で離脱ページを可視化する準備
離脱診断を始める前に、GA4側で次の三つを確認しましょう。設定が不完全だとデータ精度が下がり、原因特定がブレてしまいます。
1. エンゲージメントイベントの定義
GA4ではページビューだけでなくスクロールやクリックもイベントとして記録されます。サイト種別によって重視すべきイベントは異なります。
- 士業サイト:PDFダウンロード、記事内リンククリック
- 雑貨EC:商品詳細閲覧、カート追加
- 採用LP:エントリーフォーム入力開始、動画再生
2. コンバージョン設定の精査
コンバージョンとして登録するイベントは「最終アクション」のみとし、中間イベントを多数登録すると本来の成果がぼやけます。採用LPの場合、「応募完了」を1件のみ登録し、「フォーム入力開始」は補助指標としてカスタムイベントに留めるとよいでしょう。
3. ページ階層の整理
URL構造が煩雑だとレポート上で同一カテゴリのページがバラけ、離脱率が薄まって見えます。計測前にスラッグを整理し、「/service/」「/cart/」「/recruit/」など論理的な階層にそろえておくと分析効率が格段に向上します。
URL整理のチェックリスト
- 同じテンプレートで生成されるページは共通ディレクトリに統一
- 動的パラメータは「?」以降を除外設定に加える
- リダイレクト設定の漏れをSearch Consoleで確認
レポートで問題ページを特定する3つの切り口
GA4が用意する標準レポートだけでも、切り口を工夫すれば十分に問題ページを抽出できます。ここでは「ページパス+スクリーンクラス」「ユーザー遷移」「ファネル探索」の三方向からアプローチします。まずはページ単位で離脱率を洗い出し、その後流入経路と行動フローを重ね合わせることで、数字に理由を与える――これが診断の鉄則です。
1. ページパス+スクリーンクラス
「表示回数」「離脱数」「平均エンゲージメント時間」を並べ、離脱数が突出して高いがエンゲージメントが短いページを優先度A、離脱は高いが滞在が長いページを優先度Bとするなど、簡易マトリクスを作るとボトルネックが浮かび上がります。
2. ユーザー遷移
遷移図(旧ユニバーサルアナリティクスのユーザーフローに相当)は、入口→離脱ページの組み合わせを色付きで示します。直感的に「どこで流れが途切れているか」を確認できるため、改善ストーリーを関係者に説明する際にも役立ちます。
3. ファネル探索
カートや応募フォームなど明確なステップを持つ導線では、ファネル探索が強力です。全ステップを設定し、離脱が急上昇する工程を数値で示しておくと、開発・デザイン・マーケそれぞれの担当に具体的な改善タスクを割り振りやすくなります。
ページタイプ別の典型的課題と改善アプローチ
離脱ページ診断でボトルネックを発見したら、ページタイプごとに「起こりやすい課題」と「効果的な対処法」を紐づけると改善計画が立てやすくなります。以下の一覧で、自社サイトに該当する列を確認しながら着手ポイントを選定してください。
ページタイプ | 典型的課題 | 改善アプローチ | 注視すべきKPI |
---|---|---|---|
サービス紹介(士業) | 専門用語が多く理解に時間 | 用語の言い換え・図解の挿入 | 平均エンゲージメント時間 |
商品一覧(雑貨EC) | 絞り込み軸が不足し迷子 | カテゴリタグと在庫フィルタ追加 | 商品詳細への遷移率 |
カート画面(EC共通) | 送料・手数料が後提示 | コスト提示を前倒し表示 | カート→決済完了率 |
採用LP(介護施設) | 働くイメージが抽象的 | 1日の業務動画・社員コメント | フォーム入力開始率 |
ブログ記事 | 関連記事リンク不足 | セクション間に内部リンク | セッション継続時間 |
士業サイトで起こりやすいギャップ
専門性の高さは信頼性の源泉になる一方、読み手が「自分には理解できない」と感じた瞬間に離脱が発生します。専門用語は「一般的な言葉 → 専門用語」の順に併記し、段階的に深掘りするピラミッド型構成を採用すると、滞在時間と次ページ遷移率が伸びやすくなります。
ECカート離脱の分岐点
カートページの離脱は、送料や決済手数料が「思ったより高い」と感じた瞬間に集中します。早期に総支払額を提示し、クーポン入力欄や配送日時指定を同一画面内に置くことで価格ストレスを低減できます。モバイルでは「買い物を続ける」ボタンを薄色にし、“Proceed to Checkout”を強調する色彩設計が王道です。
採用LPで応募が伸び悩む理由
介護施設の場合、求職者は「人間関係」と「残業時間」を特に気にしています。スタッフ紹介とシフト表サンプルを折り畳みコンテンツで掲載すると、ページ長が増えずに情報量だけ確保でき、スクロール率を保ちながら離脱率を下げられます。
診断結果を施策につなげる優先順位の付け方
離脱ページが複数見つかった場合、手当たり次第に修正するとコストが跳ね上がります。ここでは「インパクト×実装難易度」のマトリクスで優先順位を整理する方法を紹介します。
優先度 | インパクト(改善後の期待効果) | 実装難易度 | 具体施策例 | 担当 |
---|---|---|---|---|
A | 高 | 低~中 | カート画面に送料表示追加 | フロントエンド |
B | 高 | 高 | 商品一覧の検索システム改修 | 開発| |
C | 中 | 低 | LPヘッドラインのコピー改善 | マーケ| |
D | 低 | 低 | 微細な表記ゆれの統一 | 編集| |
E | 低 | 高 | 決済フロー全面刷新 | 全社プロジェクト |
4ステップで優先順位を決める
- 離脱数が多い順にページを並べる
- そのページの改善が最終コンバージョンへ与える影響度を「高・中・低」で仮評価
- 改善アイデアを洗い出し、実装難易度を「低・中・高」で判定
- 表のマトリクスに当てはめ、A→B→C…の順に着手
この手順を議論するだけでなく、社内WikiやNotionに貼り付けて共通言語にすることで、関係者が自律的に改善タスクを作成できる環境が整います。
ケーススタディ|士業サイト・雑貨EC・介護採用LP
実際の数値を用いたミニケースで、離脱診断から改善までの流れを確認しましょう。ここでは加工したダミーデータを使って説明します。
士業サイト:用語解説ページ
- 診断結果
- 離脱率:62%
- 平均エンゲージメント時間:38秒
- 改善策
- 用語解説の冒頭に「5秒要約」を追加
- スクロール率を50%→70%へ向上
雑貨EC:カート画面
- 診断結果
- 離脱率:41%
- 決済完了率:26%
- 改善策
- 送料早期提示+無料ライン導入
- A/Bテストでボタン文言変更(「購入手続き」→「注文を確定する」)
介護採用LP:応募フォーム
- 診断結果
- 離脱率:55%(フォーム到達後)
- 応募完了率:18%
- 改善策
- フォーム項目を21→12項目へ削減
- 応募完了後に職場紹介動画を自動再生し、紹介シェア率を向上
ケーススタディ比較表
サイト種別 | 主要離脱ページ | KPI before → after | 主な改善施策 |
---|---|---|---|
士業 | 用語説明記事 | 離脱率62%→45% | 5秒要約/図解 |
EC | カート | 決済率26%→34% | 送料前提示/CTA改善 |
採用LP | フォーム | 応募率18%→28% | 項目削減/動画 |
改善効果をGA4で追跡する設定
改善施策を実行したら、リリース日を含む比較期間をGA4の「日付範囲の比較」で設定し、効果を定量的に測定します。
比較期間のポイント
- 短期施策(コピー変更・ボタン色):リリース前後2週間で比較
- 中期施策(送料設定・フォーム項目削減):1か月単位で比較
- 長期施策(検索機能改修・決済フロー刷新):3か月~四半期で比較
改善施策ごとに「カスタムラベル」イベントを発火させておくと、レポート上でフィルタリングしやすくなります。ECなら「cart_update_202508」、採用LPなら「form_optimize_202509」といった命名規則を決め、スクリプトに組み込むと漏れが防げます。
再離脱が発生した場合の深掘り
改善後も離脱率が下がらない場合は、Heatmapや録画ツールでマイクロインタラクションを確認し、GA4の数値と照合します。例えばカートページでボタンクリックの直前にスクロールが急停止しているなら、決済オプション説明文が視覚的ブロックになっている可能性があります。
チェックリストで改善を仕組み化する
離脱ページ診断は一度きりのイベントではなく、運用フェーズで繰り返すほど成果が蓄積します。そこで役立つのが、実装と計測をセットにした月次チェックリストです。
チェックタイミング | 主な作業 | 所要時間の目安 | 使用ツール |
---|---|---|---|
月初 | 先月の離脱率・直帰率を抽出 | 30分 | GA4探索レポート |
月初 | KPI乖離が大きいページをタグ付け | 15分 | スプレッドシート |
中旬 | 改善施策の実装状況を確認 | 45分 | タスク管理ツール |
月末 | 施策別に比較期間を設定し効果測定 | 60分 | GA4+BIツール |
この表をプロジェクトルームに貼り、担当者を固定することで「誰が、いつ、どこを確認するか」を明文化できます。
よくある質問と落とし穴
Q1. 離脱率が高いのに売上が伸びることはある?
はい。ブログ記事など情報提供ページでは、適切な外部リンクや電話への誘導が機能していれば離脱率が高くてもビジネス成果が向上するケースがあります。必ずKPI全体を見て判断してください。
Q2. ファネル探索のステップ数はいくつが適切?
一般的には3〜5段階に収めると可視性と具体性のバランスが取れます。ステップが多すぎると離脱箇所が細分化しすぎ、改善優先度がぼやける恐れがあります。
Q3. 診断と改善を外注するときの注意点は?
分析だけ、実装だけを分離すると成果責任が曖昧になります。契約書に「改善後〇か月間のKPIモニタリング」を含め、PDCAを一括で回せる体制を組むと失敗しにくくなります。
ステークホルダーへの共有方法
改善結果を社内外に説明する際は、数字・図・ストーリーの三要素をセットにすると理解が早まります。
- 数字:離脱率や決済率などの比較数値
- 図:ユーザー遷移図やファネル図のスクリーンショット
- ストーリー:ユーザーの心理変化を文章で補足
資料化する際は「改善前→改善後」を1枚スライドにまとめ、次ページで施策詳細と今後の予定を示すだけで、経営層の合意形成がスムーズになります。
離脱診断の次のステップ
離脱ページが減少しKPIが安定してくると、新たな課題が浮かび上がります。たとえば、
- 平均注文単価の伸び悩み
- リピート率の低下
- 応募後の面接辞退率の増加
これらは離脱診断だけでは解決できません。CRM連携やメールマーケ、オペレーション改善など、隣接領域とのデータ統合が必要になります。離脱診断で蓄えたデータ整備の習慣は、この拡張フェーズでも大きな武器になります。
まとめ:離脱ページ診断を継続的改善サイクルへ
離脱ページ診断は「問題点の見える化→施策立案→実装→効果測定」のサイクルを高速で回すための起点です。GA4の標準レポートだけでも、
- ページパス+スクリーンクラス
- ユーザー遷移
- ファネル探索
という三つの切り口を押さえれば、士業サイト・雑貨EC・介護採用LPのように目的や構造が異なるサイトでも共通のフレームで課題を抽出できます。優先順位マトリクスと月次チェックリストを活用し、改善を「仕組み」として定着させれば、直帰率や離脱率は確実に下がり、コンバージョンは右肩上がりに伸びていきます。まずは今日、GA4を開き「離脱数が多い順」にページを並べ替えるところから始めてみてください。